『インヘリタンス』(ネタバレレビュー)こんな恐ろしい負の遺産を受け継いだらどうする!?

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

いっぱい観たい映画があるので、この映画まで観に行ったら大変だ!と思っていたが観に行ってよかった。

いつもコミカルな役でキュートなサイモン・ペッグが激ヤセして監禁された男の役に取り組んだこの作品。

「監禁」と「サイモン・ペッグ」というだけで内容もほとんど知らずに行ったけど、面白かったです・・・!!

監禁に至った経緯などは、映画ではよくでてくるようなエピソードだが、その見せ方がサスペンスとして秀逸でした!

リリー・コリンズの家族とサイモン・ペッグくらいしか出てこないのに面白いです。



ストーリー

ニューヨークの政財界に大きな影響力を持つ銀行家のアーチャー・モンローが急死し、その家族に彼の遺産が引き継がれた。

妻と政治家の長男、地方検事で長女のローレン(リリー・コリンズ)にぞれぞれ資産は分配されたが、弁護士からローレンだけに父の動画と謎めいた鍵が託された。

「真実は掘り起こすな」という父の遺言だったが、彼女は父の秘密を探って行くこととなる。

以下ネタバレレビューです。伏線を回収していく映画なので多くを知らず観に行った方が楽しめます。

「真実を掘り起こすな」って無理な話でしょうよ、お父さん


父アーチャーが30年来信頼している弁護士から、ローレンに秘密裏に渡されたものがあった。

託された動画を見ると、父親の自撮りで「真実を掘り起こすな」と言っていたが、これって動画の必要ある?笑

手紙やメモで良くないか?笑

『ミッション・インポッシブル』じゃあるまいし、「この動画は自動で消滅します」みたいな仕掛けがあるわけじゃないんだから笑。

「真実を掘り起こすな」という言葉と謎めいた重厚な鍵。

地方検事だったら、真実を知りたくなるに決まってるじゃない!

ローレンは、葬儀が終わって親族が帰った後、その動画を見るなり庭の奥へ飛び出していった。

父親の死、間もない彼女に衝撃の事実が目に入る。

広い豪邸の森の奥深くの地面に隠された地下室には、生きた一人の男が鎖につながれていたのだった。

しかも30年も。

汚職の書類や脱税のお金くらいだったらまだカワイかったよ、お父さんよ。



サイモン・ペッグ頑張ってた

サイモン・ペッグだから、てっきりイギリスが舞台だと思ってたら、ニューヨークだった(彼はイギリスのコメディアンで俳優)。

いつもコミカルな役が多いのに、今回は体重を12kg落としてこの役に挑んだらしい。

頑張ってたけど、30年間暗闇の地下牢につながれてた割にはちょっとまともだったから、拍子抜けしたのよね。もっと狂ってるかと思った。

『告発』で光も射さない独房に閉じ込められたケヴィン・ベーコンの方がうまかったな。

父親のアーチャーは、彼の監視も兼ねて地下牢に行き、表に出せない悩みや出来事を表に出ることのない(はずの)彼に話していたのだ。

アーチャーが憎くても、暗闇の地下牢で誰とも話さないことに耐えられないモーガン(サイモン・ペッグ)は、彼の話を聞き役となり彼と話していたのだ。

そういう経緯があって狂ってはいなかったんだと思うことにした(こういう映画ばかり観てるからツッコミどころを考えてしまうのよ)。

アーチャー自身、あまりにも長い間モーガンを閉じ込めてしまっていたため、最後あたりは罪の意識さえもすっかりなくなってしまっていたに違いない。(怖いね)

 

リリー・コリンズが母親である必要はなし


⇧ローレン役のリリー・コリンズ。

この辺のかわいい女優さんに興味がないからか、リリー・ジェームズとリリー・コリンズの区別がついてなかった笑。

ディズニー好きの友達に聞いたら「コリンズは『白雪姫』で、ジェームズは『シンデレラ』です!」と一蹴された笑。

「えっ、じゃ『チャーチル』は?『ベイビー・ドライバー』は?」

「両方ともジェームズです!!」

すみません笑。

この映画のローレン役のリリー・コリンズは、80年代洋楽界を席巻したフィル・コリンズの娘らしい!!

