『アウシュビッツの生還者』(ネタバレ感想)歴史の伝承映画としてもラブストーリーとしても秀逸!ベン・フォスター最高

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

ついにやってのけました!!「私たちのベン・フォスターが!!」

アクション映画や戦争映画で、彼が出てたら百発百中裏切り者の役。

毎回短気でちっちゃい男を惜しげもなく演じていて、このジャンルの映画を一緒に観てる友達と密かに応援していたのだ。

そんな彼がこんなすごい映画を!しかも主役で!!

ベン・フォスターは大物の悪役は回ってこず小物の悪役が多いけれど、彼が出ると確実に主人公を裏切ってくれるので楽しかった。

悪役がいいと映画が輝く。

悪役のうまい俳優たちは何作品か出ると、世間の冷たい意見に耐えられなくなるのか、自分の子供にいい格好を見せたいのか、急に悪役をしなくなりヒーロー映画なんかに出だしたりするのでほんと、がっかりします笑。

私はどんな卑劣な役ををしても石なんか投げないし笑、応援していくから、ずっと悪役をやり続けてほしい。

そんな応援してたベン・フォスターが28キロも痩せてこの役に取り組んでたので、ポスター観た時は、気づかなかった!

しかもまさかのナチスの拷問する側じゃなく、アウシュビッツ収容所から生還した主役なんて!!

ごめんよ、ベン! 一発で気づかなくて!

すごかった!ベンの肉体改造もストーリーも!見応え抜群です。

今年はいい映画が少ない中、とんでもない作品が現れた!

『アウシュビッツの生還者』の評価

私の個人的な思考による評価です笑 星は7段階で評価します

私の評価★★★★★★☆
ベン・フォスターの肉体改造がすごい。
歴史映画としても、人間ドラマとしてもラブストーリーとしても秀逸
観るのにオススメな人◆戦争映画が好きな人
◆ナチス系映画をよく観る人
◆ベン・フォスターのファン
◆悲しいラブストーリーが好きな人
暴力性・残虐性★★★★★☆☆
アウシュビッツ収容所なので、銃殺シーンや拷問シーンがある
エロ度★★★★☆☆☆
捨てられる死体はすべて全裸なので、アソコはもろ出しです。
ボクシングの褒章で女をあてがわれるシーンあり。
感動度★★★★☆☆☆
ベン・フォスターの肉体改造に感激。
生き別れの恋人をいつまでも探す姿にもじんと来る

『アウシュビッツの生還者』ストーリー

ナチスの強制収容所「アウシュビッツ」から生還した男、ハリー・ハフトの生涯を描いた実話。

明日まで生きられるのかもわからない強制収容所での毎日。

ハリーはその腕っぷしの強さから若い将校に気に入られ、看守の暇つぶしの賭けボクシングをさせられる。

もちろん負けたらその場で銃殺、しかも相手は仲間のユダヤ人。

生きるか、友を殺すかの想像を絶する日々を耐えられたのは生き別れた恋人の存在だった。

アメリカに渡った彼はボクサーをしながら、恋人を探すため口を閉ざしてきた過去をメディアに向けて打ち明けるが・・。

ここから先はネタバレレビューです。

『アウシュビッツの生還者』ネタバレ感想

ユダヤ人虐殺を描いた歴史の伝承映画としても素晴らしく、生き延びた理由を隠さなければならなかった葛藤のドラマと、生き別れた恋人との悲恋のラブストーリーとしても最高の映画。

もう、ベンにジーンとしてしまった。

脇役で輝いてきた彼が、主役を張ってここまで役作りをしてのぞんだ作品が観れたなんて、感無量です。

ベン・フォスターはもともと太ってもいなかったのに、それから28キロも痩せて撮影に臨んだ。

アウシュビッツでのボクシングの試合で、初めて囚人服を脱いだ時のガイコツのような姿にもうビックリ!(ポスターの姿がそう)

