『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ネタバレレビュー)このカウボーイはカンバーバッチじゃなきゃ出来なかった

2021movie

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

なんで、カウボーイにカンバーバッチなの???

最初にこの作品を知った時にはそう思った。

だって、彼にはインテリや、繊細な人の方が似合うし、うまいから。

さてはコロナ禍で、映画作品が少なくなっているから、しょうがなくアメリカ人の役に手を出したのかな・・・。この前の『モーリタニアン 黒塗りの記録』といい・・。

そんなことを思いながら、何も情報を仕入れずに映画館に行ったら、衝撃!

・・・この役は彼じゃないと無理だったんだな。

キャスティング(配役)に納得しました。

1920年代のアメリカはモンタナでの、牧場を経営しているフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)と新しく加わった家族との関わりを風習やその風土ならではのしきたりなどを交えて描く。

たんたんと長いから、脳が疲れていると途中眠くなる笑。

でも頑張って観たら、「えええええーーーーーーーーーーーっ」って引き込まれて、観終わった後からじわじわ来る。

お、面白い。日を追うごとに、この映画を思い出すたびに、面白くなってくる。そんな映画です。

「西部劇」とかガンマンとか、ゴールドラッシュ(金鉱に世界から群がった時代)のようなものは期待せず、人間ドラマと思って観よう。

「Netflix(ネットフリックス)」で観れます。

ストーリー

1920年代のモンタナ。

フィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)は、弟のジョージと大牧場を経営し、豊かな牧場暮らしをしていた。

アウトローな前経営者(ブロンコ・ヘンリー)から牧場を引き継いだフィルは、カウボーイ仲間にも度々彼の武勇伝を話す毎日。

ある時、牧草を求め牛たちを引き連れて行く遠征の旅で、宿に立ち寄った際にそこの女主人と息子ピーターに出会う。

弟ジョージは、その女主人ローズ(キルスティン・ダンスト)に惹かれ、フィルの同意もないままに結婚してしまう。

ジョージは、ローズとピーターの親子を家に迎え入れるが、フィルは冷たい態度を取り続ける。

幾夏か過ごすうちに、少しずつ彼の態度にも変化が表れはじめていく。

物語の舞台 モンタナ州

ここから先はネタバレレビューとなります。最初はたんたんとしていますが、何も情報を観ないでいくほうが衝撃を楽しめます。

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カウボーイものが好きな私だが、ちょっと昔過ぎた

田舎の方にもジーンズがようやく普及しだした頃の1920年代。(デニムの生地自体はフランス発祥。ジーンズがリーバイスで生まれたのはもっと前の1880年~1900年初頭)

この頃は「Lee(リー)」が食品を町々に卸すついでに労働者用のジーンズを作って全米に広めて行った。

1930年代になると、「Levi’s(リーバイス)」がカウボーイをモデルに起用しポスターを作って、もっとファッショナブルになっていき、もちろんカウボーイの服にもジーンズが定着していった。

だから、この映画の頃のカウボーイは、まだちょっとダサめで(いいやんか笑)、オーバーオールが中心なのよねー。まあ、ブラピじゃなく、カンバーバッチだからいいけど笑。

カウボーイの生活に興味津々な私と男だらけの世界も大変

アメリカの歴史はカウボーイと共にあるので、私も好きでついついカウボーイの映画と聞くと観に行ってしまう。

だから、ジーンズのことまで書いてしまい、映画のレビューを早く書けよって話笑。

カウボーイの仕事で、一番キョーレツだったのは、牛の去勢の仕方!!!目に焼き付いて離れないわーーー!!

牛のキン○マを手づかみで持って、ナイフで切れ目を入れてずるっと剥いて睾丸を取り出す・・・。

ギャー!!!牛さん痛いよね!?(そりゃそうやろ) 今でもその方法やってるのかしらーー!?

牛の解体作業や、革をなめすシーンなどもあり、この頃のカウボーイの生活が素晴らしいくらいに再現されている。

コロナ禍を経験して、日々アルコール消毒をするあまり、こういう時代の映画を観ると、「ね、その後、手洗った?ちゃんと洗ったの?」って頭に浮かぶようになってしまった笑。

ローズの苦悩は、何もフィルだけのせいじゃない

この時代、一家の大黒柱である夫を失うというのは、残された家族にとっては「絶望」に近いものがある。

ローズは女ひとりで頑張ってきたが、ジョージの優しさに心打たれ、結婚する。(とにかく結婚までが早くてはやっ!!と驚く)

もう、宿を一人で切り盛りするのは辛すぎたのねえ。

純朴すぎる弟が未亡人子持ち女にいいように利用されたと思う、フィルの気持ちもわからんでもない。

息子がいい教育を受けれて、自分も楽が出来る。人間は弱いからそう思う時もあるよ。

ただ、ローズにとっては裕福な牧場主の奥様としての生活は退屈過ぎるのと、市長などの上流の人々との付き合いがうまく出来ずに思うようにいかない。

ローズ親子をよく思っていないフィルの冷たい態度にもストレスを感じて酒浸りになっていく。

このだんなさん、純朴なのはいいけどね、女心にほんと鈍すぎるのよ笑。でも鋭いなら鋭いで女にモテまくって遊びまくるかもしれないし、ちょうどいいやついないのかしらねー笑。

ローズ役のキルスティン・ダンストがしばらく見ないうちにいいおばちゃんになっていて笑、キレイめ路線で行くんじゃない決心なのか、ただの美への怠惰なのかはわからなかった(ひどい言いよう)。

この夫役をした俳優さんと実生活でも夫婦なんだって!

