『セプテンバー5』(ネタバレ感想)緊迫感みなぎる90分!テロ対策と報道のあり方に多大なる影響を与えた大事件。

ジャスミンKYOKO

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

この映画、実は2回行きました。

普段、映画館で寝ないのに、何度も意識が飛んでハッと起きる度に「なんで、こんなに面白いのに私寝てるのよ!?」

仕事の疲弊と寝不足で大事な映画鑑賞をフイにしちゃったのである。

なのでリベンジしたのだ、だって緊迫感みなぎるいい映画だったからね。(途切れ途切れ観てもそれはわかった)

1972年の9月5日、ミュンヘンオリンピック中の選手村で起きたテロ事件を報道陣サイドから撮ったドキュメンタリータッチの映画。

スピルバーグ監督が描いた『ミュンヘン』を観たから事件は知っていたけど、この映画でテロリストだけじゃなく様々な原因が絡んであんな大惨事(人質全員死亡)が起きたと知って衝撃だった。

映画に行く人は、ミュンヘンオリンピック事件を知らなくても以下のことを知っておくと映画がわかりやすいかも。

◆1948年、パレスチナからアラブ人を追い出して、ユダヤ人の国イスラエルが建国された
 (アメリカとイギリスの後押しあり。第二次世界大戦後でユダヤ人に同情が集まっていた)

映画『セプテンバー5』の評価

私の個人的な思考による評価です笑 星は7段階で評価します

私の評価★★★★★☆☆
ドキュメンタリータッチで緊迫感がすごかった。
観るのにオススメな人◆社会派ドラマが好きな人
◆世界に起きた出来事に関心がある人
◆サスペンスが好きな人
◆ピーター・サースガードが好きな人
暴力性・残虐性★★☆☆☆☆☆
銃声が聞こえたりはするものの、殺人の描写はない。
エロ度☆☆☆☆☆☆☆
感動度★★☆☆☆☆☆
70年代の服装やTV局のスタジオの再現度と、実際の
ニュース映像をミックスした描写が素晴らしい。

『セプテンバー5』ストーリー

1972年、第二次世界大戦後に初めてドイツで開催されるミュンヘンオリンピックに、世界中の注目が集まっていた。

アメリカのABC放送のスポーツ部は、泊まり込みで編集などに追われていたが、銃声を聞く。

情報が錯そうする中、アラブ人テロリスト「黒い九月(ブラックセプテンバー)」が、イスラエル選手団を襲い、人質に取ったと判明。

スポーツ部でありながら選手村に近いことを活かし、事件の生中継を試みる・・・。

↓ここから先はネタバレ感想です。

『セプテンバー5』(ネタバレ感想)

緊迫感がすごい。

だってウトウトしながらも面白いのは十分伝わったからね(なら、寝るな)。

なので2回目ちゃんと観直して本当によかった。

人質全員死亡、救出作戦が失敗した背景には生中継以外にも原因があった

この映画を観た後、もしかしたら第二次世界大戦後初のドイツ開催じゃなかったら、イスラエル選手団助かってたのかもね・・・と思った。

スピルバーグ監督の『ミュンヘン』を観た時はそう思わなかったのに、この映画で私が知らない事実を描かれていたのでそう感じたのだ。

ナチスドイツは、ヒトラーの政権下において把握されてるだけでも600万人のユダヤ人を虐殺し、その事実が明るみになった第二次世界大戦後、世界中から非難を受けていた。

その非難の矛先のドイツで開催されたため、ドイツ国民は、世界に向けて心証を良くしようとし、まさかのオリンピック会場に武装警官を配備していなかったのである。

当時事件を担当したのは、テロ対策の訓練を受けた警察の特殊部隊ではなく、地元警察というのも救出作戦が失敗に終わった一因。

ただ、まだ希望があった初動の突入作戦をダメにしたのは、あきらかにアメリカのABC放送の生中継のせいだよね。

通常は警察もマスコミを規制することから始めるだろうけど、平和なはずのオリンピック会場での突如として起こった悲劇にそこまで頭が回らなかったのか。

ABCが、変装した警察官が突入するのを映したため犯人に気づかれ、作戦は中止になる。

今なら視聴者の我々でも想像つくようなこと、「犯人がテレビで確認するかもしれない」って、TVの歴史が浅いこの時代のテレビマンはまだ想像できなかったのかな。

この映画では警察官がTV局に入ってきて「カメラを切れ!」と言われてようやく彼らはハッとしたけど、本当に想像力が働かなかったのか、それとも気づいていて視聴率や前代未聞の偉業の方を優先したのか。

