『最後の決闘裁判』(ネタバレレビュー)傑作!脚本が素晴らしい!中世を使ってわかりあえない男女を描く新鮮な作品

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

ランキングの上位を揺るがす映画がやってきました!

「中世は中世だけど、戦争でもなく、ただの男同士の決闘を映画にして面白いわけ?」

いくら中世のヨーロッパを舞台にした映画が好きだとしてもどうやろうなと思ってた。

しかも、キャストはフランス人には絶対見えない、マット・デーモン、ベン・アフレック、アダム・ドライバーのお三方笑。

でも、これがね、最高に面白かったのだ!

今回好きな俳優が一人もいなかったから、本当にフラットな気持ちで映画を楽しめた笑。

嫉妬もない世界笑。

いつもだったら女子に腹立つことも多いが、今回は純粋に主役女子の味方になれたし、気持ちもおおいにわかりました(いつもそうありなさい!)笑。

何も知らずに行った方が、新鮮で驚きもあるし、物語の構成を十二分に楽しめますよ。

ストーリー

1386年、百年戦争※時代のフランス。

※百年戦争・・・・1339年~1453年まで断続的に続いたイギリスとフランスの戦争。国家同士の戦いというより、当時は領地が入り乱れていて(フランスの中にイギリス領土があったりした)その領主同士で領有権などを争ったもの。

フランス軍の勇猛な騎士カルージュ(マット・デーモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)は、夫の遠征中、夫の親友ル・グリ(アダム・ドライバー)に襲われレイプされてしまう。

決死の覚悟で夫に言い、ル・グリを訴えるが、目撃者もおらず肝心の本人は「無実」を主張。

裁判は長引き、運命は生死を賭けた夫カルージュとル・グリの「決闘裁判」で罪を決めることとなる。

フランス史上に残る最後の、決闘裁判の行方は・・。

今回は、物語の構成や、話の進め方によって、普通のお話がものすごく面白くなっています。

これから観る人は以下ネタバレレビューになるので読まずに観るのがオススメです。
(以下ネタバレレビュー)

ただの決闘をここまで面白くしたのは、この2人の脚本力

無名だったベン・アフレック(左)とマット・デーモンは同郷の友達同士で、彼らが初めて共同執筆した『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』がアカデミー賞脚本賞を受賞したのは24年前。

今回、その二人がまさに24年ぶりに脚本を執筆して、またこの面白さだからすごい。

コロナだったから、お互い時間を合わせやすかったのかもしれないよね。

実際の出来事を映画として面白くする才能とセンスを持ってるんだろうな。

顔は二人とも好きじゃないけど(余計なお世話)、そこは本当に素晴らしい。

二人の出てる映画はときめきはないけど笑、面白いんだよね。

だから、文句を言いつつ観に行ってしまう笑。

こんな脚本が書けるなら、自分が演じたい時代や役柄を好きに持ってこれるから羨ましいよね(二人とも監督も出来る)。

超アメリカ人顔だから、まずもってリドリー・スコット※が中世の映画に呼ぶ訳ないし、脚本引っさげて受けざるを得ないように仕向けなきゃね。

※リドリー・スコット・・・中世ものをスペクタクルに撮るならこの人!という監督。

この映画は3部構成になっていて、「夫の親友に暴行された」事件の前後を夫のカルージュ(マット・デーモン)、加害者のル・グリ(アダム・ドライバー)、被害者であり妻のマルグリット(ジョディ・カマー)のそれぞれの視点で観た事実を連続して流すのだ。

ここがすごく新鮮だった!

それぞれの性格や感じ方で、同じ出来事なのに捉え方が全然違うのだ(事件に限らず日常の物事も)。

なので、永久にわかりあえない?男女間にも共通することがいっぱいあって、すごく面白かった!

