『ある人質 生還までの398日』ISの拉致事件の関係者の裏側がわかる!テロリスト映画というよりは家族の映画

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

IS(イスラム国)に拉致され、拷問に耐えながらの人質生活の後、奇跡的にも生還できたデンマーク人の写真家の青年の実話を映画化。

「ISから脱出なんて可能なの!!??」と今後の参考に?(何の参考だよ)いそいそと映画館に出かけたら、自力で脱出したのではなく、身代金を払ったから解放されたということだった。

ついアクション映画脳で出かけてしまったけれど、身代金で解放されたという事実がリアリティを感じさせ、本人だけではなく家族もものすごい目に遭うということがわかってより恐怖を感じた。

家族が身代金を用意できたとしても、「テロリストに資金源を与えた」と非難を受けるのは間違いないし、それで助かってもこれからの生活は一文無しになってとても大変に違いない。

用意できずに殺されてしまったら、本人は覚悟の上で行っていたとしても、残された家族はお金を用意できなかったことへの後悔が一生つきまとうだろう。

この映画は、テロリストに一方的に憎悪を向けさせるというよりは、家族の苦しみを丁寧に描くことで観客にこの事件をより身近に感じさせ、自分の問題として向き合わせるのが素晴らしい。

自分の家族がこういう目に遭ったらこんなにできるだろうか、先進国の中にテロリストと交渉する国があるのを初めて知り、日本人はこういう時どうなるだろうかなどと具体的に色々考えるきっかけになってよかった。

「生還した」と分かっていても、物語の脚本が秀逸で、サスペンス要素が高く、ハラハラドキドキが止まらないと同時に、家族の気持ちも丁寧に描かれ「平凡な日常」への感謝をすごく感じるいい作品でした!!面白かった!

主役を演じた俳優エスペンの、体操選手の筋肉ムキムキからだんだん痩せ細っていく過程を再現した緻密な役作りもすごいです!



ストーリー

2013年にIS(イスラム国)の人質となり、398日も囚われの身となりながら奇跡的に生還したデンマーク人の写真家ダニエル・リューの実話を映画化。

体操の代表選手だったダニエルは、世界大会の前に大怪我をして、二度と体操ができなくなってしまう。

体操を諦めたダニエルは、やる気を失いただ毎日を過ごしていたが、写真を撮ることが好きだったことを思い出し、写真家の道へ進む。

ようやく就職できたところが、紛争地域の日常の写真を撮るような事務所だったため、ソマリアなどに行った後、2013年にはシリアに足を踏み入れる。

非戦闘区域のシリアのアレッポに到着後すぐ、その頃勢力を拡大し始めていたISに拘束された。

彼の拘束の間の様子と、テロリストの要求に応じないデンマーク政府の対応、民間人でありながらダニエルを助けたい一心で莫大な身代金の用意に奔走する家族の想像を絶する苦労を描く。

 

IS(イスラム国)とは


アイエス。「Islamic  States(イスラミック ステイツ)」の略で、正式名は「Islamic States of Iraq and Syria」(アイシス)。

イラクとシリアの国境近くで活動するイスラム教過激派組織。「国家」を作ると宣言し、イスラム教徒を中心とし、世界各国から招いた若者などで構成される義勇軍とともに学校やインフラを整えるが、世界でまだどの国もここを「国家」とは認めていない。

一時期はアルカイダ(アフガニスタン国境で活動するイスラム過激派)とも組んで活動していたが、今は絶縁。

2013年から勢力を拡大し、一時は日本の面積くらいの土地を掌握し当時のシリア政権を脅かしていたが、軍事国家だったシリア政権が敵対していたアメリカ・フランス・イギリスに応援を求めたため、ISは孤立し、その結果、今はほとんど支配域は壊滅状態くらいになくなったとのこと。

オバマ政権の時はISIL(アイシル。イラクとレバント(東部地中海沿岸地域)のイスラム過激派)と呼ばれていたが、トランプ大統領時代にはISIS(アイシス。イラクとシリアのイスラム過激派)と呼ぶように統一された。

ISは、SNSを使い世界中の若者を集めたり、活動を動画で広めるなど、新しいカタチのテロ組織として認知されることになった。

ダニエルが入国した2013年はISがシリア政権の反政府軍と協力しながら勢力を拡大していた頃なので、一番訪問してはいけなかった時期になるだろう。

 

ダニエルの意識の低さに多少ムッとする


体操が出来なくなったからと言って、ほとんど知識も経験もなく紛争地域のカメラマンになるというのがそもそも無謀。

ISに拘束された時、「すぐ解放されると思っていた」と言うダニエル。

そんな訳ないやんかー!!こういう映画を山程見てきている私は怒り心頭笑。

他の人質たちは、ジャーナリストが多く、ダニエルよりは覚悟をしてきている人が多かった。

平和ボケと言われても仕方のない、イラク戦争真っ只中の時に、アルカイダに拘束された日本人のバックパッカー※を思い出した(日本はテロリストの要求に応じない国としているため、救出されることなくそのまま首を切られ殺害された)。

