『ノマドランド』たんたんと描かれるアメリカの高齢者の現実と多様な暮らし方

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

アカデミー賞に6部門ノミネートの話題の映画『ノマドランド』を観ました。

主演のフランシス・マクドーマンドってなんて雪国が似合うのかしらね。初めて彼女を認識したのが、雪だらけのサウスダコタ州で実際に起きた連続殺人を追う保安官の役だったからかな(映画『ファーゴ』)。

この人はアメリカの樹木希林的な人で、アンチエイジングをあまりせずに、老いをあえて受け入れそれを出す感じの女優さん。

都会で暮らす華やかな役を観たことがないからか、過酷な環境での役がハマってると思っちゃうんだよね、『スリー・ビルボード』でのアメリカ南部の差別警官とのやり合いもすごかったし。

広い砂漠での野ションから始まるから「ひえー、すごい女優魂」と感じながらの鑑賞スタートでした笑。そうよね、広すぎて何時間もトイレないよね(^.^;。

アメリカの美しい大自然と、人々との温かい触れ合いと交互に、過酷な季節労働をしながら狭いバンやキャンピングカーでの生活を続ける高齢者たちの放浪生活(現代版ノマド)をたんたんと描いていく。

仕方なくその生活にならざるを得なかった人も、触れ合いを通じてそのノマド生活をを楽しもうと努力したり。

自由の国アメリカで、不自由な車上生活をあえて選ぶ高齢者たちの生き方を具体的に初めて知って勉強になりました。

こういう生き方もあるけど、安易に踏み込める場所でもないこともキッチリ描いています。

たった一杯の温かいコーヒーを誰かと飲むことはこんなに幸せなことなんだと、再認識させてくれます。

コロナ禍で不要な人間関係を断てた人もいたけれど、孤独を感じた人も多かったはず。

モノや競争に溢れている世界だと気づかないのに、それを全部削ぎ落としてみたらじんわり感じる「人や食べ物へのありがたみ」。

やっぱり、「不要なものを削ぎ落とす」って感覚が研ぎ澄まされるから大事なんだろうね。

物を減らさないと!

知られざるアメリカの現状を知れたのと、田舎のダイナーやコインランドリーが楽しめてよかったです。



ストーリー

ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション『ノマド 漂流する高齢労働者たち』を元に、アカデミー賞女優フランシス・マクドーマンドを主演で映画化。

ファーン(フランシス・マクドーマンド)が住んでいた町はネバダ州の石膏採掘所の利益で潤っていたが、リーマンショックで会社は倒産し、その社員だけで成り立っていた町自体も閉鎖に追い込まれた。

夫も失ったファーンは、やむなく車上生活になる。

家財道具を一台のバンに載せ、過酷な季節労働をしながら仕事のある場所を求めてアメリカの大地を渡り歩く。

アメリカにはこのようなキャンピングカーやバンで暮らしながら行く先々で労働をする現代版「ノマド(遊牧民)」をする高齢者たちが多くいる。

あちこちで出会うノマドたちとの交流によって、ファーンも次第に心を開き、この生活に生き甲斐を感じていく。

主演のフランシスと、デヴィッド以外はすべて一般人というキャスティングも驚き。

 

映画の舞台:アメリカ合衆国ネバダ州

ネバダ州はラスベガスがあるけど、冬はとんでもなく、寒い。

 

アメリカの高齢者によるノマドな生き方

日本の最近のイメージでは、「ノマド」ってパソコン1台で仕事をしながら世界を渡り歩く人のことで、なんだかかっこいい感じだけど、これは違う。

アメリカのキャンピングカーでノマドをしている人々は大半が高齢者らしい。

リーマンショック※で、住宅ローンが払えなくなりやむなく車上生活を強いられた人々も多くいた。

※リーマンショック・・・・住宅ローンの会社が本来ならお金を借りれないような人の審査をずさんに扱いスルーしてたくさんの住宅を建てさせたため、不渡りが膨大な量になり、住宅ローンの債権を買って利益を得ていた多くの投資会社(リーマン・ブラザーズなど)も破綻した。