まず、マット・デーモンに騙される

⇧夫のカルージュ(マット・デーモン)。

まずは、夫のカルージュにマット・デーモンというキャスティングに、観ている観客はだまされてしまう。

マット・デーモンは愛妻家で、映画の役もいつも「いい人」が多い。

だから、自然に映画のCMの段階から、愛する妻のため命を賭けてこの決闘裁判に臨むんだろうと思いこまされていた。

そこが違うのよ。

第一章はカルージュ目線なので、素晴らしい騎士で素晴らしい夫として描かれる笑。

でも時々、「ん?」と思う発言があり、マルグリット(妻)目線で描かれた第三章で、その疑問は腑に落ちる。

自分の名声のことしか考えていない男だったのだ。

自分の城(領地)を護るためにがんばって戦争にも行って武功を挙げ、俸禄を持ち帰るのはありがたいけど、妻とセックスしては「まだ世継ぎはできないのか」の容赦ない言葉。(お前のせいじゃねーのか)

こういう男を表すのによく用いられる、毎回単調なセックスシーン笑。自分本位のセックスで相手の気持ちなんておかまいなし笑。最中の妻は真顔笑。

領主の娘だった妻の持参金が少ないことに不満を持ち、義理の父親に「あの土地が欲しい」と文句を言いに行くカルージュ。(日本の結納金の反対みたいな感じね)

その辺から、「あれ?いつものマット・デーモンと違うぞ、これは」とワクワクしてきた。

ただ、開始早々、後ろ髪だけ長いマットの辰吉※みたいなヘアスタイルは受け付けんかったわー笑。

※辰吉丈一郎・・・元プロボクサー。やんちゃなキャラが人気を博した。

俳優を好きじゃないからこそ、平等に楽しめる映画笑。 好きじゃないからこそ、男への評価が厳しくなる私笑。

ベンアフが、そのまんまのクズ男を演じてくれて嬉しい

⇧ベン・アフレックが演じたその地域の君主で、フランス王のいとこのアランソン伯ピエール公。

意外なキャラのマット・デーモンに対し、親友のベン・アフレック(以下ベンアフ)は、彼の私生活さながらのダメダメ君主を演じてくれてすごくよかった!!

いい!!でかした!君はそれでいいよ!(ひどい)

有名になってからというもの浮名を流し続け、アル中になり、妻と離婚したかと思うと30くらい年の離れたアナ・デ・アルマスとつきあったり、太りすぎてアゴはだるだるになるわで、マットとはまったく違うハリウッド人生を歩んできたベンアフ。

毎回、いい男の役をしようとするから、私が開催している映画の集まりの女子たちから反発を受けていたが(余計なお世話)、今回は夜な夜な酒を飲み、裸の女達をはべらせて毎晩乱交パーティをする王様。

クズ男が似合う! 

しかも初の金髪!!(一回やってみたかったのかもね笑)

今回はアゴがシャープになって、ちゃんと体を絞ってたからその金髪もなかなかイケてたのでビックリ。

⇧寄りを戻したベンアフとジェニファー・ロペス。

超ゾッコンだった(死語?)元カノのジェニファー・ロペスとまた付き合い始めたからダイエットしたのかしら!

いずれにしても、脚本執筆も監督もプロデューサーも出来るから、何の役も選び放題なのはほんと羨ましいわい。

アダム・ドライバーは何やらせてもうまい

⇧決闘する直前のル・グリ(左アダム・ドライバー)とカルージュ(右マット・デーモン)。

第二章は、ル・グリ(アダム・ドライバー)目線で描かれる。

以前はウマヅラにしか見えなかったが(失礼な)、出てる映画が毎回おもしろいので、今ではその長い顔もあまり気にならなくなってきた笑。

勇猛なカルージュ(マット・デーモン)とは打って変わって、こちらは頭の良さで戦略を考え、欲張りな王様に税の大切さを教え、王政の裏方としてのし上がっていく。

親友とは言っても、タイプの違いと処遇から、王のために命を賭けて戦うカルージュには「おべっか使いのお飾りの近衛兵」にしか思えず、ル・グリから見ると「文才もなく戦争にしか能がない男」に見えてしまう。

アウトドア男とインドア男のわかり会えない壁である。

頭のいいル・グリに近寄ってくるのは、位とお金目当ての教養がない女ばかり。

そこへ読書をたしなみ、教養が見え隠れする金髪美女が、まさかカルージュの妻だなんて、認めたくはないだろう。

読書好きのル・グリはパーティの際、カルージュの目を盗んで、本の内容の話をマルグリットにしてみる。

自分が今まで出会った女でそんな知的な返答をもらったことがなかったル・グリの心に恋が芽生えてしまう。

とにかくカルージュから奪いたい!

しかし、方法がいかんだろうよ、方法が。

マルグリットの相手が女が喜ぶ言葉がまったく言えないカルージュだと思えば思うほど、「自分に分がある」と勝手に思い込み、目が合っただけで「自分に気がある」と思ってしまう笑。

お前たち、自己中もたいがいにせんか!

マルグリット目線の第三章

⇧決闘裁判を見守るマルグリット(ジョディ・カマー)。

あくまでもマルグリット目線だから、これが真実なのかはわかりません(厳しい)。

勇ましいカルージュと出会って恋に落ちたと思ったけれど、自分の父に持参金の文句を言う姿に「え?」と思い、「持参金が少ないのにはもう目をつぶるが子が産める健康な体なんだろうな」と確認する姿を観てしまう。

現代ならここで「ふざけるな!子産みマシンじゃねーんだよ」と婚約解消も出来るだろうが、そこは1300年代だからね、女の選択肢はない。

結婚したらしたで、毎日単調なセックスで、妻の気持ちなど少しも考えない。

そして世継ぎを産めないのは全面的に女のせいにする、夫と義理の母親。

フランスもフランス、田舎の城でそんな二人に囲まれてたら、華やかなパリに行った時に、つい優しい言葉をかけてくれるル・グリに目がいっちゃうのも納得よ。

それをル・グリが「気がある」と思い込むんだけどね。

疲れた時にイケメン観て何が悪いのよーーーー。(私はアダム・ドライバーをイケメンとは思ったことないけど笑)

一緒に市場を周ってた友人に「あの人、美男子ね」とつい漏らしたことで、のちに強姦の事実を訴えた裁判時、友達から裏切られ「イケメンって言ってたから合意の元なんじゃないの」なんて証言されてしまう。

夫からは「恥をかかされた」と罵倒される始末。

しかもその強姦の後、今まで全然できなかった子どもが出来て、妊婦になってしまったことで、彼女はまた不利になる。

裁判官は全員男でカトリック。

「快楽を感じないと妊娠しないから、強姦ではなく夫を裏切ったのではないか」

いったい、何の基準だよーーー。 男の世界ではこんな驚くような常識がまかり通っていたのである。

それがほんとなら、カルージュが下手ってことやんか(言うな笑)。

この時代、変な迷信も多いだろうし、男の都合で慣習や法律も作られてただろうから、女子はよく絶滅せんで生きてきたね。(快楽と子産みのために絶滅はさせないだろうが)

裕福は暮らしは出来るけど、位の高い男の方が余計に女子をモノ扱いしただろうね。

コロナ禍なのに ちゃんとお城でロケしてたのが嬉しかった

いくらリドリー・スコット(中世ものが得意な監督)でも、コロナ禍の中ではたいした映画作れないだろうと思ってた。

でもね、ちゃんと美しいヨーロッパのお城でロケしてた!!

冒頭から感動して嬉しくてテンション上がりまくった。

やっぱり、中世の映画は、セットじゃね・・・。味が出ないのよ。本物のお城はいいわあ。

石造りだから冬は寒かっただろうなあ。ホッカイロもヒートテックもないからね。

タイムトラベルしてホッカイロを届けてあげたら私は神として崇められ、居心地が良すぎて現代に戻れないかもね笑(アホな妄想)。

時代が1300年代だから、パリでは建設中のノートルダム寺院が背景に映ったりして、欧米かぶれはウキウキします。凝ってる~。

ラストがまた最高 中世を女子目線で描くのは新しい

自分の方が王に尽くしていると思っているので、そういう事件がある前からカルージュとル・グリの仲は王の処遇に比例して微妙にずれていきます。

世襲制だから、こんなどうしようもない君主が出てきたりするのよねー。

日本の政治家もそうだけど、「世襲制」はやめればいいのに。

気に入らん人を個人で落としても比例代表で復活させるから良くないのよ。ただの人になる恐怖を味わせないと、腐った根性は直らん。

それにしても決闘裁判は、現役軍人のカルージュに圧倒的に分があるわよね。

決闘の直前に、もし夫が負けたら訴えを起こした妻まで処刑されることを聞かされて憤るマルグリット。

「それなら この子のために黙っていたわ」(妻は妊娠中。カルージュの子かル・グリの子か不明)

あんたねー、そこは自分の命が惜しいのね。

あんな時代だから命をかけて訴えたかと思ってたよーー。夫がブラピとかだったら発狂してるとこだわよ!笑

決闘の末、ル・グリは負けて殺され、身ぐるみ剥がされ全裸で吊るされます。(ほんと昔は残酷)

吊るされる時は顔は隠していたから、たぶんアダム・ドライバーじゃないんだろう。でも、もろ出しで吊るされるためだけのエキストラに雇われるのってイヤじゃないか?(しょうもないこと考えるな)。

大歓声に応えるカルージュを観ながら、自分の命は助かったものの、こいつ(夫)が生き残っても嬉しくないなという顔でマルグリットが複雑な表情を浮かべて終わる最後が面白い。

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

⇧マット・デーモン夫妻。

ハリウッド俳優の売れっ子なのに、マイアミのカフェで出会ったバツイチ子持ちの女子に惚れ、結婚。それから浮名を流すこともなく、妻一筋のマット・デーモン。

そんなシンデレラストーリーがあるのなら、私もアメリカのカフェで働こうかと思ったわよ(そういうやましい目的の人には現れません笑)

今回、その「いい人」イメージを見事に逆手に取って観客を騙してくれたマット・デーモンに拍手。

カルージュが生き残っても嬉しくないマルグリットの表情で終わるラストが一番面白かった。

まるで日本の熟年離婚寸前の夫婦みたいでウケました。

稼いできてくれるのはありがたいと思ってる。でも私を召使いやモノみたいに扱わないで。

そういう表情。全編通してそこが語られる感じかな。

カルージュはまさに熟年離婚に至るタイプの、仕事は頑張るが、奥さんを全く褒めないワンマンな典型的日本の男と似てる。

だからと言って、優しい言葉をかけてくれて知的な会話ができても、いつも王様と一緒に乱交パーティするル・グリもどうか笑。

二者択一ならどちらを選びますか?笑 わはははは

最後にカルージュは、十字軍の遠征※に出征して3年後に命を落とし、マルグリットはその後30年も裕福に暮らしたという皮肉の説明が流れる・・。

※十字軍の遠征・・・・・西ヨーロッパのカトリック諸国が、聖地エルサレムをイスラムの国から奪還すべく各国から兵を集め軍を派遣した。

退職金を持ち逃げされないように妻は褒めましょう。

@『最後の決闘裁判』(2021年 米)

ジャン・ド・カルージュ・・・・・・マット・デーモン

ジャック・ル・グリ・・・・・・・・アダム・ドライバー

マルグリット・ド・カルージュ・・・ジョディ・カマー

アランソン伯ピエール2世・・・・・・ベン・アフレック

1位・・・・・『ラスト・フル・メジャー』  

2位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

3位・・・・・『最後の決闘裁判』

4位・・・・・『スイング・ステート』

5位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

6位・・・・・『プロミシング・ヤング・ウーマン』

7位・・・・・『グリーンランド 地球最後の2日間』

8位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

9位・・・・・『クーリエ 最高機密の運び屋』

10位・・・・・『ビバリウム』

11位・・・・・『RUN』

12位・・・・・『インヘリタンス』

13位・・・・・『ワイルド・スピード JETBREAK』

14位・・・・・『アオラレ』

15位・・・・・『キル・チーム』

16位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

17位・・・・・『秘密への招待状』

18位・・・・・『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』

19位・・・・・『モンタナの目撃者』

20位・・・・・『OLD』

21位・・・・・『アウシュビッツ・レポート』

22位・・・・・『孤狼の血 LEBEL2』

23位・・・・・『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

24位・・・・・『アウトポスト』

25位・・・・・『聖なる犯罪者』

26位・・・・・『ジェントルメン』

27位・・・・・『ファイナル・プラン』

28位・・・・・『ドント・ブリーズ2』

29位・・・・・『ゴジラVSコング』

30位・・・・・『ノマドランド』

31位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

32位・・・・・『AVA/エヴァ』

33位・・・・・『テスラ エジソンが恐れた天才』

34位・・・・・『Mr.ノーバディ』

35位・・・・・『白頭山大噴火』

36位・・・・・『カポネ』