映画の制作にも携わっていたらしく、気の狂うような空腹を味わいながら映画の裏方までやってたかと思うと、彼の意気込みと精神力に圧倒される。

生き延びた理由を隠さなければならなかった

友や恋人がいたからこそ、あんな凄まじい苦難を乗り越えられたとは思うが、それがまた逆に弱みにもなるよね。

毎週開催される看守たちの暇つぶしの賭けボクシングに、ある将校から腕っぷしの強さを買われ、選ばれたハリー(ベン・フォスター)。

負けた仲間はその場で銃殺。

自分が生きるためには友や仲間を殺さないといけないなんて。

そんな究極の選択を毎週、彼らの暇つぶしの娯楽に使われるむごさ。

こういう収容所って必ず連帯責任取らせるから、誰とも親しくならないでいた方がこんな時は少しはラクかもしれないけれど、友がいないとあんなひどい場所で生きる力って出ないよね。

一番仲良かった友が相手だった時はほんと観ていてこっちもきつかった。

「奴らに殺されるよりお前に殺されたい」と頼まれても、「彼がそうのぞんだから」って割り切れるものでもなく、倒れ込む相手を死ぬまで殴り続けるハリーの辛さを思ったら胸が詰まった。

ボクシングの選手に選ばれたことで、他の者より数日命を永らえても、友や仲間を殺した葛藤と苦しみによって気が狂ってしまいそう。

それでもハリーは、恋人レアと生きて再び会うためだけに、この苦しみを耐え続け、仲間を殴り続ける。

恋人レアの無事を知るために、ハリーは重い口を開く

収容所から生還して、アメリカに渡り終戦後、「アウシュビッツの生還者」というキャッチフレーズでプロボクサーになったのは、生き別れた恋人がいつか気づいてくれると信じていたから。

しかし、なかなか彼女は現れない。

彼女は生きていると信じているハリーは、兄の反対を押し切り、「仲間のユダヤ人をボクシングで勝って、殺したから生還できた」とメディアに告白。

大々的に新聞に載り、世間に注目されて大きな試合も組めたが、彼女は現れなかったどころか、ユダヤ人コミュニティからはさげすみの目で見られてしまう。

お兄ちゃんが止めたのも無理はない。

あの極限状態を知らぬ者はどうしても、彼の立場で物事を考えられず、「自分だけ助かろうとした」と安易に考えてしまうだろう。

頭でわかってはいても、実際自分の肉親が帰ってこなかったら、なぜこんな卑劣な人は生き延びて自分の家族は死んでしまったのだろうとその理不尽さに怒りを向けてしまう人もいるかもしれないよね。

ただ、生きたかっただけなのに。

「誰も悪くない」「戦争が悪い」というのは簡単だけど、家族を失うくらいの深い悲しみには、目の前にいる人に怒りの矛先を向ける方がラクなのかもしれない。

集団心理の恐ろしさは、罪悪感を麻痺させること

人間の集団心理というのは、ほんと怖い。

トランプ大統領に扇動され、アメリカの国会議事堂を一般市民が襲撃した時は、とうとうここまで来たかと思った。

個人で動く場合はリスクがあるから、やるのに躊躇する人は多いが、多くの人がやりはじめると気が大きくなっていつもより大胆になり犯罪にまで手を染める者が出てくる。

渋谷のハロウィンで、車を引っくり返すまでエキサイトするヤツは、その境界線があやふやになりやすい人なんだろう。

最初はただのドイツ人だったはずなのに、政府から「ユダヤ人=悪者」と指定されると、軍人のみならず一般人までそれに染まってエスカレートしていく。

最後まで理性を保っていた人まで、悪に加担することになるのが、独裁政権の怖いとこだよね。

イエス・キリストを殺したのがユダヤ人という、紀元前後の話を目の前で見たわけではないのに、ユダヤ人はフランス・ドイツを始めキリスト教の国では迫害を受けて来た。

そんな不確かな情報が元なのに、その人種というだけでいじめ抜き殺すまで出来るのが人間の怖さだよね。(聖書に書いてあるから信者は不確かとは思わないのかな)

