『ギャング・オブ・アメリカ』ハーヴェイ・カイテルの渋さと、過去のギャング映画の知識を楽しむギャング映画ファンのための映画

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

ポスターにハーヴェイ・カイテルが載ってて、ジャンルが「ギャングもの」というだけで映画館に行ってまいりました!

ハーヴェイ・カイテル、やっぱりかっこいいし、渋い。

こういうおじさまが大好き。

⇧ユダヤ人ギャングのマイヤー・ランスキーを演じるハーヴェイ・カイテル。

今回は、本人に似せるため、いささか眉毛濃いめに仕上げてあり、ユダヤ人らしい尖った鼻にするためか、先端だけ特殊メイクだった気がする。

まだ公開したばかりだというのに、小さな部屋で上映するとは!ギャング映画をナメるんじゃない!(こういう映画を観ると少し口調が影響されます笑)

まあ、アニメに興行収入を頼っている昨今の映画館事情の中、ハーヴェイやギャングを全面に押し出した映画を大きな映画館に呼んでくれるのは、ありがたいと思おう。

こんなマニアックなギャング映画に来るということは、よほど好きな人だよなと思いながら、館内を見渡してみる。

どうか、皆さん、広めてくだされ、マフィア(ギャング)映画や、こういうやんちゃなおじさまは世に必要だってことを。

今回の映画は実在したギャング、マイヤー・ランスキー(ハーヴェイ・カイテル)の生涯を描いたもの。

良かったー、『アイリッシュマン』みたいにデ・ニーロの顔だけCGで若返らせたのはいいけど、「顔は30代だけど、動きは70代」って感じじゃなくて笑。

ちゃんと若い時のシーンは若い役者さんが演じてたから笑。ガンアクションにはキレがないと!笑

地味にたんたんと進む映画だったけど、実在したギャングの名前がてんこ盛りで、今までのギャング映画の知識総動員かつ、より知識が広がった映画だった。

派手さはないので、『ゴッド・ファーザー』や『グッド・フェローズ』なんかを思い浮かべて行かないようにね。

ストーリー

1981年、ニューヨークの作家デビッド・ストーン(サム・ワーシントン 画像左)は著作が振るわず、新しいネタを探していたところに、マイヤー・ランスキー(ハーヴェイ・カイテル 画像右)の伝記を書くことを思いつく。

マイヤー・ランスキーとは、全米の犯罪シンジケート(ネットワーク)を作った先駆者で、それに合わせマーダーズ・インクという暗殺者の会社も作ったと言われる疑惑の人物である。

デヴィッドは単身マイアミに乗り込み、ランスキーに連絡を取りインタビューしていく。

「自分の死後まで出版するな」という約束の元、彼の生きた1920年~1980年までが回想と共に語られて行く。

ランスキーの隠し持った財産をつきとめたいFBIも彼らを張り込んでいた・・・。

ランスキーの存在を知らなかった

原題が『LANSKY(ランスキー)』だったのよ。

あれ、知らんわ、この人。

知らなかったけど、映画が進むにつれ、『ゴッド・ファーザー』シリーズに影響を与えたあの時代のギャングなんだなとわかった。(1920年~1960年頃に活躍してたマフィア・ギャング)

しかも全米の犯罪シンジケート(ネットワーク)を作った先駆者というから興味津々。

ニューヨークでハバ効かせてたマフィアやギャングたちは、FBIの締め付けが厳しくなったのもあり、合法ビジネスの一環として、マイアミやラスベガスへのカジノ経営に乗り出し始め、ついにはキューバへも・・・。

ちょうどその頃のお話なので、「あ、『ゴッド・ファーザーPartⅡ』※やん!とウキウキしはじめる。

※『ゴッド・ファーザーPartⅡ』・・・アル・パチーノ演じるシチリアン・マフィアのボス、マイケルが麻薬ビジネスの代わりにラスベガスのカジノホテル経営に挑戦し、FBIの目が届かないキューバへ進出していく。

ランスキーは、ユダヤ人のギャング。ヨーロッパでナチスに迫害を受け、家族ともどもアメリカに移民として渡ったが、真面目な父親の稼ぎではとても豊かな暮らしはできず、サイコロ賭博に手を出していく。

もともと、数字に強かったのが幸いし、合法ビジネスを目指してもキッチリ儲けを出していくので、シチリアンマフィアやアイリッシュギャング※からも一目置かれた存在となっていく。

※日本で言うヤクザのこと。イタリアのシチリア出身者で形成された組織しか「マフィア」とは呼べない。それ以外はギャングと言う。

バグジーと呼ばれ恐れられた相棒と共にビジネスを立ち上げていく。

この映画ではバグジーはケンカっ早いだけのちょっと無能な男に描かれていたけど、90年代の映画の『バグジー』では、ラスベガスに巨大なカジノの街を作った功績者として描かれているので、タイトルだけは知ってたけど、これも観て勉強しなきゃ♪

ラッキー・ルチアーノ※というシチリア出身のアメリカの大物マフィアにも気に入られ、これから先生き残るためには横のつながりが大事だという考えが一致した彼らは全米犯罪シンジケート(ネットワーク)を作っていく。

