『ヒンターラント』(ネタバレ感想)フルCGの景色なのにストーリーがいいと味になる

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

最初、ポスターを観た時、青色だったのでSFかーと決めつけて、まったくマークしていない映画だった。

そこへ恐る恐る観に行った友からの朗報があり「KYOKOさん!我々の好みがギッシリ詰まった映画でしたよ!!」

★第一次世界大戦、オーストリア=ハンガリー帝国の崩壊
★戦争に行った者をさげすむ世間
★猟奇的な殺人事件

・・・・行かねば!!

映画『ヒンターラント』は、ロールプレイングゲームみたいなフルCGで景色を作り、出てる人間は実写という、新たな試みの映画。

私は映画にCGを多用しすぎるのは、あまり好きじゃないけど、今回はこの映画で新たな発見ができた。

話が素晴らしいと、景色がフルCGでも味になることもあるんだなあと。

ポスター観た時は『ヒンターランド』と思っていたが、邦題はあえてドイツ語読みに近い『ヒンターラント』にしているらしい。

オーストリア映画ってあまり観たことないけど、ほんと、面白かった!

『ヒンターラント』の評価

私の個人的な思考による評価です笑 星は7段階で評価します

私の評価★★★★★☆☆
観るのにオススメな人◆戦争帰還者への差別に関心がある人
◆第一次世界大戦の歴史に興味がある人
◆猟奇殺人事件の映画が好きな人
◆映画『セブン』のファンの人
暴力性・残虐性★★★★★☆☆
連続殺人の遺体の描写がかなりグロいです。
エロ度★★★★★☆☆
男女のエロはあまり描かれないが男のイチモツは
モザイクなしで出る
感動度★★★☆☆☆☆
フルCGの景色なのにストーリーがいいと、それさえも
味になるという感動が生まれる。
主人公の苦悩からの殺人事件の謎解きのラストが最高。

『ヒンターラント』ストーリー

第一次世界大戦後、ロシアの捕虜収容所から2年ぶりに帰還したペルクと兵の仲間たち。

祖国のオーストリア=ハンガリー帝国は敗戦国となり崩壊し、オーストリア共和国となっていた。

戦争に行かなかった者は共和国の誕生に狂喜乱舞し、戦争などなかったかのように振る舞い、やっとの思いで帰ったのに戦争の補償もない上に家族もいなくなっていた。

そんな中、戦争から一緒に帰った仲間が殺され、その遺体は拷問の跡から何かのメッセージと取れるような殺害方法だった。

帰国後、失意で呆然とするペルクは、参戦する前の職である刑事に復帰し、この異様な殺人事件の捜査に乗り出す。

⇩ここから先はネタバレ感想です。

『ヒンターラント』ネタバレ感想

ポスターを青で描かないでほしい。

・・・・こんないい映画をSFと思って見逃すところだったじゃないか!(自分の思い込みが悪い笑)。

もう、すべてが好みでした。

やっとの思いで祖国に帰還したら、すべてがなくなっていた

第一次世界大戦前は、勢いがあったオーストリア=ハンガリー帝国も敗戦国になり、ハプスブルク家の人々が次々と死んだこともあって崩壊しオーストリア共和国となった。

ロシアの捕虜収容所で2年もの間過ごしたペルクとその仲間が大変な思いで帰国したが、国が崩壊していて英雄視されないどころか蔑まれ、補償もされないなんて、悪夢のような現実に直面する。

刑事から国のために兵になったペルクなんて損でしかないが、その腕を買われてまた職場に復帰出来たことは、帰国してからも食べるものに困る他の兵よりはラッキーな方かもしれない。

もうね、戦争にも行ってないくせに「この人殺しが!」と言って帰ってきた人をいじめるヤツがほんと許せん!

お前は戦争の間、何か素晴らしいことをしたのか?と言いたくなる。

戦争が長期化し国が貧しくなり、娘を養うためにペルクの奥さんは、前から彼女を狙っていたペルクの同僚の警部と寝ていた。

この時代の女子は働き口もそうないから、そうするしかないよね。

でもやっとの思いで収容所から帰って来たのに、妻子は消え、そんな事実を知ってしまったら、そりゃー荒れる荒れる笑。しかも知らん男ならまだいいが、同僚なんて!

