『秘密への招待状』娘の結婚式で出会った2人の女性の人生の交錯(ネタバレレビュー)

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

キノシネマに行ってきました♪去年から楽しみに待っていた、ミッシェル・ウイリアムズとジュリアン・ムーアの映画。

予想をいい意味で裏切り、すごく面白かったし、驚いた。

いい映画を観ました♪

今回は『秘密への招待状』というだけあって「秘密」が大事だから物語の展開などは知らずに行った方が楽しめます。

デンマークの映画のリメイクなので、元々の作品を観た方は内容を知ってるからしょうがないけど、観てない方は、レビューや評価も見ずに行った方が楽しめますよ。

今回はネタバレせずにこの映画を語ることが難しかったのでネタバレレビューにさせていただきました♪

 

ストーリー

2006年にアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたデンマーク映画のリメイク。

主演2人の男性を女性に変えてのリメイクで、その2人は演技派と名高いミッシェル・ウイリアムズとジュリアン・ムーア。

インドで親がいない子どもたちの救護活動に奮闘し孤児院を運営しているイザベル(ミッシェル・ウイリアムズ 画像左)にニューヨークの大手のメディア会社から寄付の話が舞い込む。

運営者本人と直接会って寄付のプロジェクトを話し合いたいという先方の経営者のたっての願いで、戸惑いながらも孤児院の窮状を目の当たりにしているイザベルはニューヨークへ旅立つ。

経営者のテレサ(ジュリアン・ムーア 画像右)は感じのいい人物だったが、仕事が忙しく、なかなかイザベルと話し合う時間がない。

「娘の結婚式のパーティならゆっくり時間が取れる」となかば強引に結婚式の招待を受け、当日イザベルが目にしたものは・・・。

なんとテレサの夫はイザベルが過去に別れた恋人だった。しかも新婦のグレイスはその男との間に出来た自分の娘と気づいてしまったイザベル。

裏がありそうな雰囲気の中、寄付の話はなかなか進まずイザベルはインドに帰れなくなっていく。




ここから下はネタバレレビューとなります。何も知らずに観たほうがすごくハマって楽しめます。

普通のレビューは書きにくかったため、ネタバレにしました。

 

ジュリアン・ムーアVSミッシェル・ウイリアムズ

⇧左からイザベル(ミッシェル・ウイリアムズ)、新郎、新婦で娘のグレイス、グレイスの父親でイザベルの元彼氏オスカー、オスカーの妻テレサ(ジュリアン・ムーア)。

リメイクとは知らなかった私は、CMだけで勝手に元カノと妻の泥試合かと思ってウキウキ楽しみに来たら(ウキウキなの?笑)。

・・・・違ってたーーー!!

誰も悪くないけど、なんか切ない、いい話だった。

ミッシェル・ウイリアムズの方がいつも不幸な役が多いから、ニューヨークで成功している会社の社長ジュリアン・ムーアがチマチマと元カノをいじめるのかと思ってたのよ(あさはかな妄想)。

あまり言い返さず耐え忍ぶミッシェル・・・みたいな想像をしてた。

ストーリーやCMだけ見てたら、きっとそういう想像をして映画館に来た人も多かったはず。

それにしてもただの元カノではなく、大事に育ててきた娘の産みの親。

ジュリアン・ムーア扮するテレサの不安もわからなくはないけど、自分から何故呼んだの?

そこに大いなる秘密が隠されていたんだよね。

 

こういう女の闘いの間は男子は立ちすくむのみ笑

結婚式に遅れて出席したイザベル(ミッシェル・ウイリアムズ)は、新郎新婦の親族席に立つオスカーを発見する。

元カレとこういう場所で遭遇するのってイヤよね笑。

私も同窓会に行った時に姿がなかったのでホッとして油断してたら二次会から現れた元カレ(この時の私の衝撃度わかる?)、30年ぶりに会った上にみんなから茶化され、悪夢の時間でした笑。

