『ビバリウム』(ネタバレレビュー)新居探しが怖くなる!!得体の知れない怖さが最後までつきまとうスリラーの傑作

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

映画『ビバリウム』を観てきました。

・・・・・とにかくキモい。

その上予想がつかず、得体の知れない怖さと一緒に「この人達どーなるの?」「ね、どーなるの?」とラストまで気持ちを引っ張られるので、キモいけど映画としてはアッパレ!な作品です!

よーこんな映画作ったな。しかもかなりの低予算。監督と脚本の手腕が光っています。

もちろん、俳優たちの表情から読み取れる恐怖や絶望感も貢献してます!

面白かった!

レビューは何を言ってもネタバレになるので、映画館に行く人は何も知らずに観に行った方が最後まで気持ち悪さが楽しめますよ♪

ネタを知っていくと面白さが半減します。むしろ、あらすじも知らないまま行った方がいいくらいです。

今回は、ネタバレレビューにしています。

このペパーミントグリーンの家、欧米かぶれにはずっとずっと憧れじゃった(昔話風に言うな)。

それなのに。

これ、見たらもう無理!笑。 今福岡市で流行ってるオルトカフェ(ペパーミントグリーンの三角屋根のカフェ)に行くとき、絶対思い出すだろうな笑。




ストーリー

二人で暮らす家を探していたジェマ(イモージェン・プーツ)とトム(ジェシー・アイゼンバーグ)は、ある不動産屋に立ち寄り、新しい住宅地の内覧を勧められる。

「Yonder(ヨンダー)」という新興住宅地は、全てがペパーミントグリーンに塗られたかわいい家で構成されていた。

内覧をしているうちに不動産屋の男がいなくなってしまい、二人は家に取り残される。

帰ろうとしても同じ景色が迷路のようになり、一向に抜け出せず途方に暮れる彼らに赤ん坊の入ったダンボールが届けられ、抜け出すことも出来ないまま、世話をしていくが・・・。

ここから下はネタバレレビューとなります。何も知らずに観たほうが恐怖が楽しめます。

普通のレビューは書きにくかったため、ネタバレにしました。

直感を大事にしろよ!

まずもって、「Yonder(ヨンダー)」に案内する不動産屋の男⇧の気持ち悪さったらありゃしない。

薄気味悪い笑顔と話し方、しかもかなり強引な勧誘のトーク。

「なんだか気持ち悪いわね」ジェマとトムはそう思うが、「めんどくさいから、とっとこ冷やかしに見て終わらせよう」と言って住宅地についていきます。

その場で断りなさいよーーー。(そしたら映画が始まらんけどね)

いかんよ、そういう気持ちは「危険を知らせる直感」なんだから。ついていったらいかん!!

 

調和と均整が取れたモノだらけだと逆に居心地が悪い!?

彼らが案内されて、抜け出すことができなくなった新興住宅地「Yonder(ヨンダー)」は、何もかもが完璧。

均等に並んだ住宅に、キレイに芝が刈り取られた庭、風も吹かず、雨も降らずいつもいい天気。

毎日天気が安定していて傘をさす必要もなく、洗濯物が濡れる心配もない。

ご飯は毎日届けられて、料理をする必要もないし、無音で「騒音」などとは縁がない世界。

一見理想に見える住宅地。でも閉じ込められてしまうと、とたんに風があった日々が懐かしく感じたり、隣の家の子供の鳴き声や騒音、家によって伸び放題だった草などさえも愛しく思う。

「雨だー最悪」とか「毎日晴れだったらいいのになあ」「ご飯なんて作りたくない」そういう人間の愚痴をAIが言葉のままに受け取って街を作ったらこういう風な街になるんじゃないだろうか。

雨が降るから晴れの日が嬉しいし、毎日ご飯を作ってるから作らなくていい日は死ぬほど嬉しかったり。

人間の「不満」という「不満」をすべて取り除いてしまったら、実はまったく面白くない世の中になるのかもしれない。

ネットですべて完結してしまう世の中にこの映画は何か投げかけているのかもしれないよね。

システムは便利になっていくけど、つまらないことで腹を立てたり炎上させたりする人が増えてきた。

日本は便利な物はたくさんあるのに「幸福度」は世界の中では低い。実は「不便さ」というのは、人間同士の助け合いを産み「心の許容力や柔軟性」を育てる大事な要素なのかもしれないよね。

 

子供がとにかく気持ち悪い

閉じ込められて数日経ったある日、玄関にAmazonでポチったみたいにダンボールで送られてきた赤ちゃん。

最初はこの子供を育てることで、この迷宮から抜け出せないことから唯一生きる喜びを二人が見いだせるのかと思った。

全然違った。この子供は毎日高音で叫び続け、ご飯を与えるまで狂ったように叫び続ける。

それがもうキモいのなんのって。叫ぶ時は子供の声なのに、話し声は中年の男の声という気持ち悪さ。

いつかは、ここを抜け出せる。最初の頃はそう思っていた二人だったが、何回チャレンジしても地平線まで続く、同じ家。絵本に描いてあるような雲。車で周っても毎回同じ番地に戻ってきてしまう迷宮の住宅地。

トムの方はもうこの生活に精神が限界が来ていて、ある日その子供を車に閉じ込めて、ジェマに「殺そう」と提案する。

しかし、教師でもあったジェマの母性が邪魔をして、子供を殺させなかった。

彼女は後から後悔することになる。

 

トムの壊れよう。男の人の方が繊細なんだろうな

「子供がいたら女は強くなる」ということなのだろうか。ジェマはトムよりはこの世界に順応し、子供の世話をして過ごしていく。

子供は半年であっという間に成人になり、もう容易には殺せない大人の男になっていた。

何?何なの??こいつ。どういう生き物なの?SFだったの??全然わからん、ラストはどうなるの?この世界は何なの?