彼らは迫害を受ける度に住む土地を移動せざるをえないから、どこでも暮らして行けるように暮らしは質素だが、教育にはお金をかけた。

それもあり、今の世界の大富豪はユダヤ人が大半を占めているらしいからね。それも妬みの元になってる可能性もあるのかな。

彼らみたいに苦しんだ恋人や夫婦は数しれず

ハリーの過去、アウシュビッツでの生活はモノクロで描かれ、アメリカに渡ってからはカラーで映し出されるので、時間軸がよく変わるがそこはわかりやすかった。

彼女の生存を確かめるべく、ユダヤ人コミュティの役場に通うハリー(⇧画像右)に協力しながらいつしか惹かれていくミリアム(⇧画像左)。

生き別れとか死に別れの恋人や妻がいた人と付き合ったり結婚するのはリスクがある。

今、目の前にいない人は絶対美化されてるし、老後に死に別れたならともかく、若い頃の恋ならあきらめきれない思いが強いからだ、

いつか所在がわかった時に絶対心は揺らぐに決まっているし、2人の間に子供がいたとしてもそれが彼をつなぎとめる材料になるかどうかも保証はない。

彼の壮絶な過去を受け入れたつもりでも、たまに現れるトラウマの症状に結婚したばかりの時は寄り添えるが、子育てなどで自分に余裕がない時は思いやることさえできないどころか、反対に八つ当たりしてしまう可能性もある。

それを機に彼が去ることだってありえる。

アウシュビッツを体験した者同士じゃないと、わかりあえないことはきっと多いからね。

ミリアムもやはり苦しんだ。

この映画はラブストーリーとしても一級品でした。

ようやく生き別れの恋人の所在がわかり、とうとう会いに行ってしまうハリー。

いや、なんで家族旅行の途中に会いに行くんだよ!とそこはミリアムの気持ちに感情移入してムッ。

ボクサーを引退した後、八百屋さんみたいな小さな商店を営んでたから出張なんかなくて、2、3日急にいなくなるのも難しかったからそうしたんだろうけど、家族の思い出が台無しになるじゃないか。

レアはやはり美人だった・・・よかった、すでに結婚してて・・・(私の心の声)。

お互いの無事を喜ぶと同時に、もう晴れて結ばれることはないという絶望感もあり、二人は泣く。

私もここで泣いてしまった。

ハリーのボクシングの大試合の日、彼女は新聞で彼を知ったが、その日は彼女の結婚式だったのだ。

彼の無事を知ったところでもう後戻りは出来ない、運命の皮肉。

窓から見ている彼女の夫に知られないように、海岸で2人が静かに泣く姿がもうたまらなかった。

繰り返したくない過去が、今はすぐ近くに

ハリーとレアのように、引き裂かれてしまった恋人や家族が山のようにいただろう、殺された人が600万人という想像もつかない数なのだから。

日本人だって大量虐殺の歴史があるから、そこはドイツだけを責められない。

同じ過ちを犯したくないのに、今もあの頃のように世界は緊張状態にある。

ロシアのウクライナ侵攻が1年以上も続き、各国は支援疲れをしはじめ、それによる物価高や食糧難でウクライナのことにかまう余裕がなくなってきている。

自国が潤ってないと他国のことまで気が回らなくなるから、みんながウクライナを見放すのをロシアは待っているのかもしれない。

これを一例でも作ってしまうと、中国などの独裁国が後に続く危険があるよね。

「集団心理からくる罪悪感の欠如」の怖さを知り、「政治と世界情勢、周りの人々への無関心」がこういう事態を招く一因ということをこんな映画を観て、時々ハッとしていくことが大事なんじゃないだろうか。

『アウシュビッツの生還者』煩悩だらけの映画トーク

ベン・フォスターを見守ってきた我々としては、この映画は今年一番の驚きであり、嬉しいったらなかった。

ガイコツのようなポスターの彼にももちろん驚いたが、映画冒頭で海岸を歩くダルダルの中年太りのおっさんがまさかベン・フォスターだったなんて。

収容所時代を撮るために28キロ落としただけでもすごいのに、ヘビー級のボクサーの体になったかと思えば、最後は中年太りのおっさんになるべくダルダルになり、3種類の肉体改造をやってのけた。