コロナ禍の撮影では、ラブシーンがある時は夫婦や恋人同士をこれから雇うかもしれないってハリウッドの報道番組で言ってたけど、ほんとそれなのかもね!

粗野に見せる必要がある、この時代とこの土地

尊敬する先輩ブロンコ・ヘンリーの話を繰り返し繰り返し、仲間に話すフィル。

毎回同じような話ばかりで、みんな嫌気がささないのかしらと思っていた。

すると、フィルが人目を偲んで、森の中の自分の秘密基地?に行く(ただの沼と木がある場所だけど)。

え???まさか・・・・・・・。

ブロンコ・ヘンリーのイニシャルがついた布(ネッカチーフ?カウボーイの首に巻くアイテム)をアソコにあてがって自慰行為を・・・。

えーーーーーーーー!!ゲイだったのね!!(何も情報を仕入れず映画に行くとたまげる笑)

・・・・ということは、前の牧場主とやらもフィルとはそういう仲だったのかもしれない。

そう考えると、女がこの牧場に入ってきたことが気に食わないのも、弟がいいように手玉に取られたといつまでも思っていることも腑に落ちるわー。

男女の恋愛より男同士の方が経済格差がない分、純粋に「愛」だけだもんね。

ゲイの彼が、男だらけの牧場でカウボーイとして生きていくのってほんと大変だったろうなあ。いい大学を出たのに、牧場に戻ってきたのはゲイとして何か辛いことがあったのかも。

そこで出会った牧場主のブロンコ・ヘンリーへの尊敬から始まった恋が、彼を救ってくれたのかもしれないよね。

こんな時代にゲイを隠して生きることの難しさを「粗野に振る舞う」ことで「男らしく見せて」どうにか生きてきた。

保守的な町で生き抜くために、自分を解放させる場所を森に作っていたのね。そうでもしないとやっとられんよね。

そういう粗野に生きることで自分を守ってきた繊細なフィルの表情が、やっぱりカンバーバッチはうまい。彼じゃなきゃこの役は難しかったね、やっぱり。

このピーター、すごすぎて言葉にならん

⇧ローズの一人息子ピーター。母が再婚したことで裕福になり、もともと生物好きもあり医者を目指す

フィルとの最初の出会いでは、彼が作った花の模造品をバカにされ、細くて弱々しい彼はひどく傷つき、それを観たローズも泣いていた。

父親の自殺現場を幼い頃に観てしまったから、トラウマのせいで繊細になりすぎてしまったかと観ているこっちはそう思ってた。

その時に幼い彼は、「母を守る」という強い心も同時に授かっていたのだ。

こいつ、ほんと怖かった。

「乱暴な物言い」や「粗野な態度」の人の方が第一印象では怖いけど、そういう人って「単純」だから、こういう背筋がぞっとする怖さは持ち合わせていないのよね。

ピーターはある日、そのフィルの秘密基地を偶然観てしまい(男の裸の雑誌などが置いてあった)、フィルがゲイだと知る。

大学の夏休みに帰省して、フィルに乗馬を教えてもらったり、投げ縄を教えてもらったりしてたくましく成長していく。

そして、家族が仲良くなっていく話だと思ってたわよ。そう思うよね。・・・それが!!

ピーターをかわいがり始めたフィルは、革で手作りのロープ(カウボーイが使う投げ縄でラリアットとも言う)を大学に戻る前にと編み始めた。

革が足りなくなった時にピーターからもらった革でロープを編み上げ完成させるが、フィルは翌日原因不明の病で急死する。

家畜を飼う人たちが、この頃一番気をつけていたのは炭疽症(たんそしょう)で、自然界に生息する炭疽菌が家畜を伝って人間に感染し、確実に死をもたらすため、フィルも炭疽症で死んだ牛には絶対近づかなかった。

そんなフィルが、なぜ炭疽症のような症状で死んだのかがわからず戸惑う家族や仲間たち。

ピーターがフィルに差し出したのは、その炭疽症で死んだ牛の革だったのだ。この日のためにピーターが死んだ牛から取っておいたのだった(もちろんピーターは手袋して)。

フィルが死の直前に編み上げたロープを、ピーターがそっとベッドの下に隠すところで映画が終わる。

ギャー・・・・!!こいつ恐ろしすぎる!!