※バッグ1つで世界各国を安宿を中心に旅する人のこと。

外務省のHPを見るとわかるけど、危険地域は真っ赤な色に染められている。しかも時はイラク戦争真っ只中で自衛隊も派遣してた日本は格好の獲物じゃないか。なんでそんな場所に旅行に行くんだよー。

バックパッカーこそ、洋画のテロリスト映画を見ることをオススメします。

わたしなんか、珍しくツアーで中国に行った時でさえ、外務省に登録していったんだから(社会主義国の怖さを映画で知りすぎているため笑)。

友達に笑われたけど、私は本気笑。

※外務省HPには「たびレジ」という、渡航先と旅行期間、名前やメールアドレスなどを登録して渡航先の最新危険情報を政府から受け取ることができるシステムがあります。

さらわれた人がすぐ誰だと分かって国や家族が即動けるようにしていく。まあ、日本は海外に派遣できる特殊部隊もないし、動かないと思うけどね。(ToT)

だからこそ、自分を守る準備をしていくのが重要なんだよね。正しくビビる。

ただ、ダニエルは、「人質交渉人」の連絡先を調べてそれを自宅に残していたのは正解だったと思うけど、そうなった時家族にどうしたらいいのか、伝えていけよ!!(怒)

 

家族の奮闘が泣けてくる


デンマーク政府はテロリストとの交渉をしないと明言しているため、家族は「何も政府の方ではできない」と外務省から告げられます。

家族は困惑し、息子が残した小さなメモに書いてある人質交渉人アートゥアに連絡します。

ISとコンタクトを取った交渉人から告げられた金額は70万ドル(当時日本円で約6,000万円)!!

家を担保にしたり、年金を崩したり貯金を全額はたいても25万ドル(約2,200万円)しか用意できない。交渉人は70万ドル貯まるまで交渉を引き伸ばすよう勧めるが、もうお金のあてがどこにもない家族はその金額で交渉してみてほしいというしかなかった。

その金額で怒り狂ったISは金額を200万ユーロ(2億3000万円)に引き上げてしまった。

家族は法に触れることなく、マスコミに知られることなく、身代金を集めることができるのか。

ダニエルの拷問シーンと交互に映されるが、途方もない身代金を誰にも知られず集める家族も地獄です。

弟と妹はいつも結託していて、父母もその2人に甘く、いつも厳しいことを言ってきかせていたので二人に疎ましがられていた長女が身代金集めに一番がんばります。長女の私はここが泣けたー!!

家族の中の悪役をかってでているのは、人一倍家族思いだから。口やかましいとしか思ってない弟め、一生恩に着ろー!!と別の感情もわきました笑。

しかもシリアに近いトルコの国境まで弟を迎えに行くのも長女。人質交渉人アートゥアに「私は弟とあまり仲が良くないから」と遠慮するんですが、「あなたが一番がんばった、あなたが行った方がいい」と言う。

そこで自分の家族を思い出す。もし家族の誰かが誘拐されたら、絶対私がトルコの国境に迎えに行く役目だよな、きっと・・・。そんな恐ろしげなとこに行きたくないけど・・。

私はこの長女みたいにたぶん頑張ってしまいそうだけど、果たして妹たちは私が人質になったらここまでしてくれるのだろうか・・・。(すぐ自分に置き換える)なんだかすぐ諦めそう・・・(そう思ってしまう自分が悲しい笑)

まあ、運動不足だし、拷問に耐えられないから身代金揃うまでに生きていないかもしれんけど・・(^.^; すぐ諦めたら呪ってやるーーー(テロリストを呪え!)

まあ、テロ映画を見過ぎてるからダニエルみたいに紛争地域には絶対行かないけどね。

 

人質たちに芽生える友情。各国のテロ対策の違いが浮き彫りに


この映画で初めて知ったのは、人質として捕らえられると独房に入れられるのかと思っていたが、人質全員を同じ部屋で過ごさせるということ。

理由は大事な金づるが、希望を失って自殺しないように、最低限人としての希望を持たせるためらしい。

確かにISに捕らえられて、一人でいたら拷問にも耐えれず、自殺してしまうかもしれない。

でも、ここで育む友情もまた、生死の別れには逆に残酷だ。

家族が身代金を払えなかった仲間は殺されていく・・・。へんに親しくなってしまっているから、部屋から仲間が突然連れて行かれてもう二度と会えない事実が精神をより蝕んでいきそう。

