『エルヴィス』(ネタバレレビュー)終始ゴージャスで見応えあり。サスペンスに無理やり持っていったのはちょっと残念

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

『エルヴィス』観てきました。

エンドロールのロゴや装飾まで、最後までキラキラしてて「とにかくゴージャス」でした♪

私の好きなアメリカがこれでもか!と出てきて、楽しい時間を過ごせた。

欲を言えば、この映画のCMの「誰がエルヴィスを殺したか」とサスペンスに持っていくようなキャッチコピーは必要なかったと思う。

エルヴィスが亡くなったのは、薬物などの中毒と心臓発作。殺されたわけではないからね。

サスペンスと誤解していくと、肩透かしを食うので、エルヴィスの成功と転落の一部始終、彼が世界に残した功績のヒストリーと思っていく方が楽しめる。

エルヴィス役のオースティン・バトラーは最初CM観た時点では、「この人でエルヴィス出来るかな」と不安だったが、文句なし!歌もうまいし、美しかった♪

エルヴィスの、知らなかった部分も知れて大満足だったが、ちょっと残念な点は、マネージャー視点からのみ描かれていたので、エルヴィスの繊細で孤独な内面をもうちょっと掘り下げてたらもっとよかったのかな。

ストーリー

アメリカの南部の黒人街で育ったエルヴィスは、1950年代後半ブルースやジャズなどのブラックミュージックに影響を受けたロックンロールを仲間とライブハウスで披露し始める。

その才能とセクシャルな魅力にスターの芽を見出した見世物小屋出身のトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)は後ろ盾のない彼をバックアップし、ツアーを組んで南部を周りはじめた。

彼のルックスとセクシーなダンス、歌に魅了された女性ファンを中心に徐々に人気が出始める。

黒人の歌を白人が歌うことを嫌った保守派の白人層から猛反発を受けるも彼はひるまない。

それを突破し、全米、世界を揺るがすロックスターとなっていくエルヴィス。

売れっ子になればなるほど彼の孤独は増し、パーカー大佐の欲望もエスカレートしていった・・・。

⇩ ここから下はネタバレレビューです。 映画を楽しむためには読まない方がいいかも。エルヴィスの歴史を知ってる人は特に問題ないかもしれません。

オースティン・バトラーすごい

⇧若い頃のロカビリーファッション※のエルヴィスが最高!オースティンが歌まで完コピ!

※50年代に流行った、ボーリングシャツにスラックス、白に黒のウイングチップの靴など。トラッド風にも見えるが、より不良っぽいスタイル。

最初CM観た時は、あまりにも華奢な若者のオースティン・バトラーがエルヴィスをやると知って、「うーん大丈夫かなあ」

エルヴィスって若い頃は細いけど、けっこう骨太なんだけどね。

そう思ってたのに、最初のこの「ハウンド・ドッグ」を歌うシーンで、もう映画の中に引きずり込まれちゃった♪

この曲、大好きー!!しかもオースティン本人が歌ってるのに、しっかりエルヴィスだよおおお。

カントリーソングしかやらないステージで、いきなりロックンロールを見せられたら、そりゃあ衝撃走るよね!

エルヴィスの腰の動きに、女子は熱狂!!(ちょいエロは最強)

これを観ていた、トム・パーカー大佐(自分が好んで大佐と呼ばせてた。演じるのはトム・ハンクス)が、禁断のものが若者にウケるとわかっていたので、この腰の動きがセクシーな若者のプロデュースをかってでることになる。

黒人の文化が体に刷り込まれていたエルヴィス

⇧腰を振ったらいけないとパーカー大佐(右)に念を押されるエルヴィス。

父親が事業の失敗(不渡りなど)で刑務所にしばらく入ってたこともあり、生活が困窮した母親は、幼いエルヴィスを連れて家賃が安い黒人街に引っ越した。

11歳の誕生日にライフルをねだったエルヴィスに、貧しいながらも母親はギターを買ってあげた。(子供にライフルを買ってあげることはその頃の南部じゃ珍しくないこと)

ここから「キング・オブ・ロック」と呼ばれる男の音楽人生が始まったのだ。

周りは黒人だらけ、友達も全員黒人の中で育ったエルヴィス。

次第にジャズやブルースなどの影響を受け、それに地元のカントリーソングを融合したようなスタイルになっていく。

有名になるにつれ、南部はちょうど黒人と白人のエリアを区別するような、ひどい人種差別の法律※が施行されていた時代だったので、白人が黒人の音楽を歌ってることに保守層の大人が猛反発。

※南部は黒人の人口が多かったため、平等に扱って選挙権などを与えると白人の議員が選挙に負ける可能性があり、保守層の白人たちは徹底的に差別を貫いた(現在はそのエリアを分ける法律はなくなったが、いまだに選挙の差別はあっている)

白人が黒人に迎合したような音楽を広められたら困ると思った大人たちは、「エルヴィスの音楽は若者の非行のはじまり」と言い出し、エルヴィスはステージをことごとく断られ始める。

困ったパーカー大佐はエルヴィスに、腰の動きを止めるように言い、地味な服でバラードを歌うように約束させてステージに上げようとする。

一度は応じたものの、ロックンロールが好きなエルヴィスは、その禁を生のステージで破る。

かっこいい!!!!

