『クライ・マッチョ』多様性の波に負けるな、イーストウッド

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

私は、アメリカの「優しくて強い男」が大好きです。

今回、カウボーイの世界観は好きだったんだけど、なんかクリント・イーストウッドが、とうとう「多様性の波」に倒されかけてる気がして、ちょっと悲しくなりました。

なんか、いつものように「汚い言葉」を使わないのよ。

「このメキシコ野郎!」「ニガーめ!(黒人の差別的呼び名)」

この口の悪さと、真の優しさの対比がクリント・イーストウッド作品の魅力だったのに。

どうしたの、イーストウッド。今の多様性に寄せなきゃ金払わないって映画会社に言われたの?って思っちゃった。

ピリッとした皮肉屋の部分を全部取り払ってしまったから、『運び屋』※から2年くらいしか経ってないのに、ギラギラ感がなくて「おじいちゃん」に見えてしまった。(いや、十分おじいちゃんなんだけどね笑)

※『運び屋』・・・・90歳の老人が何度もシカゴからメキシコに麻薬を運ぶ「運び屋」をやっていた実話。犯罪歴がない老人が一番警察の目をかいくぐれるとマフィアは読んだのだ。

私だって、人にイヤな思いをさせる言葉を浴びせたりするヤツは、もちろん嫌い!

でもね、映画の中の一つの表現にイチイチ噛み付く、「自称レインボー集団」には嫌気がさすのよ。

最近はクリント・イーストウッドが映画の中で描く「男性性」に疑問視する声もあったりで、多分映画人として辛かったと思う。「負けるんじゃない!」「私は応援してる!」とアメリカに向けて心でエールを送っていたが。

ほんとそういうヤツらに限って、昔からちゃんと映画を観てきてないヤツが多いのよ。

教育映画じゃないんですから。エンタメなんですよ、そこわかってる?

イーストウッドはね、昔からちゃんと黒人を起用してたし、女性のボクサーが報われない話や、女性や白人以外の人種の文句をブツブツ言いながらも、最後は不器用ながらも歩み寄ったり、助けるっていう映画を撮ってきたんだからいいんじゃないの。

「このメキシコ野郎!」とか言う姿が好きなのよ、悪態つきながらも絶対助けちゃう。

そんな不器用な優しさも認めんのか。

人権や多様性を主張する個人や団体がここ十数年で増えてきたけれど、映画全体を観てから言うのではなく、映画の中の一部を切り取って「ここが差別だ」「ここは女性蔑視だ」というから、真の主張が伝わらないんじゃないの?

そういう主張をする団体や個人がいることは大切だ、でもやるなら映画全体を見ろ、エンタメという頭を育てろ、一部分を切り取っていちいち揚げ足取るようなことをするな!って言いたい。

映画業界も気を使ってつまらん映画を量産してるし、そんなお上品な映画なんて、いらないんだよ!

ちゃんと映画を観る人のために作ってほしい。ほんとの映画好きは、中のセリフにいちいち言わないよ!

女の人が救われるのは、男のそういう不器用ながらの「根っこにある優しさ」なんだから。

それをあんたの彼氏でもないのに、いちいちキレてたら、自分のことしか考えないしょうもない男を自分で増加させてることになるんだから。

後から後悔したって知らないからね。(→最近の映画界への鬱屈が爆発笑)

この世から無骨で優しい男がいなくなったら、お前たちのせいだ!(怒)

ストーリー

落ちぶれた元ロデオ(暴れ馬に乗る競技)の名手のマイク(クリント・イーストウッド)は、競走馬の種付けで牧場主に雇われ一人ひっそりと暮らしていた。

その牧場の経営が困難になり、ある日マイクは解雇されてしまう。

解雇されたものの、落馬事故の後もずっと世話になってきた牧場主からの頼みを断れなかったマイクは、彼のメキシコにいる一人息子のラファエルを母親の了承なしに連れ戻すことになる。

ラファエルは、男遊びに夢中な母親にあきれて家を飛び出し、ストリートで生活しているという。

一歩間違えば誘拐になる(十分誘拐笑)が、親の愛を知らない少年と、メキシコシティからアメリカの国境までのロード・ムービーと、道中出会った人との交流を描く。

今回の舞台 メキシコシティ → テキサス

モテモテを演じるには91歳は、ちと無理すぎないか?笑

わかる。クリント・イーストウッドは昔は最高にかっこよかった。

だからモテ要素を映画に入れたいのもわかる笑。

でも、今回はさすがにヨボヨボになりすぎて(91歳だからね)、メキシコのパツンパツンな豊満美女がベッドに誘うシチュエーションが無理過ぎた笑。

マイクがラファエルがいるという住所に着いてみると、とにかくすんごい豪邸。(母親が何の職業かは語られない)

若い部下に囲まれた、その一人息子の母親(むっちりラテン美女)が自分のベッドに呼び「ねえ、とにかく横になって♥」と迫るのには、映画館で目が点になった笑。

わかるよ、年を重ねてもダンディなおじさまはモテるからね、でもベッドのお供としてのモテ方じゃないでしょうよ・・・。

映画『運び屋』での、ブツ(麻薬)を運んだお礼にと、メキシコの麻薬カルテルのボスが娼婦をあてがってくれるのはまだわかるけどね。

こ、このシーンいるか?と疑問だった笑。

立ち寄った村での、メキシコ人女性(この人も豊満笑)と恋に落ちるのもいささか無理がある笑。

たぶんダイアン・キートンくらいの70歳過ぎた細身の白人女性だったら、まだ違和感なかったと思う。

でもねメキシコ美女ってダイナマイトボディで体がぶ厚いから、押し倒されたらイーストウッドの骨が折れそうで見ていて怖いの笑。やめてやめて、そんな爆乳、窒息しちゃうってば!笑

イーストウッドよ、いったい何歳設定なんだ、この役は!?笑 

ニワトリのマッチョはよかった

父親の顔も知らず、母親からは愛されなくて、自分で強く生きるんだ!と、ストリートチルドレンとして生き、闘鶏(鶏同士をケンカさる賭博)で生計を立てていたラファエル(⇧右 エドアゥルド・ミネット)。

このラファエルが飼ってる闘鶏用のニワトリの「マッチョ」がカワイイの。

私は小学校で飼育係をしていた時、いつも「コケ!!」と叫び倒されてたから、ニワトリをカワイく思えてなかったけど笑、このマッチョは、いつもジッと小脇に抱えられてるし、悪者に飛びかかってつついてやっつけたりと大活躍でつい「カワイイ!」と思っちゃった。

強くないと生きていけないと、ニワトリに「マッチョ」と名付けたラファエル。

たまには「弱さ」を見せて、人に頼ることも大事だと、若さでイキってるラファエルを馬の調教を通じて諭すマイク。

落馬事故で落ちぶれ、一家離散になっても弱音を吐かず、たんたんと生きてきたマイクは、人に助けを求めてこなかった。

家族にもたぶん出ていかないでくれと言えなかったんじゃないかな。気づいた時にはもう年を取りすぎていた。

そうラファエルに説きながら、今まで強がって生きてきた自分自身も、通り過がりの町で出会った食堂の女主人マルタに癒やされ寄りかかりたい気持ちに気づいていく。

サスペンスは無理に入れなくても良かったのでは

クリント・イーストウッドの映画を観る時、毎回冒頭の空撮から始まるアメリカの景色がほんと大好き。

あーーーーイーストウッドの映画を今から私は観るのね!という感激に浸れる瞬間である。

テキサスの草原と赤茶けた大地、アメリカの牧場のだだっ広い風景に、オンボロなアメ車のトラックやバン。もう、最高です。

イーストウッドが映画で使う、味のあるお店やダイナーが大好き。

アメリカを愛してやまない彼の目から見たアメリカのすべてが、私の心を蜂の巣にするー!!(機関銃で撃たれたら体が穴だらけになり蜂の巣みたいに見える例え笑)

そこにはオシャレ感など一切ない、ヘルシーなんて言葉とは無縁なジャンクフードがてんこ盛りで毎回嬉しい。

なので、今回ラファエルの母親が放った追手の者から追われる・・・というお話は入れずとも、母親から愛されなかった息子がマイクと出会うことにより、人を信じれるようになり、父親に会いに行く・・・という人間ドラマってだけで十分よかった気がする。(連れていいと言いながら、やっぱり行かせないと追手をだしたのだ。)

久しぶりに観たネコパンチ笑

メキシコ、追手から逃げると聞くと、我々としては『運び屋』のようなドキドキハラハラ感を期待して映画館に行っちゃうじゃないか。

それなのに、立ち寄った村で長々と馬の調教をやったり、食堂の女主人と恋したり。

はて?追手から逃げなくていいのか?笑

あまりにものんびりしてるので、衝撃だった。

しかもしまいには追ってきた筋骨隆々のラテン男を一発のパンチで倒すって・・・・。大昔、ミッキー・ロークが来日した時のボクシングの試合のネコパンチみたいだった笑。

※ネコパンチ・・・・セクシー俳優で人気だったミッキー・ロークが急にかねてよりやりたかったボクシングに転向。日本でも人気だった彼は1992年来日し、試合は超満員、TVで生中継された。注目の中、言葉にもならない弱々しいパンチで相手があっさりノックアウト負け!みんなが八百長だと失笑し「ネコパンチ」と報じられ、人気はガタ落ち。

ネコパンチでもイーストウッドの勇姿は、映画館にいたおじいちゃんたちにとっては羨望のまなざしだったかもしれないが・・・。

そうか、自分の愛したスターは、いつまでもモテモテで強くあってほしいよね。

と気持ちはわかるんだけど、スタローンみたいに筋肉がないからね、ちょっと説得力がないのよ笑。

馬を扱うイーストウッドは、やっぱり素敵だった

この作品で30年ぶりに馬に乗ったという、イーストウッド。

60歳の時に撮った『許されざる者』以来だったらしい。

あれ、60歳だったのか、そう考えるとすごいなあ。私が20歳のとき、もうすでに60歳でそして未だに監督と主演を両方やってるんだからね。

わたしも負けられん!

馬をなでるイーストウッドの優しい顔。アメリカのかっこいい男と、「馬」と「大型犬」の組み合わせはキュンキュンきます。

イーストウッドの映画でよく観る、アメリカ親父がタイヤの交換やオーバーヒートした時の対処法を息子や若者に教えるシーンってほんとシビれる。

日本の車は壊れないからね、そんなの習わなくていいもんね。

昔彼氏がタイヤを自分で替えてる姿を惚れ惚れしながら見てたことあったなあ。ああ、アメリカの男みたいって笑。

今回イーストウッドは、ラファエルにロープの結び方や馬の乗り方、調教、世話の仕方などを教えます。そしてカウボーイスピリットを静かに語る。

アメリカはカウボーイとともに発展してきた。日本の侍魂みたいなもんよ。かっこいい!!

テキサスに行ってカウボーイ体験ツアーに参加してみたい!

元ロデオの名手だったのはいいけど、この年で、暴れ馬の調教は無理でしょう笑。

エッ・・・今から暴れ馬の調教するの!?とさすがに笑ってしまったけど笑。それくらい今回ヨロヨロしてたの。

まあ、それは予想通り遠目の映しでスタントマンだったけどね笑。

それでも馬に乗るのは30年ぶりというのに、すぐ感覚を取り戻したらしいから、さすが西部劇のスターだね!♥

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

散々文句を言いましたが、クリント・イーストウッドが大好きです。

こんなかっこいい91歳はいません!

ただ、ほんの2年前の『運び屋』を観た時は、まだまだ映画撮るやろうなと思えるほどギラギラしてたんです。

そのギラギラ感を昨今の多様性の波が奪ったとしたら、到底許せません!(怒)。

「これが男だ」、「男らしいとはこういうものだ」と思うのは観る人の判断や感想であって、他の人にその自分がいいと思った「男らしさ」を押し付けるのはその人が浅はかだからでしょうが。

そんなのを映画から排除しないと、善悪の判断ができないなんて、人間の感覚も随分衰えたものよ。

吸ったタバコを地面に捨てるかどうかは、その人の善悪の基準だし、それが子供にいけないからって、悪者がきちんと携帯灰皿に吸い殻を入れて、シートベルトをきちんと締める映画ってどうなのよ。

子供から「競争」や「タバコ」「エロシーン」を目に見えるところから全部排除しても、大人になったらそれが雨のように降り注ぐのよ?

目隠しするんじゃなく、見せて自分でそれをいいと思うかイヤだと思うか、判断させなきゃ。

だから社会に出たら挫折しちゃうんじゃないかしら。

「鬼滅の刃」でも「遊郭(ゆうかく)」を映すことに反対した親が多数いたらしい・・。それが日本の歴史なんだからさ、しょうがないじゃないか。 

それにはあれこれ言って、残虐シーンは見せていいんだという矛盾がわからん笑。

全編に漂う、メキシコの乾いた雰囲気と、カウボーイの心意気。しっかりと感じて楽しめましたよ。

ただ、もうカーチェイスや、逃亡劇は入れないでいいからね。それに期待したから、地味で物足りない部分があったよ。

今回は物語が少し弱かった。雰囲気はよかったけどね。解雇した後に老人にメキシコから子供を取り戻すお願いをするって、どうなの?って思ったからね笑。

今でもバリバリ運転してる、車愛が止まらないイーストウッド。

うちのじいちゃんも94歳になって最近とうとう自分で免許返納しちゃった時は寂しかったけど、自分で判断したからいいよね。(じいちゃんの子どもたち母世代は心配してたけど、孫の私は運転するのを応援してた)

危険だからと何でも、目隠しし取り上げる日本。途上国の若者の方がたくましいのは仕方ないかもしれないよね。

『クライ・マッチョ』のキャスト

@『クライ・マッチョ』(2021年 米)

マイク・マイロ・・・・・・クリント・イーストウッド

ラファエル・ポルク・・・・エドゥアルド・ミネット

【2022】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『マークスマン』

2位・・・・・『ハウス・オブ・グッチ』

3位・・・・・『ギャング・オブ・アメリカ』

4位・・・・・『クライ・マッチョ』