男の荒れ方って単純明快で面白い。酒を浴びるほど飲む→警部を殴りに行く笑。

女は浮気した張本人の男じゃなく、相手の女に陰で嫌がらせをする女が多く、もし友達だったとしても元の関係には戻れないが、男は殴ってスカッとしたら、また友人に戻れるのが羨ましい。

主人公のペルクがね、超カッコイイの。警部とはほんとに生活のために寝たんだろうな、と女の私はそう思っちゃう笑。(絶対好きにならないタイプっているからね笑)

世話好きでもあるけど、余計な一言が多い同じアパートのおばちゃん(いるいるこんなヤツ)が、警部と妻の不倫をペルクにバラすけど、いい味出してて楽しかった♪

戦争が巻き起こす、悲しい連続殺人

戦争から帰って来た翌日に、河原で無残な姿の死体が発見される。

首がない死体で、クイがあちこちに打ち込まれていた。

遺体が持ってた帰還兵の支援施設の案内用紙で、昨日一緒に帰ってきた仲間とわかった。

やっと悪夢の収容所から帰ってきたのに翌日に殺されるなんて浮かばれないよね(泣)。

次の殺人も首がなく、手足の指を1本だけ残してあと19本は切断されていた。

あまりにも猟奇的な殺し方に共通点はないかと調べていたら、前回の死体には「19本」のクイが打ち込まれていたことがわかる。

何かのメッセージがある連続殺人とわかった時のワクワク感といったら!!映画『セブン』※を思い出した。

※・・・ブラッド・ピットが一番かっこよかった頃の作品。もう退職間近のサマセット(モーガン・フリーマン)が退職までの7日間、新米刑事のブラピに引き継ぎを行っている最中、猟奇的な殺人事件が起こる。聖書における7つの大罪になぞらえた7つの殺人事件の謎に迫っていく。

『セブン』を観て以来、連続殺人の映画と聞くとすっ飛んで観に行っていたが、どれもあの映画までは話が凝っていなくて残虐さが増しただけのものが多かった。

でも、今回のこの映画は『セブン』ほどはいかなくても、ストーリーがすごくよくて面白かった。

2番目の死体はムチで拷問され、その死体の頭の部分にそのムチが置かれていた。8つの皮ヒモで出来ているムチで(痛そう)、ペルクが「八尾の猫(ムチの名称)か」と言った時、「化け猫」と「NARUTO」※が頭に浮かんだ笑。

※鍋島藩(佐賀藩)に伝えられている怪談で「化け猫騒動」というのがあり、九尾(しっぽが9つに分かれている)の猫が出てくる。マンガ「NARUTO(ナルト)」では、主人公のナルトが体内に「九尾の狐(キツネ)」のチャクラ(魂)を秘めている。

指とクイの19本と殺された2人は収容所帰りの兵士だったことから、ペルクはロシアの捕虜収容所の事件を思い出す。

捕虜収容所でよくやるやり方が、味方同士で組織を作り「裏切り」や「脱走」がないかお互いを見張らせるシステムを作ること。

ペルクのいた収容所でも監視する委員が選ばれ、もし脱走者が出たら連帯責任を取らされるため、仲間を思う気持ちが強い人ほど抜け出せなくなっていた。

そんな中、20人の脱走計画がその中の気の弱い1人から漏らされ、その20人が逃げると捕虜5,000人が殺されるため、委員会は密告する方を選ぶ。

漏らした人も軽い気持ちで相談したつもりが、脱走仲間が惨殺されるのを目の当たりにして自分を呪い気が狂ってしまったらしい。

その生き残った1人が、19人を惨殺させたその委員会の人間に復讐するために、狂ったふりをしてたのか?

でもあんな残虐な復讐が出来る人なら、そもそも脱走をチクるほどビビらないよね。

脱走はそんな大人数でやっちゃいかん。必ず気弱な人が誰かに相談する形で漏らすからね。

信頼できる2~3人でするのがベスト。4人だと意見の相違から逃げてる途中で仲間割れするから。

警察は、早くに事件を解決したくて、その狂ってた兵を射殺する。ペルクだけは、それ以外に犯人がいるとにらみ、次の殺人を食い止めるために委員会の人間だった兵士の家を訪問していく。

ただ次の人間も間に合わなかった。

ネズミに生きたまま足を食わせるとか、怖すぎて最高!(最高か?)