中には自由を求めて、「生きる」とは何なのかとすべてを捨てて旅に出た者もいるが、そんな「自分探し」の人は実際は少ない。

そんな彼らは季節労働で収入を得て、バンやキャンピングカーで放浪の旅を続ける。

国立公園などのレンジャー(管理係)ならまだいいが、ビーツ(砂糖の原料の穀物)の収穫などは本当に過酷な労働だ。

しかも見ているだけで寒い。

高齢者なのに、なんで南に行かないのかって不思議に思うけど、高齢者ほど住み慣れた土地から離れたがらないからかもね。

暖かい土地に行くと、それこそ車上狙いなどの犯罪も増える。厳しい自然に身を置いてこそ守られることもあるんだろう。

クリスマスシーズンになると、Amazonの倉庫に季節労働を求めていく彼ら。

アメリカにはオートキャンプ場のでっかいのがあちこちにあり、その駐車場代も働いている期間はAmazon持ちなので年末を確実に過ごせるのはありがたいことなのかもしれない。

一方、Amazonの方はリーマンショックが起きた時、季節労働者が増えるとすぐに予測して、そういう彼らの雇用体制をソッコー整えたらしいから、伸びる企業はピンチをすべて飲みこんでいくんだね。ちょっと怖。

 

日本では感じることの出来ないアメリカでのノマドのリスク


日本に普通に暮らしていると、そのありがたさを感じにくいけれど、アメリカ映画を見たりアメリカに行くとやっぱり感じる「日本って楽ちんなんだな、ありがたいな」。

そんな私だから、アメリカでノマドとして暮らすことのリスクがわかりすぎてハラハラしてしまう。

ファーンのようにやむなくならざるを得なかった人は別にして、過酷な自然環境、充分な睡眠が取れない車中、栄養が不十分な食事。高齢者の体にはダイレクトに響くよね。

観ながらがぜん気になってくるのが、アメリカは医療保険がないこと。

「どうするのよー、入院代払えるのーーー??」

日本は国民皆保険で、手術費用などの「高額医療費」は後で国から払い戻しがある仕組みがあるが、アメリカはないのだ。(オバマさんが頑張って導入しようとしたけどね、金持ちが貧乏人の保険料を今更自分たちまで払いたくないと反対)

お金持ちは民間の保険会社などの保険に入っているが、低所得者層はそもそも保険に入ってない場合が多い。

アメリカの妊婦さんが産んだらすぐ退院するのは、一日の入院費が莫大だからだ。出産に100万円くらいかかるらしい。

日本って産んだら1週間くらい普通に入院できるし、後で国から30万くらい戻ってくるからありがたいよね。できればあの産婦人科のぬくぬくな生活を続けたいくらいよ笑。

 

デビッドと過ごす時が一番微笑ましい

ファーンは放浪しているうちに、デヴィッド(デヴィッド・ストラザーン⇧右)と出会う。

夫を亡くして「一人で生きていくんだ!」と気を張って暮らしはじめた彼女は、デヴィッドの優しさにあえて境界線を引いて接している感じが見て取れる。

デヴィッドが荷物を持ってあげたり、何かと手伝ったりしてくれようとするけど、彼女は頑なに自分でやろうとする。

最愛の夫を亡くした時に、「一度得てしまった後の失う怖さ」を知っているからなのかもね。

そんな頑ななファーンもノマドの人たちとの交流で、「助け合い」を学んでいく。甘えすぎないけど、「助け」は求めてもいいと自分に許可を出す。

精神的な自立は必要だけど、何1つ補償もなく「明日が来る」保証もない同士だからこそ「小さな優しさ」を大事にできる。

私だったら、デヴィッドにすぐ甘えちゃうよー、カッコいいし(そこ?)。一緒に旅しましょうってすぐ言う笑(気概がない女)。

デヴィッド役のデヴィッド・ストラザーンってカッコいいのよねーーー。何ていうの、優雅なの。キャンプ生活してても、なんか品があるのよ。

トム・クルーズの『ザ・ファーム 法律事務所』で、トムのお兄さんしてた時もかっこよかったし、『ボーン・アルティメイタム』で、CIAの悪い上官役も渋くて悪役でもカッコよかった♥。