最近「ミュージシャンの親の七光り」の子供らの出演多いな!(言い方が嫌味)。

この前の『ジェントルメン』にはスティングの娘、『テスラ』にはU2のボノの娘、『ラスト・フル・メジャー』にはローリング・ストーンズのミック・ジャガーの息子。

でもね、もし私が大根役者でも親がミュージシャンでハリウッドに行けるツテがあるなら絶対行ってやるわ!(人のこと言えるか!。ブラピやスタローンに会いたいだけなので次元がもっと低い)

リリー・コリンズは地方検事で、一人娘がいる母親の役なんだけど、あんまり母親って感じに見えないのよねー。

私たちが20代の頃に観てた欧米の女優さんたちと違って、あきらかにベビーフェイス。ハリウッドも日本と一緒でベビーフェイス化してるんだろうか。

ただこのフレッシュ感が、検事としてなりたてで「まだ正義を忘れていない」という風にも見えるのはいいかもしれないね。

検事も下手にこなれてくると、「正義」より「立場」を重んじる人もいますから笑。

この物語にはローレンの夫と娘はいらなかったかな。



ミスリードを誘いつつ、明かされる衝撃の真実と伏線の回収


⇧政治家の長男ウイリアムと長女で検事のローレン。

父親は「真実を掘り起こすな」とは表向きは言っても、彼女の検事としての正義感を頼って自分の秘密を託したかったからなんだと思っていたのよ。

この映画がうまいのは、彼女と父親が本当は仲が良くなかったことを最初に見せないことで観客にミスリード(勘違い)をさせたまま、謎を解いていくところ。

30年間も自由を奪われ、日の光も観ることが出来なかったモーガンは、「逃してくれたら黙ってこのまま消える」とローレンに懇願する。

ホントかな?恨みそうだけど・・・。

どんなにお金を積まれても時間は戻ってこないからね。しかも数年じゃないのよ、30年よ!!

30年前アーチャーは、ビジネスパートナーだったモーガンと途中車の中でもみ合いになり、飛び出した人を轢き殺してしまう。

自分が轢き殺したのを観たモーガンを、将来有望で前途あるアーチャーはとりあえず庭の地下室に隠した。

数日で出すはずが、自分の未来と天秤にかけ、ずるずる引き伸ばしているうちに、モーガンを地上に出す機会を永遠に失ってしまう。

最初はモーガンの言うことを信じることができなかったローレンだが、車で轢いた人物の遺体が彼の言った場所にあったり、父に愛人がいて腹違いの弟がいる事実も確認し、モーガンに対して罪悪感を感じるようになっていった。

罪悪感を感じつつもこの事実を公表したら、自分や家族の未来はなくなってしまう。

そう考え、彼の身辺調査をしつつ、大金を持たせて中南米に飛行機で行かせたのだった。

なんで調査が終わってから逃さないのよ、それでも検事?念を入れなさいよー!

この出来事から早く逃れたい気満々だったんだろうね。

そうよね、こんな恐ろしい負の遺産、自分が監禁したことにならないうちに離れたい・・・。

予想した通りに彼は中南米には行かず、ローレンの母親キャサリンを捕まえ、自分のつながれていた地下室に連れて行った。母親を探してローレンも地下室に入る。

そこで語られたもっと残酷な事実とは。

30年前、父とモーガンが車の中でもみあいになったのは、母キャサリンをモーガンがレイプしたからだった。

しかも、そのレイプされた時に出来た子供がローレンだったということ!