映画『ボーン・コレクター』でもあったけど、そんなことしそうにない小さな動物(ネズミ)とかに集団でやられるのは、ナイフや銃で殺されるより怖すぎて記憶に残る。(『ランボー4』でも豚が人間を食べるのがあって衝撃だった)

「委員会の人間への復讐」と警察が察知したのがわかった犯人は、殺人のスピードを上げていく。

悲しいラストではあるが、観る者には久々に面白い映画を観た満足感

醸造所での氷詰めのバラバラ死体が見つかった後、珍しく殺人予告が届き、ペルクは犯人が指定した教会へ出向く。

今まで殺人予告なんてしてなかったのに、今回でこの連続殺人を辞める気なのかな、と私は予想。

犯人はペルクに窓際に固定された銃を指し、究極の選択をさせる。教会前の広場に呼び出されたペルクの妻子が持っている箱にマスタードガスを仕掛けたという。

妻を撃ってマスタードガスの被害を食い止めるか、教会の広場にいる人間を全員ガスで死なせるか。

そうか、ペルクは委員会の1人だったのか!!

委員会は5,000人の命を選択したため、19人は惨殺された。

ペルクに妻は撃てなかった。たぶんマスタードガスは箱には入っていなかったが、犯人は収容所での出来事を思い出させたかったんだろう。

戦争は時にはそんな仲間を大切に思う気持ちと自分の命をはかりにかけねばならないから残酷だよね。

教会には、相棒の若い刑事セヴェリンも駆けつけたが、ペルクは塔に登ろうとするセヴェリンを殴って気絶させ、教会のはしごを塔の下に捨ててまで来させなかった。

あの収容所の決着を望む犯人のため、同じ戦争を経験した者がとどめを刺してあげるつもりだから彼が邪魔なのかと最初は思った。

でもそこまで突き放しても塔に昇ってきたセヴェリンにここでもしつこく「お前は来るな!!」

ああっもしかして、犯人はセヴェリンの兄!? ペルクはそれが分かってたから教会の塔の上に来させなかったのか。

兄の無事をずっと軍に問い合わせているセヴェリンを見て、「お兄さんは英雄として死んだ」と告げていたからだ。

死に損なった1人が連続殺人をしてるのなら、脱走者の中にいたセヴェリンの兄かもしれないと予測してたんだろうね。

ここでペルクの優しさにじーーんと来る。

兄の優しさと素晴らしさを語るセヴェリンに、仲間を置いて脱走しようとし惨殺されたなどとは言えるはずもなく、自分も大勢の仲間の方を選んだ罪悪感もあるだろうし。

敵を憎む方がラクだよね。

兄ちゃんも最後の殺人を終わらせてここで命を絶つつもりだったんだろうな。

委員会の奴らは憎いけど、彼らの命の選択は自分がその立場だったらそうしたかもしれないと頭ではわかってたはずだから。

弟に犯してきた罪を知られた兄は、弟が自分を撃つように仕向けた。

とっさにペルクをかばって兄を撃ったものの、大好きだった兄を自分が殺してしまったセヴェリン。

兄の殺人の罪は許されないが、収容所で仲間を殺させた人間とどう違うのかと兄の苦しみがわかるだけに悲しみはきっと後からじわじわくるだろうね。

ラスト、ペルクが妻子が暮らす郊外の田舎町に行く時だけ、背景が歪んだCGじゃなくロケで撮ったような普通の景色だった。

どす黒く歪んだCGの背景は、戦争が招いた悲惨な出来事が人々や主人公の心に暗い影を落とし、絶望が支配した彼らの心情を映し出す演出だったのか。

気持ちに踏ん切りをつけ、逃げていた現実に向き合う覚悟が出来た時に、CGじゃなく普通の景色を使ったところがとっても粋だった。

こういう使い方をすれば、CGの背景というのもありだなと新たに発見できた、いい映画だった。

”ヒンターラント”とは、字幕で「背後から」と訳される場面があった。

戦争から帰ってきた帰還兵は、国から見放され人々から蔑まれ、祖国の中なのに味方に背後からやられるような気持ちになるということをタイトルにもつけたかったのかもしれないね。