スクープを優先する報道のあり方が招く悲劇

ピーター・サースガード演じる部長ルーンが、現地にいない報道部門に「譲れ!」と言われたのに押し切って事件報道に慣れていないスポーツ部が、歴史的快挙を目指すあまり22時間も生中継を続けてしまう。

この日、いつものベテランの中継係がおらず、若手のジェフ(ジョン・マガロ)が担当したというのも要因の1つかも。

経験の浅いジェフはこれは自分を売るチャンスだと思ってしまうからね、同僚の忠告も聞かず、中継を続けてしまった。

同僚の人は「これは人質の家族も観てるんだぞ、そんなものを流していいのか」

この人が唯一まともやん、と観ている私たちは思うけれど、テレビの歴史が浅いこの頃はそういう風に考える人がもしかしたら少なかったのかもしれないよね。

この事件は、人質救出において報道の規制が最重要という教訓(今では当たり前だが)を世界に知らしめ報道のあり方に多大な影響を与えた。

世界各国の警察にテロ対策に特化した特殊部隊が置かれる発端ともなったらしい(アメリカではSWAT、日本はSATとかね)。

今後のテロ対策とテロリストの要求の方法に影響を与える事件となった

テロリストの一部は選手村で働いてたらしく、選手村で働く人まで身元を明らかにしなければならないなんて、当時は思わないよね。

誰も想像しなかっただろう、スポーツの舞台で、こんな惨劇が起きるなんて。

犯罪者たちが、自分たちの要求を通したい時はマスコミを使うと手っ取り早いことを気づき始めた時期だったのかもしれない(「あさま山荘事件」も同じ年)。

今は動画が簡単に撮れるようになり、イスラム国やタリバン、アルカイダなどの公開処刑にまで使われてしまうようになったから恐ろしい。

戦後20年の間に「イスラエル」がパレスチナの地に建国されたことがこの事件の大きなきっかけにはなっているよね。

ユダヤ人に同情した、そこに元々住んでいたアラブ人などの当事者以外の先進国がそれを許してしまった。

いまだに争いは収まらず、(ガザ地区は建国後どうにかして一部でもアラブ人にということで許された自治区)、ユダヤ人はあんなに虐殺された過去がありながら今度は自分たちが他民族を抹殺しようとしてる。

逆にあんな過去があるからこそ、もうあんな思いを繰り返したくないから、ガザ地区からアラブ人を完全に追い出したくて攻撃してるのかもしれないが、それじゃナチスと同じことしてるよね。(中にはネタニヤフ首相のやり方に反対してるユダヤ人もいるとは思うけど)

交わされる何気ない会話に戦争が残した消えない事実を感じる

映画の冒頭、ABCに通訳として雇われたドイツ人女性に、アメリカ人のスタッフが「加担したのか?」と興味で聞く。

「ナチスの虐殺に」という意味だとすぐわかったけど、よくそんなのドイツ人によく聞けるなあとビックリ。

「私は私だから」と言い返した女子もすごいけど傷ついただろうね。(親は加担したかもという感じがじんわりとにおわされていた)

加担するも何も国の政策がそれを唱えていて、ユダヤ人をかくまっていたら自分たちが殺されるのだから、仕方なく密告した人もいただろう。

中にはほんとに毛嫌いして進んで密告したり暴力をふるった人もいたかもしれないけれど。

大勢が「YES」の中、「NO」を貫くのは現代社会でも大変なのに、命が掛かっていたらなおさらだよね。

疑問に思っても声を上げることが出来ない雰囲気と利益優先の組織の上層部

この生中継を貫き通したABC側も同じ状況だよね。フジテレビやジャニーズといい、力がある側にないものは「NO」が言えない状況。

最初は、きちんと情報筋に真実を確かめ裏を取って流していたのに、途中から他のTV局に手柄を横取りされまいと裏も取らずに「人質が助かった」という間違った情報を流してしまう。

世界中が喜んだのも束の間、真実はイスラエル選手団全員が亡くなり、犯人も死んで事件は終結。

驚いたのは、こんな事件があったのに、オリンピック競技をそのまま続行したこと!初めて知ってビックリ!