一方、トムはこの現実を受け入れることが出来ず、いつか前の世界に行けることを夢見て庭に穴を掘り続けた。

観ているこっちは、子供を殺そうとした時はさすがにジェマに味方したけれど、どんどん精神が崩壊して体まで弱っていくトムを見て、意外に順応しているジェマに反対にムカついてくる。

「あんたも何か、打開策を考えなさいよー、もうちょっとトムに優しい言葉をかけなさいよ」

無理がたたってしまい、トムは病気になっていくが、色んなモノは届くのに薬は届けてくれない。

諦めた方が強いのか。諦めない方が愚かなのか。

あんたね、トムが死んだらこの世界に一人ぼっちになっちゃうのよ、そこちゃんと考えてる!?

無理させないようにしなさいよ!

ヨンダーで暮らす彼らもストレスMAXだろうけど観てるこっちもストレス爆発しそうなの。

実は最初にヒントがあった

とうとうトムは絶望したまま、息を引き取ってしまう。

この世界に気味の悪い奴と自分だけになってしまったジェマに届けられた「トム用の死体袋」、彼女は声にならない唸り声をあげる。

この女優さん、ほんとうまかった。愛する人を失うことが予想されたかのように運ばれてくる死体袋を見て驚きともう二度と彼は戻ってこない悲しみ、怒りと恐怖が混ざった表情と声にならない叫びがすごかった。

トムが死ぬなんて、こっち(映画の観客)も思わなかったわよーーー!!どうなるのよーーーー。

すべてのヒントは実は映画の最初にあった。

この映画はカッコウの巣の映像から始まった。カッコウは「托卵(たくらん)」という特徴的な子供の育て方をする鳥。

カッコウの親鳥は、違う種類の鳥の巣に親鳥がいない間に卵を産み、その雛は孵化すると、本能に従って元々いた卵やひな鳥を巣から落として殺してしまう。

巣の持ち主の親鳥はその変化に気づかず、自分よりも体が大きいカッコウの雛にエサを与え続ける。

このヨンダーという街は「托卵」の街だったのだ。

クローンを人間らしく育てるために、人間のカップルに子供を押し付けて育てさせ、役目が終わったり役に立たなくなったら処分するという・・・・。

何じゃー!!!! もう超絶後味悪いやんかーーーー!!!

この街のペパーミントグリーンもカッコウの卵の色にしたのかも・・・・(^.^;。

子供が叫び続けたのも、カッコウの雛がエサを催促するのを再現してるんだわね、きっと・・(怖)




ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

・・・・・で?

その後は? それがそれで終わりなんですよ!!!(驚)

しかもジェマまで最後亡くなってしまい、死体袋に入れられてしまうというね・・(泣)。

なんでしょう、アメリカ映画を多く見てきたせいなのか、「いつか抜け出せるかも!?」「彼女だけは助かるのかも!?」「何か謎を解くのかも?」とずーーっと良い方に良い方に前向きに考えるから最後まで引っ張られてしまうんです。

しかも、ジェマが最後の力を振り絞って奴に斬りかかるから、急展開にワクワクしちゃったんだよねー、まんまと踊らされたわー。

後から知ったらヨーロッパ映画やないか! そりゃー、前向きなアメリカ人にはなかなか作れない映画だわ笑。

しかしここで映画かぶれは、妄想してしまう。

もしかしたら、こういう裏の世界があるのかもねって笑。 いつのまにか人工の半分はもうクローンになってて、バカな私たちは気づいてないだけなのかも(泣)。

人工ミートも出てきたし、映画の中で「未来のもの」として作られてたものは、次々と現実化している今。車の自動運転ももうすぐだしね。

近い未来、私は人工肉の世の中に「ステーキが食べたい!」と言い続けた罪と、80年代の下品なアクション映画のDVDを持ち続けている罪で反逆者のレッテルを貼られ、地下組織に逃げねばならないのかもしれん笑。

この映画は、徹底的に「不協和音」をすべて排除してしまおうとする今の世の中は、ヨンダーのように面白くない世界になる危険をはらんでいるよ!と言いたいのだろうか。

ちょっとミスした人や気に入らない人をネットで叩いて自殺に追い込んだりするような人たちが増えてきた世の中に警鐘を鳴らしてるのかもね。

クリーンすぎる世の中なんてつまらんぞ!悪いやつがいてこそ、いいやつが目立つんだよ、それ分かってますか?

無味無臭のスマートな人間ばかりが増えたらクローンと変わらん。暑苦しいおっちゃんやしょうもない意地悪女がいてナンボです笑。

最後に、「ビバリウム」という単語の意味は「生き物の自然の生息環境を真似て作った飼育用のケージ」のこと。この単語の意味を知らずに映画館に行って正解だったー♪

後味悪すぎる、しかし面白い作品だった!!

 

映画『ビバリウム』のキャスト

@『ビバリウム』(2019年 アイルランド/デンマーク/ベルギー)

ジェマ・・・・・・イモージェン・プーツ

トム・・・・・・・ジェシー・アイゼンバーグ

マーティン・・・・ジョナサン・アリス

 

【2021】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

2位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

3位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

4位・・・・・『ビバリウム』

5位・・・・・『キル・チーム』

6位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

7位・・・・・『秘密への招待状』

8位・・・・・『アウトポスト』

9位・・・・・『聖なる犯罪者』

10位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

11位・・・・・『カポネ』