みんな、お願いだから忘れてくれよ笑。

なんなんでしょうね、憧れの人のまま終わった人とは今でも会えたら嬉しいのに、一度つきあって冷めたり何かあって別れた人とは偶然でも会いたくないのは笑。

2人は一応他人のふりをするが、テレサは無邪気に普通に振る舞う。

イザベルも見ている私もこの女に裏があると思うが、なかなかしっぽを出さないので笑、ほんとに偶然呼んだの???とまで思う、ジュリアン・ムーアの演技力。

 

育ての親が産みの親を呼び出す理由


寄付という名のもとに元カノをわざわざ呼んで、成功しててラブラブな自分たちを見せつけるつもりなんだろうなと昼ドラ感満載の想像をしてた私笑。

でもただの元カノならいいけど、産みの親を育ての親が呼ぶのはかなりリスキーである。

娘のグレイスは母親の存在を知らないのだから。知ってしまったがために母としての立場が危うくなる可能性だってある。何故なの??

自分の経営してる会社を売る準備と娘の結婚式の準備で忙しいテレサ。会社を売却するのはアメリカの大手の会社にありがちだし、合併や売却でまた新しい会社を立ち上げて大きくするんだろうなと思っていたら。

テレサは重病にかかっていて、あとわずかの余命だったのだ。

それは物語の後半に告げられる。しかも夫ではなく、元カノのイザベルに。

最初から事情を言って助けを求めなかったのは、たぶん彼女の人物像を確認したかったのだと思う。

もしほいほいお金に釣られてやってくるような女だったなら、言うつもりもなかったのかもしれない。

インドの子どもたちの未来を考え、昔の男の妻であろうと孤児院のために寄付をお願いする姿を見、置いてきた彼らへの思いから一刻も早くインドに帰りたい彼女に、昔育てられずに手放したグレイスへの罪悪感も見えた。

テレサは確信したはずだ、この人なら自分の大切なものを預けられると。

やっと寄付の話になったかと思うと「お金は言っていた以上の金額を出すから管理のためにあなたはニューヨークに住むことが条件よ」一方的な条件を出され、事務所を飛び出したイザベルに「お願い、助けて」テレサが言う。




テレサのプライドを捨てる勇気と心残り

グレイスはもう独り立ちしたが、テレサにはまだ苦労して授かった双子の男の子(8歳)がいた。

自分はいなくなる、それなら、愛情を持って育ててくれそうな人に家庭を任せたい。

自分が産んだ娘の弟たちをむげにはしないだろう、この人なら。

そこは語られないけどそんな大きな計算もあるように思えた。

たとえそんな計算があったとしても、元カノなんかに頼みたくないーーーー!!ってジタバタしそうなことをやってのけるテレサはすごい。

2歳から育て上げた育ての親のプライドを捨ててイザベルに我が子のためなら「助けて」と言える強さ。

「双子を大変な思いして授かった」とテレサが言ったけれど、グレイスを愛情いっぱいに育てたとしても血の繋がりはないから、オスカーとの絆をどうしても作りたかったのかなと想像できる。

血の繋がりには勝たないとどっかで感じてきたからこそ、最後はその血の繋がりに賭けたのじゃないかな。

彼女が森で見つけた、木から落ちた卵の入った鳥の巣を大事にクローゼットにしまっていた意味が見えた気がしました。親鳥がいなくなっても子供たちだけはすくすくと育ってほしい。

または逆に考えると、この落ちた鳥の巣を大事にする気持ちに捨てられたグレイスをここまで育ててきた誇りなども込められている気もする。

母の愛といっても私にそこまでできるんだろうかと考えてしまう、彼女の行動。

 

イザベルの葛藤と罪悪感


イザベルも、インドの子どもたちが気になるからそんなことを一方的に急に言われても「はい、そうですか」とはならない。(そりゃそうだよね)