デヴィッドといる時、ファーンも心が穏やかになって、なんか楽しそうなのよね。「穏やかな優しさ」って安心するよね。(パートナーのK氏を思い浮かべて、ちょっとため息笑)


ファーンがジーンズじゃなく、意外にかわいいラフなワンピースを着たりしてるのも目について色々感じた。

洗濯が頻繁にできないリアルさと、ジーンズ履いてるよりラクなのもあるのか、それとも動きやすさよりもノマドを楽しんでいるからなのかとかね(役者のフランシス自体は強い女ばかりを演じてるからワンピース姿が目立つのよね)。

アメリカかぶれは時々出てくるアメリカのコインランドリーの風景に釘付けになってました。

日本にあるような「スニーカー、羽毛布団洗えます」などの高性能さがみじんも感じられない、超うるさくて、洗剤が強すぎて色物が全部剥げてしまいそうなあの感じ、最高(最高なのか?笑)。




「さよならがない暮らし」に幸せを見出す

エンドロールで、出演者の役名が全員ないのに気づいて驚いた。「え?みんな本名で出演してたの?もしかして本物のノマドの人?」

後から調べたら、やはりファーンとデヴィッド以外はみんな本物のノマドの人が自分の役で出てたらしい。

でもみんな自然で、東出くんみたいな棒読みの人はいなかったわよ?笑(東出ファンすみません)。

こんな過酷な生活を長く続けている人の多くは、旅先のどこかでまた知り合いに会ったりするのが楽しく、別れる時の挨拶が「また会おう」で、「さよなら」がないのがいいからだと劇中でノマドの人が言っていた。

倒産や、がんばって買った家の差し押さえ、近所の人たちや家族との別れ、多くの別れをイヤになるほど味わってきた高齢者だからこそ、そこに喜びを見出しているのかもしれないよね。

過酷な生活をしているのにノマドの人たちの顔が優しいのに惹きつけられました。

「ホームレスじゃないの、ハウスレスなのよ」と言ったファーンの言葉そのものの表情なんだろうな。家賃やローン、しがらみからも解放された人たちの行き着く表情なのか。

家(ハウス)はないけど、ホームは心の中にいつもあり、自分の捉え方次第で幸せに生きることができるんだということを言いたかったのかもしれないね。

 

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

アメリカでキャンピングカーで暮らす人がいるというのは知っていたが、高齢者が多いというのは、この映画で初めて知った。

若い時にこういうAmazon倉庫などを渡り歩いて生活するのは案外経験にもなって楽しいかもしれないけど、高齢者になって過酷な仕事をしながら窮屈な車に住むっていうのはどうだろう。

私もパソコン一台で全国あちこち暮らすのが夢だけど、車上暮らしは出来ないと思う。

あのネバダやサウスダコタの寒そうなことと言ったら!!