イスラエル選手団が人質に取られているのに、近くの会場ではバレーボールの試合が行われていたり・・。(事件後も翌日追悼式が終わったらまた再開・・驚)

オリンピック選手の気持ちになれば、その大会のために4年間体を作ってきたわけだから、中止にしてしまうのもかわいそうではあるけど・・。テロだよ?一国の選手団がほとんど亡くなってるんだよ? 

この時のIOCの会長はどういう気持ちで続行を決めたんだろう。

TVクルーの中には、視聴率のためだけにやった人もいれば、上が命じるから仕方なくやった人もいただろうね。

テロ対策のやり方も、報道のやり方もこの事件を機に大きく変わったのかもしれない。

今は長年テレビ局のものだった撮影が、一般人が簡単に出来る世の中だから、誰かの悲劇を簡単にアップできるし大勢の人に拡散もできる。

個人で簡単に発信できるからこそ、この映画を観て、拡散する前にどうか想像力を働かせてほしい。

『セプテンバー5』、90分の上映中とにかく中だるみなんてなし、ドキュメンタリータッチで描かれ緊迫感バクバクの考えさせられる映画です。

『セプテンバー5』ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

ピーター・サースガード、やっぱりいいなあ。

これがジェイクの姉ちゃんの夫だと思うと羨ましすぎる。(ジェイク・ギレンホールの姉マギー・ギレンホールの夫。二人は長い交際期間ののち結婚した)

映画『ブルー・ジャスミン』でケイトを振り回すイヤな男の役もカッコいいから許せた笑。

キャスティングに納得する時って、俳優さんのたたずまいや今までした役に関係してる気がする。このサースガードの局長は納得だったな。

映画『キングダム』で、趙(ちょう)の軍師の李牧(りぼく)が小栗旬とか、どうやったらそんなキャスティングになるんだ!とガッカリ。(小栗旬ファンの皆さんは無視してください笑)

小栗旬にあまり「知性」を感じたことなかったからね。

やっぱり普段から頭良さげな言葉を使ったり、たたずまいに冷静な感じが漂うと、納得できるんだよね。(秦側の軍師役が玉木宏は納得)

ジェフを演じたジョン・マガロ↑は、あの特徴のある甘ったるい声が経験浅い雰囲気を感じさせててよかった。

最初に彼を観た『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でも、ウォール街で一旗揚げようとブラピに頼る、浮足立ったベンチャーの若造がよくてインパクトあったもんね。

そんな彼もいつまでも若造の役もイヤだったろうが、この役はほんと上手かった。

あれから結構経ってて年齢重ねているはずだけど、70年代は若者でもかなり大人びたファッションだから今の彼でもちょうどよかったのかも。

この映画は、70年代の服装だけでなく、テレビ局の設備や電話機、小道具まで完璧だった。

急がなきゃいけないのに、あのジーコロジーコロダイヤルを回すのが、観ているこっちも「1個でも間違ったらまた最初からやり直しよ!間違えないで!」と応援したくなったし、よりハラハラ感も生んでよかった。あの電話を知らない世代は観ていてこんなに焦らなかったかも笑。

ピーター・サースガードの受話器の特徴的な握り方も、昭和にはゴマンといたなあとちょっと懐かしかった笑。

そんな小道具も楽しみつつ、緊迫感を感じた、とってもいい映画だった。

【2025年】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『ビーキーパー』

2位・・・・・『セプテンバー5』

3位・・・・・『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』

4位・・・・・『ファイアーブランド』

5位・・・・・『LONGLEGS』

6位・・・・・『フライト・リスク』