そこで歌われるのが「トラブル」!超反抗的な歌なのよーーーー♥

悩んだエルヴィスが向かうビール・ストリート

1995年のビール・ストリート

自分の愛する音楽を時代のせいで否定され、封じ込められたエルヴィスは落ち込んで、昔入り浸っていた黒人たちの繁華街ビール・ストリート(Beal Street)へ向かう。

もう、ワクワクした!!私が行ったカフェの隣やん!!(カフェはトム・クルーズの映画のロケ地)

エルヴィスの友達としてB.B.キング※も出て来て嬉しい(⇧向かい側にあるのがB.Bキングが開いたブルースのお店)。

※エルヴィスが「キング・オブ・ロック」、B.B.キングは「キング・オブ・ブルース」と呼ばれたブルース界の巨匠。

⇧このカフェ(トム・クルーズの映画のロケ地)の後ろのビルの、2階♪ 悩んだエルヴィスがこの窓際でB.Bキングに相談してた。(矢印)

「腰を振ってロックを歌っても君は逮捕されないよ、白人だから」

黒人が不当に逮捕されることが多かったから、B.B.キングから出るこのセリフも考えたら悲しいよね。

ここでエネルギーをもらったエルヴィスは、自分を偽るのをやめ「禁」を破るのだ!(喜)

エルヴィスもフレディも奥さんの選択は間違ってなかった

⇧エルヴィスを生涯支える、プリシラ(オリヴィア・デヨング)。

禁を破ったエルヴィスは、警察に逮捕され、大騒ぎになる。

営業ができなくなった大佐(トム・ハンクス)は、世間の目をよそに向けるため、保釈されたエルヴィスを兵役に行かせることにした。

⇧兵役から帰ってきたばかりのエルヴィス。(メンフィスで買ったポストカード)

2年のドイツへの従軍(その頃は冷戦時代、西ドイツの壁を米軍が守ってた)を終え、帰ってきた時にはドイツの駐留大使の娘プリシラと恋仲になっていた。

エルヴィスの数々のツアー先での浮気にも目をつぶり、娘リサ・マリーの父親としてのエルヴィスを求め続けたプリシラもあまりにものエルヴィスの不在に疲れ果て、家を出て行ってしまう。

ミュージシャンの奥さんもメジャーリーガーの奥さんも、子供がいないうちは付いてまわって楽しいだろうけど、子供が出来たとたん家にいることになるから、ツアーが始まったら孤独な時間が多いだろうね。

エルヴィスの邸宅グレースランドの入り口にある階段

⇧エルヴィスが、出ていくプリシラを引き止めるシーンで出てくる階段。

映画で使用されたのはたぶん、グレイスランド(エルヴィスの生涯暮らした邸宅)のセットだろうけど、後ろのジュークボックス風の棚もちゃんと再現されてて、ほんとそっくりに作られていた。(そのへん、じっくり観察した私)

プリシラは、クイーンのフレディの妻※と同様、別れても彼を精神面で支え続ける。

※イギリスのロックミュージシャン。結婚した後フレディがゲイに目覚めたため、離婚。

結婚生活は続けられなかったけれど、友人として彼と話したり、溺愛してた娘のリサ・マリーをよくグレイスランドによこしたり。

「私の人生返せ!」的な女じゃなかったからよかったね笑。(別れることになると、よかった時期も全部なかったことにする女が多いからね笑)

大人の対応が出来る女子を選んだのは、エルヴィスもフレディも正解でした♪

ラスベガスにひそむ罠

⇧悪徳マネージャー、トム・パーカー大佐を演じるトム・ハンクス。

えーーー太り過ぎじゃない!?といくら役作りでも、もうなかなかの高齢になってきたトム・ハンクスを心配したけれど、これは特殊メイクだったみたいでホッとした。

60年代後半になると、イギリスではビートルズが大活躍し世界ツアーなどをやっていたのに、エルヴィスは世界に出ることもなく、ラスベガスのショーで一生を終わってしまっていたイメージがあった。

太って人気がなくなったからなのか?と勝手に思ってたけれど、ラスベガスのショーは連日超満員だったらしい。

この映画で知ったのは、パーカー大佐がカジノで莫大な借金を抱えており、エルヴィスに稼がせてそれをチャラにしたいがためにホテルのオーナーにこのショーの提案をしたらしかった。

エルヴィスもこの大佐が不穏なことは、友人からの忠告でさんざん聞いてきたのに、世間知らずで孤独だった彼はつい事あるごとに丸め込まれてしまっていたのだ。

海外ツアーに行けずに夢なかばで倒れたエルヴィス

40代になってもラスベガスに繋がれたまま、馬車馬のように働かなければならなかったのは、大佐が手っ取り早く返済の金を作るために、エルヴィスに何も言わず楽曲の権利を勝手にすべて売り払っていたため、印税がまったく入らなくなっていったからだった。

