『KCIA 南山(ナムサン)の部長たち』イ・ビョンホンの抑えた渋い演技がすごい。緊迫感がたまらない120分

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

映画好きの集まりに属しているのと、コロナ禍でミニシアター系の映画しか来ないのもあり、韓国映画を観に行くようになったのは大きい。

まあ、これは「スパイ」だからね。最初から気になる度合いが違う。

しかもクーデターや暗殺、軍事政権台頭などすさまじい暗黒の歴史を持っている韓国の闇を描いた作品で、諜報機関のTOPが大統領を暗殺した実話となれば行かないといけないじゃないか。

韓国映画をあまり見てこなかったので、今回その諜報機関のTOPを演じる主役のイ・ビョンホンはほとんど、ハリウッド映画でしか見たことなかった。

いやー、ビョンホン、かっこいい!!

いつもの「かっこいいぞ、オレ」みたいな雰囲気を封印し笑、大統領になじられるのをグッと耐えるかっこ悪い役を渋めの演技で熱演しています。

面白かったー!!こんなのどんどん作ってーーーー!




ストーリー

1979年、KCIAと呼ばれる韓国の中央情報部のTOPであるキム・ジェギュが時の大統領パク大統領を暗殺した事件の実話に基づく映画。

暗殺された後、また新たな軍事政権が勃発したため、反発を煽らないようその件についての書籍は販売禁止になり、事件は謎のまま90年代を迎えた。

90年代に連載され人気を博したノンフィクション「実録KCIA 南山の部長たち」をもとに2019年に映画化が実現した。

南山(ナムサン)とはソウルの中心部に位置する山の名前で、そこにパク政権の権力の限りを尽くし拷問や虐殺などの噂が絶えない情報部があったことから、「情報部」のことを「南山(ナムサン)」と呼ぶようになり人々から恐れられた。

今でも謎が多い事件のため、映画では役名は実名とは変えて、実話にかなり沿っているがフィクションの位置づけにしている。

事件発生前の40日間に絞って描き、冒頭はアメリカに亡命した元CIA部長のパク・ヨンガク(クァク・ドウォン)によるアメリカ議会での「パク政権の人権を無視した悪政」についての聴聞会から始まる。

ヨンガクは、自身を見捨てたパク大統領の悪政を暴露した本を出版する予定だった。

怒り心頭のパク大統領から命じられた南山のTOPキム・ギョピョン部長(イ・ビョンホン)は、アメリカへ飛び、同士でもあるヨンガクに出版を思いとどまるよう説得するが・・・。

腹心の部下だったキム部長が大統領暗殺に至るまでの彼の葛藤と怒り、悲しみをイ・ビョンホンが熱演している。

最後までずっとドキドキハラハラの見応えある映画です。

実名と役名、演じた俳優は以下のようになっています。

実名 役名 俳優名
パク・チョンヒ大統領 パク大統領(フルネームなし) イ・ソンミン
キム・ジェギュKCIA部長 キム・ギュピョン イ・ビョンホン
キム・ヒョンウク元KCIA部長 パク・ヨンガク クァク・ドウォン
チャ・ジチョル警護室長 クァク・サンチョン イ・ヒジュン

 

パク大統領の独裁政権下の背景

パク・チョンヒは、1961年の軍事クーデター(武力行使で現政権を覆す行動)でその名をしらしめ、1963年から1979年の凶弾に倒れるまでの18年もの間、大統領を務めた。

経済の立て直しが成功し、世界最貧困層から脱した功績もあったので、今でも韓国にはパク・チョンヒ政権下がよかったと思っている保守派がたくさんいるらしい。

その功績の裏では自身の政権を守るべく、スパイやKCIA情報部を使って思想家を拷問したり、反発した者を暗殺し思想の弾圧を行っていた。

後の証言により、毎月開かれる宴席には自分に不利が及ばない若い女を情報部に選ばせて呼び、性行為を強要していたことが判明している(女性の犠牲者は200人に及ぶらしい)。ヒャー最低!!

学生による反政府デモの鎮圧も、キム部長の世論を案じて穏便に解決する意見を聞き入れず、警護室長の意見を重用し、武力で制圧した。

1979年、毎月行われる宴席で、キム部長によりパク大統領は射殺されてしまう。

 

耳に痛いこと言う部下を大事にしないと政権崩落は近い

長い政権下で、おごりも出てきて、反発者を殺しすぎたせいか誰も信じられなくなり、腹心の部下の意見も聞き入れなくなっていくパク大統領。

やっぱりあんまり自分の天下が長いと耳に痛いこと言ってくる部下はめんどくさくなってくるのかな。でもそれが政権の終わりへの始まりでもあるよね。

今のムン・ジェイン政権の前、親友を側近にあげてしまい裏で操られていたパク・クネ大統領が弾劾で失脚させられたけど、この暗殺されたパク・チョンヒの次女だったとはビックリ。