※シチリア出身だけの組織構成にこだわるマフィアの未来に限界を感じていた人物。ユダヤ人のランスキーとも人種の垣根なく接することで、権力を拡大した。

大物マフィア(ギャング)が集う会議もゾクゾクしちゃった(アル・カポネなどもいた)。

ランスキーの若い世代を演じたのはこの人

⇧ランスキーの若い世代を演じたのは、ジョン・マガロ。

あ、なんかこの人観たことあるーーーーー。映画を観ながらずっと思い出してたら、最後あたりで「あ、『マネー・ショート』のブラピに株を習うメガネの子やん!」

思い出してスッキリ。

あの時はコミカルでちょっと頼りない若い子ってイメージだったけど、今回はさすがギャング役だけあって体重を増やしたみたいでハクもついてた。

ランスキーは身長が低く160cmくらいだったらしいから、それもあって選ばれたのかも。

ランスキーは妻とはうまくいかなったけれど、子供思いで、特に一番上の脳性麻痺で車椅子生活だった長男との絆が描かれていた。

マイアミらしい、湿地帯の近くで息子に「オレのようにはなるな」と諭すマイヤーを素敵に演じてたジョン・マガロ♪ 

マイアミの湿地帯が出てきただけで嬉しい私♪

覚悟が足りない女にイラつく

毎回こういう女が出てくるのよねえ。

ランスキーの妻。

つきあう時は、悪者のスリリングな魅力に近寄ってきたくせに、結婚してしばらくすると「人殺し!」とか「まともな仕事してよ!」叫びまくる・・・笑。

あんたね、ギャングの妻になるからには、中途半端な覚悟でのぞむんじゃないわよ。

一緒に悪にまみえるくらいの覚悟じゃなくちゃ。顔洗って出直して来い!!

ミンクのコートを買ってやると言われてホイホイついてきたくせに!

金は享受するくせに、リスクは負わないってか。岩下志麻を見習え!(笑 極道の妻たちのことを言ってる)。

『レジェンド 狂気の美学』でも『ゴッド・ファーザー』でも、カタギの女と結婚するけど、最初はそのへんのやんちゃ女子より純粋でカワイイかもしれないが、結婚したら急にキレイ事を言い出すからね、止めといた方がいいのよ。

ほら、言わんこっちゃない!!

最初にバンバンごちそうしてくれて、いいクルマで迎えに来てくれるから、「ほえ~」となるかもしれんけど、「結婚」はやめときな、覚悟がないなら。

・・・・・と毎回イラ立ちますが、まあ、これも含めたギャング映画が好きなのであります笑。

サム・ワーシントンはいらないのでは?

久しぶりに観た、サム・ワーシントン(画像右⇧)。

『アバター』でセンセーショナルにデビューしたのが、アダになったかしら。

その後はなんだかあんまり飛躍できなかったね(余計なお世話笑)。

今回も、彼がやったこの役いらないのでは?と思った。

お金に困った記者が、一発逆転を狙ってランスキーに連絡を取り、自伝を書かせて欲しいと頼む。

妻とは離婚寸前で、起死回生を狙ってるけど、その割にはモーテルで会った女子と寝ちゃったり、とにかく残念なのよ。だから妻から見放されるのよ!!アホウ。

彼がランスキーにインタビューするという形式で物語が過去にさかのぼっていくけど、あんまりハッと惹かれるような記者じゃないのよね。

ダメ男はダメ男でも、女が世話したくなるダメ男ならいいけど、この人はちょっと「うだつのあがらない」感じのダメ男(ひどい笑)。

今はダメダメだけど、時々ハッとする質問ができる、眠ってる才能なんかを垣間見せてほしかったわ。

「私の本を書きたい本当の目的は何だ」

そう聞かれて、きれいな理由を述べるものの、ランスキーは見抜いていて「正直に話せ」と促す。

「妻子を取り戻したいから、金を作りたい」と言うと、納得して話し出す。

ランスキーも金のために踏ん張った時期があるから、彼を信じようと思ったのかな。

私だったら、違う人に書いてもらうな、もうちょっと仕事できそうな人に笑。こいつ、金に困って約束破りそうやん?

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

映画は、ちょっと地味でたんたんと進むので、華やかさには欠ける。

それでもこのランスキーという人物が『ゴッド・ファーザー』シリーズに影響を与えた一人かと思うとウキウキ楽しめた♪

やっぱりギャングも腕っぷしだけ強くても、上には這い上がれないのね、頭がよくないと!

ランスキーが人生を話す場所が、インタビュアーのデビッドに金がないからか普通のダイナーだったりするので、そこが嬉しかった!

ちゃんとケチャップ、紙ナプキン、塩コショウ、シュガーボトルなど、私の大好きなセットがテーブルにあり、ダサい制服のウェイトレスが注文を聞きにきたのがたまらない♪

ユダヤ人のギャングなので、イスラエル(ユダヤ人の国)が出来た時に帰化したくて申請をしたりする場面があるが、コロナ禍の撮影とハーヴェイが高齢のためか、ロケはまったくしてない感じだった。

景色の映像だけで、建物の中のみの撮影がほとんど。

マイアミも若い時代の回想シーンの分だけロケしてるのかな、湿原は出てきたし。

これは予想だけど、ハーヴェイのシーンは、マイアミビーチと見せかけてロスのビーチだったような気がした。

「世の中は白黒じゃない、グレーの濃淡でできてるんだ」

ランスキー、おっしゃる通りです!!

オリンピックを例にあげても、大会関係者は「スポーツマンシップ」という言葉なんて知ってるのか?という腹黒さだ。

接待に溺れると、本来の目的を忘れてあんな風になっちゃうんだねえ。

今回はナチスの迫害を受けたランスキーがドイツ人を徹底的に見つけて殺したりと、ナチスとユダヤ人の関係や、イスラエルの建国にギャングが多額の金を捻出してたなどの、黒い部分が知れて、面白かった♪

次回のギャング映画を観る時に活かせる知識をたくさんもらえて嬉しかった♪

もっと勉強しなきゃ!(こういうのはバンバン調べる私笑)と思わせてくれた、新しいギャングの発見でした♪

サム・ワーシントンの作家の設定がまるごとなかったら、もっといい映画になってた気がするな笑。

【2022】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『マークスマン』

2位・・・・・『ギャング・オブ・アメリカ』