楽曲を売り払ったことは映画では描かれないが、ひどすぎる。

彼くらいの大スターであれば40代になったら印税で一生、あそこまで働かなくても食べていけたはずである。(彼は作曲はあまりしてないけど、歌唱印税という権利はあった)

しかも彼が夢だった海外ツアーに行けなかったのは、大佐が不法入国者だという事実を秘密にしていて、いったんアメリカを出たら二度と戻れない可能性があったため、何かと理由をつけては先延ばしにさせていたからだった。

この件に対して言ったのかは不明だが、ビートルズが「俺達はグループだったから、丸め込まれるということはなくてよかった」と言ってたらしい。

こういう大スターは、手続きのすべてを確認する時間もないし、裏事情をすべて知るわけでもないから、人を見抜く目を養っておかないとこんなひどい目に遭うよね。

エルヴィスの会社を元々経営のセンスがない父親を経営者にしたのも大きなミスだった。これも大佐の思い通りにできるための伏線だったんだろうね。

スターが騙されて破産する話が後を絶たないのも、若いうちから売れてしまい人を見抜けないのと、忙しすぎて気がついたら金に群がってくる輩しか周りにいない状態だった・・・っていうのが多いんだろうねえ。

クイーンのフレディ・マーキュリー然り。(彼はバンドメンバーがいたからまだよかった)

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

⇧本物のエルヴィス・プレスリー。

田舎の不良にありがちな、メンフィスマフィアという取り巻きが常に周りにいたエルヴィス。

映画でも彼らがエルヴィスがいてもいなくてもグレイスランドにたむろし、エルヴィスに養ってもらっていた。

⇧グレースランド(エルヴィスのメンフィスにある邸宅)

彼らがエルヴィスのために何か動いてくれるなら養ってもいいけど、田舎の不良の兄貴分にありがちな世話を焼きすぎてつけこまれる感じ。こういう奴らは一文無しになったとたん、去っていくのにね。

ジェイク・ギレンホールが、ボクサーを演じた『サウスポー』でも、ファイトマネーが入るたびに、取り巻きの奴らに高級腕時計などを買い与えていたから、負けた瞬間に破産・・・。

映画でもプリシラが怒って「なんでいつも取り巻きを養うの!?」みたいなことを言ったと思う。

映画の中でエルヴィスに親身になって助言するバックバンドかなんかの1人がジョン・ボンジョビ(80年代に一斉を風靡したヘビメタのボーカル)に似てたのでキュンとした。(ジョンはもっと年取ってるはずだから違うはずなんだけど)

調べたら、『ハクソー・リッジ』※でイケメンのいじめっこだったオーストラリアの俳優のルーク・ブレイシーだった♥この人、かっこいいからもっと伸びてほしい!

※沖縄戦で丸腰で戦場を駆け抜けた衛生兵をアンドリュー・ガーフィールドが演じた。

『エルヴィス』、エンドロールまでキラッキラで制作陣の気合が観てとれた。

42歳で死ぬ前々日に「アンチェイド・メロディ」をピアノの弾き語りで歌ったシーンで、途中でオースティンから自然に本人の顔に変わった映像技術には驚いた!

40代以上のエルヴィスの歌は、エルヴィス本人の声を使ったらしい。

エルヴィスの早すぎる死の後、大佐のやったことが明るみになり、家族は訴訟を起こし、肖像権だけはなんとか守ったらしい。

エルヴィスは生涯アメリカから出なかったのに、これだけ日本に浸透してるんだから、世界ツアーやってたら、もっとすごかっただろうね。

大佐目線だけじゃなく、エルヴィスの苦悩や感情ももっと掘り下げて歌をもっとたくさん入れてたらもっと傑作になったと思う。

でも60年代のアメリカがめいいっぱい味わえたので最高だった。アメリカの近代史が好きなので、ロバート・ケネディやキング牧師の暗殺などの時代の出来事も盛り込まれてて楽しかった~。

「監獄ロック」や「ハートブレイク・ホテル」、「ハウンド・ドッグ」を繰り返し聴きながらこれを書きました♪

映画『エルヴィス』のキャスト

@『エルヴィス』(2022年 米)

エルヴィス・プレスリー・・・・・オースティン・バトラー

トム・パーカー大佐・・・・・・・トム・ハンクス

プリシラ・プレスリー・・・・・・オリヴィア・デヨング

ジェリー・シリング・・・・・・・ルーク・ブレイシー

B.B.キング・・・・・・・・・・・ケルヴィン・ハリソン

ジミー・ロジャース・スノウ・・・コディ・スミット=マクフィ

ヴァーノン・プレスリー・・・・・リチャード・ロクスバーグ

【2022】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『トップガン マーヴェリック』

2位・・・・・『マークスマン』

3位・・・・・『潜水艦クルスクの生存者たち』

4位・・・・・『ハウス・オブ・グッチ』

5位・・・・・『流浪の月』

6位・・・・・『エルヴィス』

7位・・・・・『バーニング・ダウン 爆発都市』

8位・・・・・『スティルウォーター』

9位・・・・・『ギャング・オブ・アメリカ』

10位・・・・・『クライ・マッチョ』

11位・・・・・『ザ・ロストシティ』

12位・・・・・『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』