側近を見る目が親子ともどもないよね(^.^;。 やっぱりゴマすり、自分の私利私欲しかない人を見抜けないと頂点に立つ人はこうなってしまうよね。

第三者の目から見ると、「あいつゴマすりやん」とすぐわかるのに、私の会社にもおだてられて鼻の下伸ばした上司が多かったこと。当事者はやっぱり気づかないのかしらね(^.^;。

私も褒められるの好きだけど笑、こんな映画を観すぎてるせいか、あんまり不自然な持ち上げ方する人には逆に全幅の信頼を寄せないんだよね。

やっぱり織田信長もお調子者の秀吉を重用しすぎたせいか、根が真面目で耳に痛いことも言う明智光秀を軽んじてしまったのが「本能寺の変」につながっていくんじゃないかな。

ちょうど大河ドラマの「麒麟がくる」(明智光秀が主役)でも本能寺の変の最終回があっててタイムリーだった。

 

イ・ビョンホンがいい!

いつもの「オレってかっこいいだろ」的なオーラを抑え(そんな言うほど彼の作品観てないくせに笑)、大統領の無理難題に振り回された挙げ句、叱責され苦悩に耐える役柄を見事に演じている。

イ・ビョンホンらしい長髪じゃなく、70年代官僚の雰囲気をビシッと塗り固められた短髪でキメている。

かっこいい~。

心から政権の未来を考えて、大統領に苦いことも進言する腹心の部下に弱いの、わたし♪

しかも白いシャツの上からもわかる鍛えられた体♥。

ここまで身を汚して仕えたのに、あっけなく切り捨てられるのが世の常。

セリフを発さずとも、キム部長の「落胆」や「怒り」、「忠誠心を逆手に取られたことへの失望」など表情でわかる、ビョンホンの演技はほんと素晴らしかった。

キム部長とライバル関係にあるゴマすりの警護室長が、韓国映画によく出てくるやたらと大声で何かと大ゴトにするめんどくさいキャラだったので思慮深いイ・ビョンホンがよりかっこよく見えた笑。




ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

この映画の元になったのは「実録KCIA 南山の部長たち」というノンフィクションの連載で、当時新聞記者だったキム・チュンシクが書いたもの。

当時は新聞社にもKCIAから派遣された職員が常駐して、誌面をチェックしていたらしい。

思想の弾圧がおおっぴらに行われてたのねえ(^.^;怖。

今は韓国も民主化が進んで、この頃の暗黒時代を調査する委員会が発足されたようなので、暗殺や虐殺の事実が露呈してきているのもあり、こういう作品も増えていくかもね。

このレビューを書くにあたって色々調べたので勉強になったー!!知られざる韓国の黒歴史!

しかし、いつかのイタリア映画でもそうだったけど、韓国の名前を把握するのが大変だった笑。

イタリア映画は名前が長すぎて覚えられなかったけど、今度は短すぎてみんな2文字な上、「キム」や「パク」がやたら多いので「どのキム??どのパク?」で開始早々脳内大混乱笑。

短すぎても覚えられないのね笑。 しかも調べたら韓国の名字は人口の半分がキムさんが占めているらしいのでそりゃわからんわ(^.^;。

この事件は謎が多すぎるため、事実に少しの映画的予測を加えたフィクションにしてあり、暗殺したキム部長を英雄視もしていないし、何が彼をそうさせたのかを観客が考えるようになっている。

でも原作者はこの映画の8割が事実と言ってるのでフィクションと位置づけていてもかなり史実に近づけており、中でも暗殺シーンは事細かに忠実に再現されてるようです。

暗殺シーンの緊迫感がもうすごすぎ!!

映画を作ったウ・ミンホ監督は大学時代に元となったドキュメンタリーに感銘を受け、自分が監督になったら『ゴッド・ファーザー』みたいに描いた映画にすると誓ったらしい。

それを実現させているのがすごいよね。

このエピソードを知らずに映画見たけど「あーーここ『ゴッド・ファーザー』に 似てる!!」と思った部分がほんとにあって、2倍楽しめたのは言うまでもない♪

『ゴッド・ファーザー』ファンはより楽しめます。

この映画により、韓国映画のスパイものは積極的に観に行こうと誓ったわたしでありました笑。

最下位の『キング・オブ・シーヴズ』も8割事実で、2割をちょっといい感じに脚色してたらもっといい映画になったのに!とどんどん落ちていくおじいさんたちの映画を気の毒に思った笑。

 

映画『KCIA 南山の部長たち』のキャスト

@『KCIA 南山の部長たち』(2019年 韓国)

キム・ギョピョン(キム部長)・・・・イ・ビョンホン

パク大統領・・・・・・・・・・・・・イ・ソンミン

パク・ヨンガク(パク元部長)・・・・クァク・ドウォン

クァク・サンチョン(警護部長)・・・イ・ヒジュン

 

【2021】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

2位・・・・・『キル・チーム』

3位・・・・・『聖なる犯罪者』

4位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』