運転は好きだけど、仮に九州でやったとしても、わたしは温かい布団が恋しいし蚊に刺されるのもイヤなのですぐに脱落するだろうな笑。

以前、会社の先輩が脱サラして、起業しキャンピングカーで車上生活をだんなさんと始めたのにはすごく驚いた。

携帯もない頃だったから連絡取りたい時は、実家のお母さんに伝言か、先輩がよく車を停めている河川敷に行くしかなかったな笑。

私も結構色々やるけど、あの先輩には敵わんと心底思った笑。

「人との交流」に憧れて田舎暮らしを始めたいと思ってる人がいるけど、あれはTVが美しい場面ばかりを描きすぎていると田舎者の私は思う。

日本人は「お客様」は大事にするからちょっとの訪問だけでは絶対にわからない。住んでみたら都会に住んでた人には想像できない面倒くささがあるのだ。

タイタニックがぶつかった氷山と一緒笑。いい部分は上に出てる氷山の一角で、後の闇は海の底に隠れてる笑。

なので、この映画が「すぐキャンピングカーで生活したい!」と思うようにオシャレに描いてあったらイヤだなと思ってたら、ちゃんと「過酷な現実」も描いていてホッとした。

「蛾だらけで、蛍光灯が今にも切れそうなトイレ」とか、野ション笑とか、ゲロまみれの便器とかね笑。

私は「蛾だらけのトイレ」は意外に平気だった(20代の時キャンプで散々見た、蛾に気付かれないように用を足すのがスリリング笑)。今はブランクあるから悲鳴あげるかも笑。

一時期キャンピングカー生活に憧れて、キャンピングカーの展示場にも足を運んでいたけど、ある日から急にその欲望は止まった。

ロビン・ウイリアムズが出てる映画で、何の映画かは忘れたけれど、アメリカ人は長期休暇があるとキャンプに出かける人が多いから、オートキャンプ場が充実しており、ロビンも映画の中で家族と出かける。

到着したロビンは、キャンピングカーのトイレの便槽とホースをつなげて、キャンプ場の「し尿処理の穴」(そんなのがあるのもスゴイ)に流そうとするんだけど、失敗してホースがハズレてウ○コが石油が出たみたいに逆流して降ってくる事態に!!

あれ見てから、まずトイレ付きのキャンピングカーを買う気が失せ、やっぱり私もあの手のドジを踏みそうなのでキャンピングカー生活への憧れが消えた笑。

それでもアメリカかぶれには小さな憧れが色々あって、アメリカ人が小鍋で料理する時、お玉じゃなくて直接スプーンでかき混ぜて、鍋からそのまま食べるとこが好きなの(それ?)。この映画でもファーンがやってた♪

『ワンス・アポン・ア・タイムinハリウッド』で、ブラピがトレーラーハウス(車に牽引させるタイプのキャンピングカー)でも、マカロニチーズを作ってそれをやってたのがまたかっこよくて笑。

私も家族が誰もいないお昼に、あえてお玉を使わずスプーンでかき混ぜて小鍋からそのまま食べて悦に浸ったことがあります笑。(アメリカかぶれの楽しみは安上がり笑)

アメリカかぶれは、そんな小さい場面もあますことなく観察していますが、アメリカかぶれじゃない人もこの映画の全編に出てくるアメリカの大自然のスケールの大きさとマジックタイム(日の出や日没の前の20分間)の空の美しさは圧巻で、惚れ惚れしますよ!。

ランキングは私が「楽しかったか」「ワクワクしたか」などを正直に反映させているので、いい人しか出てこない感じの「いい映画すぎる映画」はあまり上に来ないのよ笑。

アカデミー賞ノミネート作品を『キング・オブ・シーブズ』と並べるのは不本意だけど、私の心が躍る順位にしてるので仕方がない笑。

なんなら、あのおじいさんたちの方を上にするかくらい迷ったもん笑。

 

映画『ノマドランド』のキャスト

@『ノマドランド』(2021年 米)

ファーン・・・・・フランシス・マクドーマンド

デヴィッド・・・・デヴィッド・ストラザーン

リンダ・・・・・・リンダ・メイ(一般人)

スワンキー・・・・シャーリーン・スワンキー(一般人)

ボブ・・・・・・・ボブ・ウェルズ(一般人)

 

【2021】ジャスミンKYOKOの私的映画ランキング

1位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

2位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

3位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

4位・・・・・『ビバリウム』

5位・・・・・『キル・チーム』

6位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

7位・・・・・『秘密への招待状』

8位・・・・・『アウトポスト』

9位・・・・・『聖なる犯罪者』

10位・・・・・『ノマドランド』

11位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

12位・・・・・『カポネ』




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA