『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』(ネタバレレビュー)フライパンを買い替えたくなる映画

こんばんは、ジャスミンKYOKOです。

「大企業の隠蔽もの」と聞くと、それだけでいそいそと映画館に行っちゃう私笑。

しかし、映画を観始めたら、「なんだなんだ! 私に関係ある公害じゃないか!!」と驚愕!!

あんなに便利な「テフロン加工」(フライパンなどの施されてる、食品がくっつかない特殊加工)が、危険な毒性がある上発がん性もあるということ。

しかも40年以上も前からそれを知りながら隠蔽し、現在もそれを世界中に売り続けているデュポン社という企業の話であった。(テフロン加工の特許を持っている)

う、うそやろ・・・。何で発覚したのに売り続けてるの?日本じゃ全然問題にならずに売ってるやん・・。

その恐ろしい巨大企業デュポン社と20年近く訴訟で闘い続けている弁護士のロバート(以下ロブ)を、環境保護活動家でもあるマーク・ラファロが演じて、実話を映画化した(彼、演技がうまいから出てたら観に行っちゃう)。

最初は、他人事のように思っていた弁護士が、自分の家族の健康に身近に迫っているのを知り、本気になって取り組んでいくが、そこは大企業。とことん邪魔をしてくる。

被害に遭っているはずの住民たちは、事態をよくわかっていないため非協力的だったり、田舎に雇用を生む大企業に敵対するなど考えられないと、原告リーダーに嫌がらせしたりして訴訟の準備がなかなか進まない。

ロブの輝かしい弁護士としてのキャリアまでも危ぶまれるという、「大企業の隠蔽ものあるある満載」で、見応えあって面白かった! ・・・しかしリアルで怖すぎた・・。

国が隠しておきたいもの(しかも現在進行形)を映画化出来るのがアメリカの素晴らしいところよね。

この映画を観たら、フライパンを買い替えたくなります(→実際に翌日ソッコー鉄製フライパンを注文した私)。

ストーリー

環境保護活動家の一面も持つマーク・ラファロが、実際にウエストヴァージニア州で巨大企業が起こした環境汚染の集団訴訟で闘っている弁護士を演じる(今も法廷闘争中)。

巨大企業デュポン社が、40年に渡り、テフロン加工の毒の危険さを知りながら隠蔽し、世界中に販売してきた。(今も販売中)

付近の農場の悲痛の訴えを聞いた、名門法律事務所にいたロブ(マーク・ラファロ)は、住民7万人を原告団にして闘うが、巨大企業の力の前に、協力しない住民や相次ぐトラブル、長期に渡る訴訟に自身の生活も危うくなっていく・・。

以下からネタバレレビューになっています。映画をより楽しむためには読まずに鑑賞する方をオススメします。

うそ、テフロン!?身近な問題じゃないか!

⇧農場の危機を訴えたウィルバー(左)と、様子を観に来たロブ(右。マーク・ラファロ)

どこか、こういう企業の隠蔽ものとか、訴訟のお話は、自分の身近な話じゃないから映画として楽しめるところがある。

映画の上映開始冒頭。

デュポン社が長年に渡って隠蔽してきたことが、「テフロン加工の毒と発がん性」ということを知り「ウソーーーー!! 私、使ってるやん!今の話!?」とビックリしながら観始めた。(映画の情報はあまり事前に仕入れず、巨大企業の隠蔽というだけでワクワク楽しみに来たため)

ある日、大企業の環境問題専門の弁護士だったロブの元に、ロブの祖母から紹介されたという、農場主ウィルバー・テナントが現れる。

自分は企業側の弁護士で一般市民専門ではないと断るが、祖母の知り合いのため、一度祖母を訪ねがてら農場に行ってみることにした。

車を走らせながら、町の様子を観るロブの目に写ったのは、楽しそうに遊ぶ子供たちの歯がみんな黒く変色していたこと。

そんな光景を垣間見ながら農場に着くと、ウィルバーの話に愕然とした。

死んだ牛は、数頭ではなく、190頭も死んでいたのだ。もう彼の農場は潰れかかっていた。

彼によると汚染された川の水を飲んだり、その土で育った草を食べたからだという。

後日水道局の水質汚濁調査の資料を取り寄せたロブは、基準値を何も超えていない報告書をウィルバーに見せる。

ウィルバーは、その報告書はウソばかりだといい、工場の存在を怪しんだウィルバーは死んだ牛の肥大した内臓などを保管していたものをロブに見せる。

最初に断った時に彼が持ってきていたビデオテープをようやく再生してみることにしたロブ。

そこには、薬品に侵され狂って人を襲う牛や奇形児に生まれた子牛など、信じられない光景がたくさん写されていた。

アン・ハサウェイのせいで、昔の話と思っちゃったじゃないか

ロブの妻を演じたアン・ハサウェイがこんなヘアスタイルをしているせいで(たぶんその頃の本人に似せてあると思うが)、70年代の話かと思ったわよ笑。(余計なお世話)

そして時代が進むにつれ、今のアン・ハサウェイそのままの美しい容姿になっていく(笑、ロブの夫人は昔の方が老けてたのかな)。

最初は夫を応援してた妻も、訴訟が10年以上になってくると、それにかかりきりの夫は子育てを手伝うこともなく、ついに溜まったストレスが爆発!!(その割には3人も子供をつくってやがる・・・)

カトリックだから避妊できないのかもねえ・・・(なんでも映画から得た知識で勘ぐる・・余計なお世話)。

なんでしょうね、「映画あるある」というか「偉人あるある」というか、偉大なことを成し遂げる人というのは、やっぱりそれに集中しないといけないから、家庭のことは意図してなくてもおざなりになっちゃうのよ。

女の社会復帰はいつも後回しで、3人の子供の世話でせいいっぱい、相談したくても夫は訴訟のことでいつも上の空。

たぶん妻は自分も弁護士だったのに、復帰できずじまいっていうのも不満の原因なのかもしれない。

でも、この妻がエラいのは「仕事と私、どっちが大事!?」としょうもないことを言ってキレないこと笑。

こういう発言をしちゃう女は、口から先に言葉が出ちゃうんだろうな。夫が仕事がんばってるから、子供を3人も育てられるんじゃないか、ということを口に出す前に頭で考えない。

キレるより、正直に「寂しい、私の話を聞いて」って落ち着いて言う方が男には確実に伝わる。(男はキーキー言う女の話は聞かない笑)

まあね、アン・ハサウェイも残念な発言をしちゃう女たちも、夫を心では誇らしく思ってはいると思うのよね。

ただ女は目の前の自分の問題が大事っていう生き物ですからね笑、キレる気持ちはわからんでもないけどさ。

「みんなのヒーローより、家族のヒーローであってほしい」ということでしょうね。

企業の表彰で夫の表彰式に夫婦一緒に呼ぶのは、みんなの前で夫を称えることによって、長年の妻の我慢を和らげる意図もあるのかも笑。

70年代から隠し続けたデュポン社の罪

映画冒頭、馬鹿な若者たちが、デュポン社の進入禁止区域にある、ため池で泳ぐシーンが描かれる。

このシーンには超ワクワクしたわよ(こういうおバカな若者から始まる映画って大好き)。

そこには、有害な排水から出る泡を薬品を撒いて消す作業員がいた。

この泳いだ若者たちは映画用のエピソードかもしれないけれど、デュポン社は、ずっと川やため池の泡を消して垂れ流しを隠していたのだ。

私がアン・ハサウェイのヘアスタイルから、70年代を舞台にした映画だと勘違いしたが、まさしくその70年代からデュポン社は、加工段階で偶然できた化学物質テフロンが人体に甚大な影響を及ぼすことをわかっていた。

生産ラインにいた社員が次々とガンになり、妊婦は奇形児を産んだのだ。

テフロンのせいだというのをごまかすため生産ラインから妊婦をはずしたり、テフロンを混ぜたタバコを社員に配って実験してみたりした。(タバコを吸った社員は全員入院したらしい・・怖すぎる)