『ヒンターラント』煩悩だらけの映画トーク

女が邪魔しない映画を見て気分爽快♪

今回主人公のペルクはワイルドなイケメンなので、女が寄ってくるとは予測はついたが、検死官の白いコートの女子がそこまで出しゃばらず、いい登場の仕方でよかった。

妻が同僚と寝てたのを知り、苦楽を共にした仲間が次々と殺され荒れてた時に、気がありそうな検死官の女と寝てしまう。

「私は大丈夫。後腐れないわ」とか女が言うから「そんな女が一番後腐れあるのよ!!」と心配だった笑。

『危険な情事』でも「一晩だけの軽い関係よ」みたいにグレン・クローズが言うからマイケル・ダグラスもノッちゃったのに、ストーカーされるわ家族を殺されようとするわで大変大変!!笑

事件も解決し気分も落ち着いたら、家族のもとに戻ろうとするペルクを追いすがったりしなかったからホッとしたけど、男も都合がいいよねえとか複雑笑。

自分も妻を裏切ったし、これでおあいこだから気持ちが落ち着いて帰れるのか・・笑。

肌を合わせて寂しさや辛さを紛らわすだけの関係は、長続きしないからね。別れて正解♪

付き合ったり結婚する時は最高に自分が元気な時に出会った人としよう。気分が落ちてる時は間違った判断をします、絶対に!笑。

恋人との別れを慰めていて結ばれた場合、相手が落ち込みから立ち直って元気になったら捨てられます(松田聖子と神田正輝や、内田有紀と吉岡秀隆みたいな感じ)。

最近のポリコレ風潮から忖度し歴史をゆがめた作品が多いのに辟易してる中、この映画は、黒人を「ニガ○」と言う人々をちゃんとそのまま描いてるのが素晴らしかった。

この時代の人々はそう言ってるんだから映画の中ではそう描いていいのよ、日本人を映画の中で「ジャップ」と呼んでも私はいちいち騒がないわよ。敵国だもの。

2番目の死体の検死をしてる時、死体の男のお尻の毛(以下、ケツ毛笑)がワサワサとサンドイッチの具みたいにお尻の割れ目に隙間なく生えているのが目に焼き付いて検死の内容が頭に入ってこなかった笑。

すごい、さすが欧米人!!(変な感心の仕方)

映画を観終わった後に、友達に「検死の時の死体のケツ毛すごかったね!」と言おうとして人が密集したカフェにいるのを珍しく思い出し「お尻の毛すごかったね笑」と言ったら、「ケツ毛でしょ、すごかったですよね!」と友達が返したので、大笑い。

死ぬほど笑いながら「カフェだからケツ毛というのをやめたのに笑」

「今さら上品ぶらないでください!!絶対頭にケツ毛と思い浮かんだはずです!!」

もう、泣き笑いした笑。

この映画を観る時はケツ毛にもご注目笑。

『ヒンターラント』キャスト

@『ヒンターラント』(2021年 オーストリア・ルクセンブルク)

ペーター・ペルク・・・・・ムラタン・ムスル

テレーザ・ケルナー・・・・リブ・リサ・フリース

パウル・セヴェリン・・・・マックス・フォン・デル・グローベン

ヴィクトア・レンナー・・・マルク・リンパッハ

【2023年】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『アウシュビッツの生還者』

2位・・・・・『ヒンターラント』

3位・・・・・『母の聖戦』

4位・・・・・『ヴァチカンのエクソシスト』

5位・・・・・『SHE SAID その名を暴け』

6位・・・・・『春に散る』

7位・・・・・『キングダム 運命の炎』

8位・・・・・『ブラックライト』

9位・・・・・『THE FIRST SLAM DUNK』

10位・・・・・『M3GAN ミーガン』

11位・・・・・『対峙』

12位・・・・・『デスパレート・ラン』

13位・・・・・『フラッグ・デイ 父を想う日』

14位・・・・・『ワイルド・ロード』

15位・・・・・『探偵マーロウ』

16位・・・・・『MEG ザ・モンスターズ2』

17位・・・・・『BABYLON』

18位・・・・・『逆転のトライアングル』