『聖なる犯罪者』何が善で何が悪か

犯罪者が聖職者になりすます・・・その言葉を聞いただけでもう期待感ワクワクで観るのをすぐ決めました笑、クライム・サスペンス大好きなジャスミンKYOKOです。

なんというか、邦画で好きだった『悪人』に似てた。

いい人に見える人が、世間体から自分を守るために日常的に他人に残酷なことをしていたり。一度罪を犯した者はぞんざいに扱っていいという「正義感」と「私刑」を履き違えてたり。

「罪」に問われないくらいのリンチや仲間はずれ。

しかもそれを「正義」という名のもとにやっている。

どっちが「悪人」か。

主人公の聖職者になりすます犯罪歴のある少年が、そういう村人同士の溝を埋めていこうとする。

いい人と自負している人が、犯罪者によって心を救済される、なんとも皮肉な話。

こんなダークな内容なのに、たまに笑ってしまう場面あり(私だけかな?笑)。

だって、庭で神父さんが休みの日にハードロック流しながら全力で踊ってたら、疑いそうなもんだけどみんな疑わないんだもん、あははは。

ブルーハーツのヒロトどころじゃないキレた踊りしてるのに「こんにちは神父さん、今いいですか?」と話しかけるのがウケた笑。

日本は色んな神様や仏様が共存してるから、宗教に真っ黒けに染まることが少ないのかもね。

カトリックやイスラム教は「唯一絶対の神」だから俯瞰的に見れなくなっていくのかな。

説法をする時、祭壇にスマホを隠して宗教サイトを観ながらやるとこなんか面白かった♪

 

ストーリー

ポーランドで実際に起こった実話。

殺人罪で少年院に入っていたダニエル。服役中に心を癒やされたのはミサだった。

神学校に入りたいと望んだが、犯罪歴がある彼は聖職者にはなれないと告げられ、仮出所が決まると遠い田舎の村外れの製材所で働くことに。

村の教会にふと立ち寄ると新任の司祭と勘違いされ、病気の司祭の代わりを依頼される。

最初、村人たちは司祭らしくないダニエルに戸惑うが、わかりやすい言葉と、相談への具体的な答えに癒やされ、町の若者までが信頼していく。

村で起こった凄惨な事件を知ったダニエルは村人同士の溝を埋めるように尽力していく。

 

ポーランドのカトリックの背景


犯罪者が聖職者になりすまし、しかもその聖職者を村人が信じきってしまう。

こんなのが実話というのがすごいが、ポーランドでは頻繁に起こっているらしい。

確かに神父さんに「免許証か保険証ない?」なんて言わないだろうし笑。

日本人は、急にフラッとお坊さんと名乗る少年が現れても、まず疑うよね笑。少年だとなおさら怪しいし。

大昔は托鉢をしながら周るお坊さんがいたかもしれないけれど、今は急に家に来られても「新興宗教?」「マルチ?」とまず疑う。

ポーランドでは、長くソ連の支配下で共産主義だったため、言論の自由も奪われた人々にとっては教会のみが救いの場所だったらしい。

そういう歴史的背景もあり、神父さんは人々の心を救済するため、各地を転々と渡り歩き、各家庭を訪問しては説法をするという風習が今でもあるんだって。

カトリックの総本山(バチカン)に知られることなく、お布施をもらいつつ生き延びられるので、なりすましをする犯罪者が後を絶たないらしいのだ。

信者の人もそこまでアホじゃない、よっぽどおゲレツな奴だったら疑うかもしれないけれど、もと犯罪者だけあって懺悔のアドバイスはリアリティがあるし、小難しい言葉も使わないから親しみやすい。そうやって「信頼」が生まれていくんじゃないだろうか。

なんにも経験せずに神父になる人が懺悔室で罪を聞くだけ聞いて「神は許します」ってあんまり響かないもんね笑。(カトリックを侮辱してませんよ、念の為笑 神父による児童虐待の映画などを観すぎている女のたわごとです)

 

主人公の少年の圧巻の演技力

主人公の少年のヤバいくらいのラリった顔に最初から引き込まれる。⇧

き、気持ち悪い!!坊主の逆三角形の顔にクラブのライトがチカチカして「宇宙人!?」笑

いや、ほんとに薬物やってるんじゃないのー???うまい、うますぎる!!(ジャンキー役が上手い人は尊敬する笑)。

ウソを塗り重ねていく大変さはありながらも、村の人々の信頼を受けて、生きる喜びを見出していくダニエル。

ウソをつくときや、ごまかすときの表情がほんとうまい。

だからといって完全ないい人にも成り下がらないのがまたいいね。煩悩だらけのヘビースモーカー、セックス、酒、薬物はやめようとはしない素の悪人顔もうまい。

主人公の過去を知る者が現れる頃には、ダニエルの味方をしてしまいそうになる私も、もう村人の1人と変わらない。

そのくらい、彼の演技はすごくて惹きつけられる。

 

刑務所じゃなく、今回は「少年院」が新鮮だった

刑務所映画が好きな私が今回惹かれたもの、それは「少年院」笑。

数々の刑務所映画はあれど、「少年院」を扱った映画は見たことなかったので新鮮だった♪

でも、外国の少年院もシャレにならんくらい恐ろしい!!

刑務官が目を離したすきに弱い男子をレイプ、見えないところをぼっこぼこに殴打。

ひえーーーっ 怖すぎる!このひとたち、少年院出ても絶対ムショ行きね(^.^;笑。

でもやっぱりまだ刑務官が希望を持ってる感じがする。

前科持ってても聖職者になりたいと考えるダニエルはやっぱりティーンだからかも。

大人になったら色々わかってきてそんなことははなから考えないもんね。




ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

ダニエルが前科者であっても、やっぱりティーンだなと思えるのは、仮出所後に勤めるはずだった製材所のある村の教会の神父になってしまったこと。

アホやん。そんなのすぐ見つかるやろーーー。

まあ、誤解でそうなったかもわからんけど、「あ、こういう方法でなれる!」とわかったなら、その村はやめて、製材所からもっと離れた村にしなさいよ。もー。

わかりやすい罪を犯した者が犯罪者なら、1人の村人をとことんイジメる村人たちは何なのか。

田舎者なので、新参者や自分にすり寄ってこない者を噂などを撒き散らしてイジメる大人たちをたくさん見てきた。それに巻き込まれたくないから口を閉ざす他の者たち。

ちっこい世界で「優劣」をつけるのが生きがいの人たち。

そんなことばかりしてるからみんな都会に出ていくんじゃい。

・・と田舎あるあるを見てイラッときました笑。

ダニエルは前科者でティーンだからか、多額の寄付をチラつかせて教会を意のままにしようとする地域の権力者に媚びずに聖書の言葉でイヤミを言うとこがスカッとしたな♪

 

映画『聖なる犯罪者』のキャスト

@『聖なる犯罪者』(2019年 ポーランド・仏)

ダニエル・・・・・・バルトシュ・ビィレニア

リディア・・・・・・アレクサンドラ・コニェチュナ

マルタ・・・・・・・エリーザ・リチェムブル

 

【2021】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『聖なる犯罪者』

2位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』