彼女がオスカーとの間に産んだグレイスは、お互いが10代だったのもあり、育てられないと判断し、話し合って施設に手放した。

それなのに、オスカーはあれから黙って彼女を引取り育てていて、グレイスが2歳の時にテレサと出会い再婚(イザベルと結婚してたとは語られないので初婚かもしれないが)。

そんなことをこの2週間くらいの間に次々と知らされたらそりゃ混乱するよ。

イザベルもインドの子供たちが気になりながらも、産みの親と知って会いに来るグレイスとの温かな食事の時間を楽しんでいる自分に葛藤が生まれていく。

理想だけで突っ走ってきたイザベルが、金持ちの道楽としか捉えてなかった寄付も、テレサと出会ったことによって、彼女の泥臭いがんばりこそが、理想主義のオスカーをアーティストとして花開くまで支え、子どもたちを健やかに成長させたのに気付かされる。

自分の過去と考えのあり方を見直していくきっかけとなる。

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

まあ、私ならすぐ「はい!ニューヨークに住みます!」って言いますが(君にはテレサは頼まんよ)。

イザベルがイラッと来た時、わざわざ靴を脱いで階段を降りる習性が謎だったが、インドに行ったりヨガで無の境地を学んだら裸足になりたくなるのかな・・・笑。

それとも煩悩だらけの資本主義社会に住むテレサと対象的に描きたかったからあの演出なのか・・・。

テレサの発言に怒って靴を脱いで裸足で高層ビルを駆け降りたかと思えば、一階に着いて公道に出た時はもう靴を履いてたからちょっと笑ってしまった笑。

純粋な気持ちで彼らの救援にあたっても、やはり無視できないのがお金。多額の寄付金をにおわせてもなかなかその本題に入らないテレサにイライラするイザベル。

優しさも大事だけど、寄付ではなくビジネスにしないと、途上国の救済は続かないと途上国で会社をやってる方が言ってたけど、そうかもしれないなあと思ったことがある。

彼らが働く仕組みを与える方が本当の救済だとも言っていた。

インドに久しぶりに戻ったイザベルは、子供のように育ててきた男の子が自分がいない間に成長し、なついては来るけど、もう甘えては来ないことを目の当たりにする。

「彼が自分無しで生きられない」と勝手に思い込んでいたのは彼女自身の罪悪感から来るエゴだったことを気づかせるラストで締めくくる。

ああー彼女はニューヨークで新しい家族と暮らしていくんだなと思った。

テレサがグレイスを育ててきたように、今度はイザベルが彼女の子供を育てていくことで罪悪感から救済されるのかもしれないね。

まずは自分の心の救済から。それをしてやっと他人を救済できる。

自分を犠牲にしがちなお父さんやお母さんは、まず自分を少し甘やかして自分のご機嫌を取るのが大事だと思う。

完璧な食事だけどイライラなお母さんと、手抜きな食事でもいつもご機嫌なお母さんだったら、子どもたちにとって精神的にいいのは後者の方だからね。

自分を犠牲にせず、自分ののぞみも同時進行で叶えていくのが大事。

子供に後から「あなたのせいで〇〇が出来なかった」と言いたくなるようなことにはならないよう、小さなことでもいいから希望を叶えていく。自分の人生でもあるんだから。

理想だけでは生きられない、でもお金があっても人生はままならないこともある。

昼ドラの期待感をいい意味で裏切られ笑、親としての悩みや再婚相手の子と暮らす気持ちなど色々考えさせられたけど、さわやかな後味の映画だった。

リメイクのコレを先に見ちゃったから、元々の作品のお父さん同士の話なんて想像がつかないけど、どんなもんか一回見てみようかな。

 

映画『秘密への招待状』のキャスト

@『秘密への招待状』(2019年 米)

テレサ・・・・・ジュリアン・ムーア

イザベル・・・・ミッシェル・ウイリアムズ

オスカー・・・・ビリー・クラダップ

グレイス・・・・アビー・クイン

 

【2021】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

2位・・・・・『キル・チーム』

3位・・・・・『秘密への招待状』

4位・・・・・『聖なる犯罪者』

5位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』