毒性がわかる前にいた妊婦が産んだ子供は、目の位置が極端に上下に違う奇形児だったが、会社はその母親にテフロンの毒の可能性を告げずに解雇した。

大人になったその子(男性)が映画の中にエキストラとして本人役で出ている。

40年以上も危険性を隠し、排水を垂れ流し続け、住民が何か言い出したらその土地ごと買い取って黙らせていた。

ロブに訴えたウィルバーは、デュポン社の広大な土地を指し、もともと自分の弟が所有していたものだと言い、その弟はガンになって入院したという。

膨大な資料と気の遠くなる訴訟の長さ

情報開示請求で、まだロブを甘くみていたデュポン社は、膨大な資料を送りつけてきた。

ロブは何ヶ月もかけて書類の1枚1枚を読み、デュポン社に切り込むとっかかりを見つけようとする。

こんなの一人で見るのきついよーーー。

「やる気を喪失させる」企業側の作戦なんだろうね。

何ヶ月か経った頃、「PFOA」という単語がやたら書類に出てくることに気づく。

どんな物質か見当もつかなかったロブは、大学の研究員に「PFOAを飲んだらどうなる?」と試しに聞いてみると、「そんな猛毒飲むわけないだろ。タイヤをまるごと食べるようなもんさ」

そのPFOAがフライパンに使われていることを知ったロブは、疲れもあって錯乱状態になり、夜中に音を立てるのも構わずに家中の鍋やフライパンを手当たりしだいに調べ上げ、愕然とする。

自分の家族の身近にこんな危険が・・・・・。

この映画を観た私と同じように、自分の身近なことだと感じると、人は愕然とし途方に暮れる。

この隠蔽は、環境省や水道局まで抱き込んだ相当なものだった。

ロブは「集団訴訟」をする覚悟を決めた。

やっぱり大企業相手は怖いよ

夜の駐車場で後ろから足音が聞こえると、何回も振り向くロブ。

・・・わかる!!大企業は隠蔽をするとなると、もうマフィア並だから怖くてそうなっちゃうよね。

だって、環境省の職員を抱き込んで数字を改ざんさせる力と資金力を持ってるんだもの。

車のエンジンをかけるのも怖くてなかなかかけられない。(キーを回すと爆弾が作動する仕組みを使った映画は多数)アメリカ軍の爆弾探知機欲しくなるよね。(一度領事館前で偶然探知機かけるとこを見かけて、大興奮した私)。

検査に7年、ロブは窮地に陥っていく

すべての住民の血液検査をすることができたが、あまりにもの住民の多さと病気の可能性の多さに結果が出るまで7年も要した。

その間、弁護士事務所はお金が入らないので、ロブの給料を減らし続けるしかなかった。

この法律事務所の上司のティム・ロビンスがまたいいのよ。普通こんなお金にならない長期の訴訟で、ましてや企業側専門だったのに、こんなのやったら取引先がいなくなるよね。

それなのにロブがやると言ったら応援してくれるのは、ほんとすごかった。

だって、利益を生み出さないからね。立証し勝訴するまでの間は。

しかも向こうは政府を抱き込んでるいるんだから、睨まれるのも怖いし。

その驚愕の検査結果は、住民全員がなにかしらの病気にかかっているという、すごいものだった。

子どもたちの歯が黒いのもテフロンの毒が溶けた水を飲んでいたからだった。悲しいことにロブに訴えたウィルバーが生きている間にはこの結果は間に合わなかった(彼や彼の妻もガン)。

ようやく賠償金を勝ち取れる!と思ったのもつかの間、デュポン社はわざと、原告団全員とのまとまった裁判を、政府を抱き込んで無効にした。

ここでも政府が金に覆ったのだ。

ロブはあまりのショックと疲労で脳内出血を起こす。

そこまでして集団訴訟をしないのは、証人となる病人が死んでいなくなるのを待つためか、何年もかかる個別訴訟に治療費が足りなくなり住民が諦めるように仕向けたのは歴然だった。

どうにか回復したロブは1人ずつ個別訴訟をすると決め、立ち上がる・・・。

ジャスミンKYOKOの煩悩だらけの映画トーク

3,535件もの訴訟が始まり、最初の裁判では160万ドル(1億7000万ほど)勝ち取り、2件目、3件目と今なお続いています。

アメリカの政府を抱き込んでいるためか、デュポン社は日本にも色んな企業と手を組んでテフロン加工を売り続けている。

発売が停止になっていたら訴訟のお金を払うのも大変だが、訴訟のお金の何十倍もの利益を日々世界中で生み出しているためデュポン社にとっては痛くも痒くもないのである。

最初の訴え(1998年)から、もう20年以上もロブと住民は闘い続けている。

あるホームセンターのキッチン用品売り場

この映画を見てからというもの、こういうのを見かける度に思い出すようになってしまった(泣)。

そして映画館から帰ってきてすぐに家族にどんなに内容が怖かったかを話し、テフロンの怖さを再度ネットで調べて、ソッコー鉄製のフライパンを注文した笑。

高温になりすぎると毒が溶け出すらしいので、普通に使う分にはいいかもしれない。

でも家のテフロン加工のフライパンを使う度に思い出すのもストレスなので買い換えることにしたのだ。

⇧映画を観た翌々日にやってきたバーミキュラのフライパン。広島の町工場が作っていて、鉄製でホウロウ加工がしてあるもの。約17,000円(ホウロウも加工段階でカドミウムが使用されてるのは危ないらしい。バーミキュラはカドミウムなし)。