友の死の悲しみと、次は自分かもしれない恐怖。

そしてイスラム国にとっては最大の敵であるアメリカ人は、身代金さえも要求されることなく、最初から処刑が決まっているのだ。

なので、その同盟国である日本ももちろん、処刑なんだろうな。

イラクで拘束された日本人バックパッカーは、「自衛隊のイラクからの撤退」を要求されたけど、今は交換条件がないため処刑されるだけだろう。

ダニエルはここで、CIA(アメリカの情報機関)が必死になって探しているアメリカ人ジャーナリストのジェームズと出会う。

こんな人質の期間でも、自分(アメリカ人)は生きて帰れないと分かっていても、チェス盤をダンボールで作ったり、美味しくない一日一食のわずかなご飯を「さあ、ディナーだ」と言ってみんなを楽しませようとするジェームズに胸を打たれます。

自国民の命優先のフランスはテロリストと交渉するというのも驚きだった。

フランス人が帰って行く中、「フランス人はいいよな、自分の国を恨め!」とISの構成員に言われるダニエルやジェームズ。

帰れる可能性がまったくないのにジェームズが仲間に優しくできるのがすごかった。自分だけ帰れないのなら当たり散らしそうなのに。

この映画でも、2004年に拉致され殺害された日本人ジャーナリストの後藤さんと同じように、脅迫や処刑の動画を撮る時は人質はオレンジ色のツナギに着替えさせられていた。

ツナギがアメリカの刑務所の囚人服にすごく似てる。わざわざその時だけ着せるあたり、もしかしたら敵対視しているアメリカに向けてのメッセージなのかもしれないなと思った。



ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク


映画を楽しむために極力情報をあまり仕入れずに行くので、観る前はISからどうやって自力で脱出したのか、興味津々でした。

ところが、蓋を開けてみると家族が多額の身代金を用意できたから解放されたということだった。

アクション映画の見すぎで脱出劇の再現なのかと思ったけど、こちらの方がリアルで、生々しかった。(実話だし)

身代金は重要な資金源なので、ISもお金をもらうだけもらって殺してたら次につながらないのでちゃんと解放するんだなとか、集団生活させて自殺を防止するなど、色々勉強になった。

テロリスト映画というよりも、家族を中心に描くので、ふだんテロリスト映画を見ない人でも見やすいかもしれない(拷問シーンは別)。

日本人が海外に行く時、ツアーで100%添乗員や旅行会社任せにしている人がいるけど、ツアーだっていつ何時、テロに遭ったり、人質になるかは0とは言えない。いくら先進国であってもね。

海外旅行は楽しいけど、「日本」じゃないのだ。

私は自由旅行がほとんどなので、その日の行き先を英語でホテルの部屋に書き置きしていくことが多い。行方不明になったら地元警察がすぐ動けるようにね笑。

日本にいる家族が連絡取れなくなって動くようでは遅い。ホテルの掃除係の人が目に止めていることを願って・・・!!

犯罪映画を見過ぎた私のように楽しい旅行に極端に裏の裏まで考えていかなくてもいいけど笑、少なくともそういう可能性と、情報だけは仕入れて頭のすみに入れておいてほしい。

せめて日本大使館の電話番号や、どのへんにあるか、警察に電話する方法くらいはツアーであっても準備していってほしいと思う。

サスペンスフルで先が読めないのでハラハラさせつつ、家族の奮闘と友情にも重きをおいていて、とってもいい作品だった。

ダニエルが生還し、自分がどんなに周りの人に支えられ、愛に包まれていたかということを身に染みて感謝し、今は自分の体験を世界に伝える活動をしているらしい。

この映画を観た後、「世界一受けたい授業」にダニエルがゲスト出演していた録画を見て、最初は甘い認識でシリアに行った彼だったけど、この役目のために生かされたのかもなあとしみじみ思った。

そんな目に遭ったら、顔出しなんてせずにひっそりと生きたいと思いそうなもんなのに、ダニエルは死んでいった仲間のため、今でも発信しつづけているのがすごい。

「平凡な日常」に感謝です。

 

『ある人質 生還までの398日間』のキャスト

@『ある人質 生還までの398日間』のキャスト(2019年 デンマーク/スウェーデン/ノルウェー)

ダニエル・リュー・・・・・・エスペン・スメド

ジェームズ・フォーリー・・・トビー・ケベル

アートゥア(人質交渉人)・・アナス・W・ベアテルセン

 

【2021】ジャスミンKYOKO 映画私的ランキング

1位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

2位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

3位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

4位・・・・・『キル・チーム』

5位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

6位・・・・・『秘密への招待状』

7位・・・・・『聖なる犯罪者』

8位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

9位・・・・・『カポネ』




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