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

いくらお母さんがフィルからストレスを受けてたとは言ってもさ、暴力なんかも受けてないんだよ?

ただ、口を聞かなかったり笑いかけたりしないだけやんか。

それで義理のお父さんの兄ちゃんを殺すんかい!

フィルが牧場で稼いだ金で大学行ってるんやないんかー!!お前ーーーー!!

フィルがゲイだと知って、その恋心を利用する・・・・。

怖い。こんなやつが一番怖い。

こういう人は怒りの発散場所がないから、ずっと心の中で思い続けているんだろうなあ。

単純で後先考えずに罵声を浴びせるようなおっちゃんは気をつけてくだされ。怒ったあんたは忘れてもやられた方は忘れてないからね。

乗馬やら遠征に一緒に行き始めて、フィルが優しくなってきたなら、当初の計画を止めてもいいんじゃないの? 

昔みたいにヤンキーやヤクザとか外見で「悪い人」ってわかる方がいいよね。

でも最近ニュースにあがってくるのは、とっても優しい顔をした殺人犯だよね。近所の人にも挨拶をして、成績も良くて、お行儀もよくて・・・・。

帰ってからもゾーーッとしちゃった。

『ブローク・バック・マウンテン』でも語られたけれど、「男らしさ」を求めるカウボーイの世界とアメリカの保守的な田舎町では、ゲイの人がアソコをロープに結ばれ馬に引かせて殺されたりしていた事実があったらしい。

カウボーイは、何ヶ月も家から離れて荒野で家畜と男同士で過ごすからこそ、同性愛に目覚めた人もいるだろうに(実際『ブロークバック・マウンテン』でもそうだった)。

ピーターは母親のためにフィルがいなくなればいいと思ったんだろうけど、ここまでしたのはゲイが嫌いというのもあったのかな。それともしょっぱなに力作をバカにされたからか・・・。

でも、人間やん。「失言」ってあるよ。何も殺さなくていいやん。しかも涼しい顔して完全犯罪って。

みんな心を通わせて仲良くなっていくストーリーだと思ってたら、心底ビックリして、怖くなった。

もしかしたら、酒浸りの父を自殺に見せかけて殺したのもヤツなのかも・・・・。ジョージ、ローズを大切にしないと、フィルの二の舞になるぞ・・・。怖すぎる。

コロナで自警団作った人たちもいたけど(マスクしないやつや緊急事態宣言中に店を開けてる人に注意したりする人たち)、こういうタイプだよね、ピーターって。自分が正義の鉄槌を下したい人。

こういう人たちって気持ちはわかる部分もあるけど、行動が極端なのよ。もっと真のヒーローってのは物悲しいもんよ。

最後のサスペンスは、うまい!怖かった!

@『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年 英豪米加新合作)

フィル・バーバンク・・・・・ベネディクト・カンバーバッチ

ローズ・ゴードン・・・・・・キルスティン・ダンスト

ジョージ・バーバンク・・・・ジェシー・プレモンス

ピーター・ゴードン・・・・・コディ・スミット=マクフィ

1位・・・・・『ラスト・フル・メジャー』  

2位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

3位・・・・・『最後の決闘裁判』

4位・・・・・『スイング・ステート』

5位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

6位・・・・・『プロミシング・ヤング・ウーマン』

7位・・・・・『グリーンランド 地球最後の2日間』

8位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

9位・・・・・『クーリエ 最高機密の運び屋』

10位・・・・・『ビバリウム』

11位・・・・・『アイス・ロード』

12位・・・・・『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

13位・・・・・『RUN』

14位・・・・・『インヘリタンス』

15位・・・・・『ワイルド・スピード JETBREAK』

16位・・・・・『アオラレ』

17位・・・・・『キル・チーム』

18位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

19位・・・・・『秘密への招待状』

20位・・・・・『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』

21位・・・・・『モンタナの目撃者』

22位・・・・・『ハロウィン KILLS』

23位・・・・・『ダーク・アンド・ウィケッド』

24位・・・・・『OLD』

25位・・・・・『アウシュビッツ・レポート』

26位・・・・・『モーリタニアン 黒塗りの記録』

27位・・・・・『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

28位・・・・・『孤狼の血 LEBEL2』

29位・・・・・『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

30位・・・・・『アウトポスト』

31位・・・・・『聖なる犯罪者』

32位・・・・・『ジェントルメン』

33位・・・・・『ファイナル・プラン』

34位・・・・・『ドント・ブリーズ2』

35位・・・・・『ゴジラVSコング』

36位・・・・・『ノマドランド』

37位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

38位・・・・・『AVA/エヴァ』

39位・・・・・『テスラ エジソンが恐れた天才』

40位・・・・・『Mr.ノーバディ』

41位・・・・・『白頭山大噴火』

42位・・・・・『モスル』

43位・・・・・『キャンディマン』

44位・・・・・『カポネ』