『スティルウォーター』娘の無実を晴らしに来てフランス女とよろしくやってるマット・デーモン

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

マット・デーモンがフランスの刑務所に囚われた娘の無実を晴らす・・・・!?

まるで『96時間』※みたいに、マットがあらゆる情報を駆使して娘を助けるかのごとくCMが作られてあったからそりゃあ、行くに決まってます!笑

※『96時間』・・・リーアム・ニーソン主演。フランスで誘拐された娘を人身売買組織からあらゆる情報を駆使して助け出す元CIAのお父さんの映画。

・・・しかし実際は大幅に違ってた笑(日本のCM詐欺あるある)。

だから観た直後は少しがっかりしてたんだけど、日を追うごとにサスペンスや人間ドラマとして最初から観てたらきっと面白かったなあと、このレビューを書く時点ではそう思えてきた。

マットは、アクションに限らず、こういうダークなものや社会風刺が入ってるものに果敢に挑戦してすごいわ(昔、ジミー大西にしか見えんと言ってたのは誰だ)。

この映画を観る時は、人間ドラマやサスペンスと思って観てくだされ。

いまのアメリカを風刺したセリフやシーンもチラホラでそこも楽しめます。

おフランスでアメリカの田舎のお父さんファッションで歩いてるマットが、観ていて面白かった笑。

観た後にモヤモヤした余韻がずっと残る映画です。

ストーリー

今回マット・デーモンが演じるのは、オクラホマのスティルウォーター在住の肉体労働者ビル。

石油採掘の仕事に従事していたが、油田が枯渇し仕事が少なくなり、今はハリケーンの後始末などの季節労働者も兼ねていた。

ビル(マット・デーモン)はそんな労働の報酬を貯めて、時おりフランスのマルセイユに訪問していた。

交換留学していた娘アリソン(アビゲイル・ブレスリン)が、同じ留学生の女子を殺した罪で9年の服役を課せられ、収監されていたからだった。

娘が収監されてもう5年が経っていたが、彼女はずっと「無実」を訴えており、ビルはなんとか娘の無実を晴らしたいものの、言葉の壁もあり手段もわからず、ただ訪問しているだけだった。

ある面会の日、娘から弁護士宛に再審請求の願いをフランス語で書かれた手紙を託され、それを翻訳した内容を知ったことでビルが動き出す・・・。

今回の舞台 フランス マルセイユ

マット・デーモンの体がますます四角くなってた笑

フランスで、アメリカの田舎のお父さん代表のファッションを貫くビル(マット・デーモン)笑。

チェックのシャツをジーンズにインして、野球帽。(アメリカかぶれの私はこのファッションが多発する田舎に一度行ってみたい)

マット・デーモンは、いかにも典型的アメリカ人の白人って面構えなので、この役にほんと、ピッタリ。

演じている役柄は、ブルーカラーと呼ばれる肉体労働者。

低所得者層が多く、政治的思想も保守的な白人が多いアメリカ南部のオクラホマ州の男で、リベラル(民主的)な考えを持つマットとは正反対の役柄。

でもあえて、リベラル派のマットが演じることで、保守層に訴えかけるものもあるだろう。

それにリベラル側が抱く理想が肉体労働者には必ずしも現実的ではないことも、映画の中で感じ取れるから民主党支持者が極端な理想に偏るのを防ぐのにもいいのかも。

40代に結構がっしり体型になってきてイヤだったのに、今回肉体労働者の役というのもあり、一段と四角くなってきてる!(マッチョというより、典型的アメリカ人の中年男性体型)

マットは好きだけど、「LOVE♥」じゃないから、体型の変化も素直に受け入れる私(誰もそんなの聞いてない)。これがブラピだったら耐えられない!笑

助け甲斐のない娘アリソンをアビゲイルがうまく演じてる

アメリカ映画で「アリソン」と名の付く役柄の女にいいやつはいない(私の印象笑)。

この娘がね、なんか、助けたくない雰囲気を出してるちょっとヒネた娘なのよ。

たぶん、アメリカにいた時に父親と不仲になったから、フランスに飛び出したんだろうけど、面会に来る父親にすっごく態度が悪いの(私がマット・デーモンひいきで観てるからかもしれんが)。

「パパは頼りにならない」だの「仕事が遅い」だのいい加減にせい!

お前なんて一生刑務所に入っとけーーーーーー!!

でも、それがティーンネイジャーなのかな。自分の釈放のことしか考えてない。

アメリカの保守的な村で、異国で殺人事件を起こして収監された娘を持つ家族がどれほど辛い目に遭うか、そして季節労働者の父親がフランスに会いに来ることがどれほど大変か。

まあ、彼女も異国の刑務所にいるからアメリカのそれよりも大変だろうけどね。

でも、そんな同情を感じさせないくらい、ヤな娘なのよ(それほど、このアビゲイルがうまい)。

観た瞬間、あ、『幸せのレシピ』のゾーイだ!と気づいた。あの子役のときもうまかったもんね。

娘の無実を晴らしに来たお父さん、フランスで恋に堕ちる笑

ビルは、たまたまホテルの隣室だったフランス人のシングルマザーのヴィルジニー(カミーユ・コッタン)と出会ったことで、娘の事件の調査への協力が得られるようになる。

マットの代表的なアクション映画『ボーン・アイデンティティ』でも、暗殺者でありながら行く先々で女子に助けられてたボーン(マット・デーモン)。

寡黙で不器用であっても、優しさと正直さが滲み出てる人を、女は見抜くのよね。

言い訳がましくないのもあって、理不尽な目に遭いがちなのを観てるとつい協力したくなっちゃうのよ。

今回も安アパートに暮らすヴィルジニーが停電のためにたまにホテルに泊まってることを聞いたビルは、配電盤の修理をかってでます。

娘から預かった手紙を翻訳してくれた彼女へのほんのお礼なんだけどね。

これは車も家電も壊れがちのアメリカ人の得意ジャンル!笑 もちろんタダで修理してくれるので大家さんにも気に入られます。

シングルマザーとしては、こういう機械ものの修理とかしてくれたら、惚れるのわかる!!電球だって換えるの一苦労なんだから(→実感こもってる元バツイチ)

しかも、大人の国フランスでは、子煩悩なアメリカのお父さんは目立つ!!!

ヴィルジニーの一人娘のマヤも一緒に遊んでくれるお父さんみたいな存在が出来て、すぐに懐く。

ヴィルジニーは、配電盤のお礼も兼ねて、ビルの娘の事件の調査の間、ルームシェアをかってでてくれる。

就労ビザがそんなにすぐに降りるのかのツッコミはさておいて笑、ビルは日雇労働をしながら暮らすうちに次第に母子に惹かれていく。

おいおい、刑務所にいる娘の立場からしたら、父親がフランス女とよろしくやってる上にかわいい娘が出来てたら面白くないって!

そう思いつつ、言葉の壁があるフランスで一人法の壁に立ち向かうには、心の支えがないと、やってられんよねー・・・・とビルの気持ちもわかる笑。

リベラル女子のキレイ事に少しムカついた件

事件の調査をする際、聞き込みに一緒に車で乗せていって、通訳までしてくれるヴィルジニー⇧(カミーユ・コッタン)。

すぐ、気づいた。「あ、『ハウス・オブ・グッチ』で、グッチの跡継ぎをガガと取り合う女じゃないか」

英語も話せるフランス人女優は重宝されるのかもね。

さて、この女優さんは好きになったけど、彼女が演じるヴィルジニーが、マルセイユの低所得者層に聞き込みしている時に、事件の鍵を握ってる若者アキーム(アラブ系フランス人)の写真を観せるとその人らが「こいつらどいつも同じ顔してるよねー」という発言をする。

ヴィルジニーは「そんな差別はいけないわ!!」と憤慨、聞き込みの途中で放り出し、もうこんな聞き込みはしたくないと言い出す。

ほら、出た、こういうリベラルな人の融通の効かなさ。

今はね、ビルの娘の無実を晴らすのが最優先なんじゃないの。そういうのはいったん脇に置いとくってことは出来ないの?(犯罪映画を観てる人はこういう発言はありきと慣れている笑)

確かに差別発言はいけないよ、でもね、移民によって職を奪われたら恨み言の一つも言いたくなるんじゃないかしら。

自分の職や住居を奪われたことがない(奪われる可能性がない)人が高いところから言うキレイ事は、この際もういいのよ。

ビルも言う。「オレはああいう人たちと日頃仕事をしてるんだ。頼む。娘のために今は目をつぶってくれないか」

ビルも保守的白人の村で生きてきたから、こういう差別発言を、実は地元ではたくさんしてきたかもしれないよね。

でも異国で違う人種の自分に優しくしてくれたヴィルジニーたちに出会い、地元に帰った時に移民に対する態度が変わるかもしれない。

マット・デーモンも、自分の政治的思想とは異なる保守的なアメリカ人を演じるのと、アフリカ系の移民が多い南フランスのマルセイユを舞台にしたのも、今の分断したアメリカに何か伝えたいものがあるのかな。

それにしてもアクション映画には昔から、この手のキレイ事を言う女がいるのよ。助けてもらったくせに「暴力はいけないわ」とか言うやつが(最初にありがとうと言え!)。

会社とかでもたまに観るけど、ニュアンスを汲み取れよ、何でもハラスメントと言うな!そんなお前の存在自体がハラスメントじゃ!みたいな女がいます笑。

おじさんはね、そもそも下品なんですよ、そこがかわいいんじゃないの。今の時流に合わせて女子に気の利いたことを言わないと!と思って空回りしたり、ダジャレが通じなかったり涙ぐましい努力をわかってやれよ。

おじさんのカワイイ努力と、本当のハラスメント男の区別もつかん残念な女が多すぎる。

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

こういう世界もあるのか・・・とビルは思ったはず。

アメリカ南部の低所得者層の多くは、町を出たこともなく外の世界を知らない。

よそ者の自分にこんなに優しくしてくれる人たちがいる。

アメリカかぶれとしては、そんな世界の狭いおじさんたちも映画になくてはならん存在なんだけどね。

「オレたちゃ、この町しか知らない。あんたには分からんだろうがこの町は最高だよ」

そう言いながら幼なじみたちとパブでビールを飲んでるアメリカのおじさんが大好物。

会社もそうだけど、一回外の世界を知ると自分の会社がおかしいことがわかったり、素晴らしい部分に気づいたりするよね。

この映画は「娘の無実を晴らす」という大筋も描きながら、移民問題に苦しむアメリカをフランスに投影して描いているような作品です。

この母子との関係や娘との関係、どちらも大事なのに、運命の歯車はそううまく運ばない。

シングルマザーの娘のマヤがとにかくかわいい。

こじれた実の娘のアリソンとの関係をマヤと仲良くすることでやり直してるようにも見える。

実の娘を助けたいあまり、普通のお父さんが一線を超えていく姿と、惹かれ合う母子との関係も複雑に絡み合い、観終わった後もモヤモヤが残る。

最初はなんで、異国でラブやっとんじゃ!と思ったけれど笑、この母子との関係を丁寧に描いたことで、ラストが活きてくるのかな。

サスペンスとして観ると奥が深いです。

映画『スティルウォーター』のキャスト

@『スティルウォーター』(2021年 米)

ビル・ベイカー・・・・・・・マット・デーモン

アリソン・ベイカー・・・・・アビゲイル・ブレスリン

ヴィルジニー・・・・・・・・カミーユ・コッタン

マヤ・・・・・・・・・・・・リロウ・シアウヴァウド

【2022】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『マークスマン』

2位・・・・・『ハウス・オブ・グッチ』

3位・・・・・『スティルウォーター』

4位・・・・・『ギャング・オブ・アメリカ』

5位・・・・・『クライ・マッチョ』