映画が終わった時にきれいに元に戻す俳優はよくいるが、同じ映画の中で3種類はすごい。

アウシュビッツで、暇つぶしのボクシングにハリーを見出し、食べ物や女を与える若い将校が、ゴリゴリのヒトラー心酔者の拷問を楽しむタイプじゃないというのが新しかった。

ただ毎日のヒマな時間を使ってどう過ごすかばかりを考えて、「ユダヤ人と口を聞くのもイヤだ!」みたいな雰囲気がなくハリーと普通に話してるのは珍しかった。

ナチスを描いた作品では、憲兵並にユダヤ人に嫌悪感むき出しの人が描かれることが多かったが、こういうゆるい人も中にはいたんだろうなと思わせてリアルだった。

プロボクサー時代のトレーナーが、明るいラテンのノリのジョン・レグイザモ⇧で嬉しかった。

ハリーが恋人を探すためにやむなくアウシュビッツの過去を話した新聞記者がピーター・サースガードで、ちゃんと何年経っても約束を忘れず、レアの住所を調べて届けてくれたとこなんか、もう最高でした。

あの年代のスーツと帽子も超似合ってかっこよかった。

家族の手前、客のフリしてやってきてそっと住所を手渡し、黙って去っていく・・・。カッコいい!(かなりのひいき目)。

⇧大試合の前にハリーに特別にトレーニングを付けてくれたのが、久しぶりに登場のダニー・デビート⇧で嬉しかった。

日本は昔から神様がたくさんいて、神社や仏閣も混在しており、「唯一の神」って感じじゃないから、宗教間の争いはあまりなかったけれど、ずっと「単一民族」で生きてきた脆さはあると思う。

世界的に人口は増加の一途をたどっているのに、日本は少子高齢化社会で、労働力が圧倒的に不足しているので、移民に頼らざるを得なくなっている。

日本人がのぞまなくとも、近い未来、人口の半分は移民になる可能性もあるのだ。

そんな時にきっと生まれる、生活習慣の違いや考え方の違いから来る「嫌悪感」とどう向き合っていくか。

観光客には優しく出来ても街の大半が外国人になったら?

「人類皆兄弟」というきれいごとではいかなくなっていくから、今のうちから色んな映画や本、外国人の知り合いなどを作って色んな習慣や考えを知り、自分がいかに島国で守られてきたかをもう一度見直して、無理やり慣れていくしかないと思う。

日本人よ、そろそろ「みんなはどうしてるか」じゃなく「自分はどうしたいか」で考えていかないと、「一律横並びが安心な世界」はきっとなくなるからね、準備していこう。

『アウシュビッツの生還者』キャスト

@『アウシュビッツの生還者』(2022年 米・カナダ・ハンガリー)

ハリー・ハフト・・・・・・ベン・フォスター

ミリアム・・・・・・・・・ヴィッキー・クリープス

エモリー・アンダーソン・・ピーター・サースガード

ぺぺ・ミラー・・・・・・・ジョン・レグイザモ

チャーリー・ゴールドマン・ダニー・デビート

【2023年】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『アウシュビッツの生還者』

2位・・・・・『母の聖戦』

3位・・・・・『ヴァチカンのエクソシスト』

4位・・・・・『SHE SAID その名を暴け』

5位・・・・・『春に散る』

6位・・・・・『キングダム 運命の炎』

7位・・・・・『ブラックライト』

8位・・・・・『THE FIRST SLAM DUNK』

9位・・・・・『M3GAN ミーガン』

10位・・・・・『対峙』

11位・・・・・『デスパレート・ラン』

12位・・・・・『フラッグ・デイ 父を想う日』

13位・・・・・『ワイルド・ロード』

14位・・・・・『探偵マーロウ』

15位・・・・・『MEG ザ・モンスターズ2』

16位・・・・・『BABYLON』

17位・・・・・『逆転のトライアングル』