フライパンにしては高かったし、鉄製のフライパンはちゃんと油を馴染ませないと大変なのでめんどくさかったが、今ようやく慣れてきた。

テフロンの時は毎年買い替えが必要だったが、鉄製はメンテナンスすれば一生使えるので、そう考えると安いのかも(バーミキュラはメンテナンスも請け負う)。

熱伝導が素晴らしいので、ウインナーやハンバーグがジューシーになって家族から逆に高評価になった。

デュポン社をウィキペディアで調べてもこの公害の件がほとんど載ってないのに驚く。

化学のおかげで便利になった世の中だけど、ぼんやりしてちゃダメだなと感じた映画であった。

映画で流れる誰もが知ってる名曲「カントリー・ロード」が、この公害の舞台になったウエストバージニア州のことを歌っているのも初めて知ったし、勉強になった。

豊かな素晴らしい自然とふるさとのことを歌っている歌だけに公害との落差が余計に怖くさせた、うまい映画の演出だった。

ほんと、怖すぎる。

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』のキャスト

@『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』(2019年 米)

ロバート・ピロット・・・・・・・マーク・ラファロ

サラ・ピロット・・・・・・・・・アン・ハサウェイ

トム・タープ・・・・・・・・・・ティム・ロビンス

ウィルバー・テナント・・・・・・ビル・キャンプ

フィル・ドネリー・・・・・・・・ヴィクター・ガーバー

ハリー・ディーツラー・・・・・・ビル・プルマン

【2021】ジャスミンKYOKOの映画私的ランキング

1位・・・・・『ラスト・フル・メジャー』  

2位・・・・・『KCIA 南山の部長たち』

3位・・・・・『最後の決闘裁判』

4位・・・・・『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』

5位・・・・・『スイング・ステート』

6位・・・・・『悪なき殺人』

7位・・・・・『ヤクザと家族 The Family』

8位・・・・・『プロミシング・ヤング・ウーマン』

9位・・・・・『グリーンランド 地球最後の2日間』

10位・・・・・『ある人質 生還までの398日間』

11位・・・・・『クーリエ 最高機密の運び屋』

12位・・・・・『ビバリウム』

13位・・・・・『アイス・ロード』

14位・・・・・『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

15位・・・・・『RUN』

16位・・・・・『インヘリタンス』

17位・・・・・『ワイルド・スピード JETBREAK』

18位・・・・・『アオラレ』

19位・・・・・『キル・チーム』

20位・・・・・『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』

21位・・・・・『秘密への招待状』

22位・・・・・『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』

23位・・・・・『モンタナの目撃者』

24位・・・・・『ハロウィン KILLS』

25位・・・・・『ダーク・アンド・ウィケッド』

26位・・・・・『OLD』

27位・・・・・『アウシュビッツ・レポート』

28位・・・・・『モーリタニアン 黒塗りの記録』

29位・・・・・『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

30位・・・・・『孤狼の血 LEBEL2』

31位・・・・・『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

32位・・・・・『アウトポスト』

33位・・・・・『聖なる犯罪者』

34位・・・・・『ジェントルメン』

35位・・・・・『ファイナル・プラン』

36位・・・・・『ドント・ブリーズ2』

37位・・・・・『ゴジラVSコング』

38位・・・・・『ノマドランド』

39位・・・・・『キング・オブ・シーヴズ』

40位・・・・・『AVA/エヴァ』

41位・・・・・『テスラ エジソンが恐れた天才』

42位・・・・・『Mr.ノーバディ』

43位・・・・・『白頭山大噴火』

44位・・・・・『モスル』

45位・・・・・『グロリア 永遠の青春』

46位・・・・・『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』

47位・・・・・『キャンディマン』

48位・・・・・『カポネ』