「お前はオレの娘だ」と言いかけた途中でキャサリンから射殺されモーガンは絶命。

母娘は、そのまま地下室に火を放ち、二度と戻らなかった・・・・。

 

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

もうね、後味が悪いのなんのって。

父が急死したのも、実はモーガンが自分の薬を油断してたアーチャーに大量に注射したからだった。

ずっと言えなかったことをお父さんは正義感強い検事の娘に託したのかと思ってたのに。

事実は父からのモーガンとローレンに対しての復讐だったのだ。

ここからは映像では語られないが、映画を観た私の予想。

モーガンにレイプされた彼女とそのまま結婚したアーチャーは、当初はモーガンの子供であっても「かわいがることができる」と思って、堕ろさず育てることにしたのかもしれない。(若い時は勢いでそういうことができる)

それか、レイプされた事実を親や世間に知られるのを恐れたため、そのまま自分の子として育てることにしたのか。

いずれにしろ、他人の子(しかもレイプされた上に出来た子)をかわいがることが出来なかったから、ローレンに厳しく当たり、仲が悪かったんだろね。

子連れ再婚だって難しいのに、レイプしたやつの子供をかわいがるのは相当心の広い男でも難しいよ。

この真実により、映画冒頭の遺産の分配に納得がいった。

ローレンに託された資産は、弟の10分の1以下だったのだ。

嫡出子(実子)と他人の子の違い。それでも30年近く一緒に暮らしたなら少しは情がないのかと思ったけど、そこはお父さんはちゃんと残酷なまでにハッキリと線を引いてたのね。

ローレンは、父と仲が悪かったからその相続金額に納得していたかもしれないのに、こんなこといっぱい知ってしまって心が壊れてしまいそう。

「INHERITANCE(インヘリタンス)」という単語を調べてみると「遺産」とか「継承」という意味で、遺産をもらったローレンは、義理の父から地下牢につながれた本当の父を「継承」したんだね・・・二人とも死んじゃったけど・・。

「実の娘のお前が実の親の落とし前つけろ」ってことなんだろうね、なんてやつだ。

最後、地下室に火を放つんだけど、「そんなに燃やしたら消防車が来るんじゃないのー?」

そんなこともバレないくらいの広い豪邸ってことなのかしら。

地下室に30年もつながれた男は、母娘の心の中にしまわれて二度と事実が掘り返されることがない。

ある程度の立場や、お金持ちになってしまったら、ちょっとしたことでも未来を脅かす材料になり、失うものが多い人ほど追い詰められたらどんなことでもやるんだなと怖くなりました・・・・。

ローレンは、こんな秘密を持ったまま、検事の仕事を続けていけるんだろうか。

結局義理の父と同じように秘密と罪を抱えたまま生きていくことになった彼女。

義理の父の罪と実の父の罪と、監禁、死亡の事実を世間に伝えない自分の罪。

⇧このお母さん、観たことある!!と思ったけどとうとう映画中は思い出せず、調べたら『グラディエーター』の皇帝(ホアキン・フェニックス)の姉の王女役だった。久しぶり!

今回は気づいたのに、この前の『Mr.ノーバディ』の奥様役の時は気づいていない笑。

さて、ランキングは、『アオラレ』より深かったのでこの順位になりました。

 

映画『インヘリタンス』のキャスト

@『インヘリタンス』(2020年 米)

ローレン・モンロー・・・・・リリー・コリンズ

モーガン・ワーナー・・・・・サイモン・ペッグ

キャサリン・モンロー・・・・コニー・ニールセン(ローレンの母)

ウィリアム・モンロー・・・・チェイス・クロフォード(ローレンの弟)

アーチャー・モンロー・・・・パトリック・ウォーバートン

 

【2021】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『ラスト・フル・メジャー』

2位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

3位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

4位・・・・・『グリーンランド 地球最後の2日間』

5位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

6位・・・・・『ビバリウム』

7位・・・・・『インヘリタンス』

8位・・・・・『アオラレ』

9位・・・・・『キル・チーム』

10位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

11位・・・・・『秘密への招待状』

12位・・・・・『アウトポスト』

13位・・・・・『聖なる犯罪者』

14位・・・・・『ジェントルメン』

15位・・・・・『ノマドランド』

16位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

17位・・・・・『AVA/エヴァ』

18位・・・・・『テスラ エジソンが恐れた天才』

19位・・・・・『Mr.ノーバディ』

20位・・・・・『カポネ』